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昔から時間さえあれば、愛し合っている二人を何度も見てきた碧人は、そんな両親の仲睦まじい姿に羨ましく、葵にもそうしてあげたいと思っていたのだが。 葵が自分以外に目を向けるのならば、母親と同じく、地下牢に閉じ込めてしまえば良かったのだ。母が何故地下牢にいるかは分からないが、疑問に思っても自分には関係のない話であるため口にはしないが、きっと父親も同じような理由であのようなことをしているのだろう。 葵が風邪を引いて代わりに子ども達の面倒を見るから仕事をやって欲しいと言った時、口では了承していたものの、あまり乗り気ではなかったぐらいだ。 だが、こっちだって仕事しているよりも葵と一緒にいる時間を充てたいのだ。少しぐらい我慢して欲しい。 「⋯⋯もってるもの、なあに⋯⋯?」 自分のことよりも他人のことを気にかける葵が、咳き込みながらそう訊ねてきた。 「ああ、これ。新と真が葵お母さまが元気になるようにって、絵を描いたり、おりがみを折ったんだ」 「⋯⋯二人が、そうなの⋯⋯」 「二人とも張り切ってやっていたよ。いっぱい作るぐらいにね。見たら驚くよ」 「ふふ、見たいね⋯⋯」 指にも力が入らない葵に二人が作ったものを手に取って持たせてあげた。 「その前にも真が絵を描いていたのだけど、それも葵のことを描いていて。今遊んでいる僕よりもお母さまの方がいいんだって、思わず好きなんだねって訊いたね」 「だって⋯⋯碧人さん、仕事でいないから⋯⋯」 「同じようなこと、二人にも言われた」 もっと構ってあげてと言いたげな葵に、正論ではあるが、一番構いたい相手以外にいるものだからあまり構う気にはならない。 ただこの家のためだけに産まれた程度の相手になんて。 「これ、真が描いたでしょ⋯⋯?」 「そう、やっぱりいつも二人といるから分かるんだね」 「⋯⋯真は、おえかき、好きだから⋯⋯」 大好きな子どもが描いてくれたからなのだろう。力なくとも嬉しそうに笑っていた。

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