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第16話

「おかえり、明」 我が家のリビングには三人掛けのソファがある。 明がリビングに入って最初に目にしたものは、そのソファに腰掛ける幸と基依だった。 「え・・・なんで基依が?」 明は困惑した表情で二人を見つめる。 『明と一緒なら帰っておいで』と幸から昴に連絡があったのは二十分ほど前だ。 昴と話した後、明のお腹が空腹の音を立てた。その音でお昼をまだ食べていなかったことを思い出し、昴にフードコートでうどんをご馳走してもらったのだ。 昴のスマホが幸のメッセージを受信したのはちょうど食べ終わった時だった。 二人で幸と向き合おうと決めて、それなりの決心で家まで帰ってきた。 それなのに基依の顔を見た途端、その気持ちがグラグラと揺らぐくらい動揺してしまっている。 「俺が基依君を呼んだの。いた方がいいかなと思って」 幸は穏やかな笑みを浮かべて言う。なんの悪気もなさそうだ。 「えっ・・と・・基依は何をどこまで聞いてるの?」 明が基依の方に視線を向けると、基依はヘラっと笑いながら首を傾げた。 「別に、たいしたことは聞いてないけど?」 それを聞いて隣に座っている幸が続ける。 「基依君が知ってるのは、俺が昴を好きだったってことと、それから昴が明を好きってこと」 「なっ!・・ちょっと・・」 昴が顔を真っ赤にして焦ったような声を出した。 「なんで俺のこと言うの?それ基依君に関係ある?」 「・・さぁ。でも話を聞いてもらうためには言わなきゃいけなかったから。それ以外のことは・・言ってないよ」 幸は頬杖をつくと含みのある言い方をして笑った。 その様子を見て明はごくりと唾を飲み込む。 今、幸は確かに言った。 『俺が昴を好きだったこと』と。 やっぱり、幸は昴をちゃんと好きだったのだ。 それなのに・・あんな事件が起こったせいで二人の関係は歪なものになってしまった。 もし、それがなければ・・ 幸が素直に昴に気持ちを伝えられていれば、もしかしたら番になれていたのではないだろうか。 だって・・やっぱりαとΩが結ばれるのが一番幸せなことだと思うから・・ 「ねぇ、今俺に同情してる?」 まるで明の思考を読み取ったかのように、幸が鋭い視線を向けてきた。 「え・・・」 「勿体無いなぁとか思ってない?せっかくΩがαを好きなんだから番になるべきだったのにとか思ってるでしょ」 「そ、そんなこと・・・」 そこまで言って明は黙り込む。完全に否定はできない。 すると幸はツンとした表情で隣りの基依に目をやった。 「・・・あのねぇ、俺ついさっき基依君に告白されたの」 「・・・えっ」 ドクンと心臓が鳴る。 いや、わかっていたことだ。動揺する必要はない。 そう頭で言い聞かせていても、胸の奥がズンと痛い。 「はっ?なんで今それ言うの?」 突然の暴露に基依は心底嫌そうな顔をして幸を睨んだ。 「別にいいでしょ。ねぇ、明は今の話を聞いてどう思った?」 「・・・どうって・・」 一体幸はどんな答えを望んでいるのだ。 『基依のことが好きだったからショックだ』とでも答えれば満足なのだろうか? 明が困惑した顔でいると、昴がスッと明の前に出て言った。 「幸、その話は今ここですること?明に何を言わせたいの?これじゃまるで・・」 「昴は黙ってて」 昴の言葉を遮るように幸が強めの口調で返す。 「俺は明と話してるの・・・大丈夫だよ。昴が心配するような話をするつもりはないから」 幸は昴から明に視線を戻すと、射るような目つきで言った。 「明は・・今までも俺が告白された話をたくさん聞いてきたよね。例えばそれで、俺ばかり告白されてごめんねって同情されたら嫌じゃない?傷つくよね?」 「それは・・・」 「ね?同情されて嫌な気持ちになるの、わかるでしょ?さっきの俺も同じ気持ちだってこと」 幸は薄く微笑む。笑ってはいるがその目元はとても冷ややかだ。 「・・幸」 なぜ幸はこんなに冷たい表情をしているのだろう。 小さい頃から知っているはずの幸が、まるで初めて話す人間のようだ。 「・・・」 何をどう言えばいいのか分からず明は俯いて黙り込む。 目の前の、初めて見る幸にはどんな言葉を選ぶべきか。どうすればうまく伝わるのか。 頭で必死に考えるが良い言い方が出てこない。 そうやって明が無言のままでいると、静かなリビングに小さなため息が響いた。 その音の方に目をやると基依が呆れたような顔をして首筋を掻いている。 「・・・基依?」 「いや、なんかさ。お前ら兄弟なのに喧嘩下手くそだなぁと思って・・」 「は?」 幸が片目を細めて基依を睨みつける。そんな表情をする幸を見るのも初めてだ。 「言いたいことハッキリ言えばいいじゃん。なんなの?なんか聞いててむず痒くなるわ。明なんて完全に萎縮してんじゃん。もっと思ってること言ってみろよ、幸に。幸だってその覚悟はできてるだろ?」 基依はチラリと幸に視線を送る。幸は無言のまままっすぐ明を見つめた。 幸に、言いたいことを・・ そうだ。幸と向き合うと決めて戻ってきたのだ。遠慮していては今までと変わらない・・ 気がつくと明の握りしめた手が小刻みに震えている。明はゴクンと唾を飲み込むと掠れた声で呟いた。 「・・幸が、何を考えてるのかわかんない・・」 「え・・?」幸は聞き返すように耳を向ける。 「今、幸が何を考えてるのかわからない・・俺の知ってる幸は繊細で優しくて・・だから・・そんな、冷たい視線を人に向けるようなやつじゃないから・・」 「・・・・本当、明はいい子だよね」 幸が小さくため息をついて笑った。 「え・・・」 「そうやって、俺のこと良く言って悪口は言わない。俺がそれをどう思っていたか、知ってる?」 「・・どう、思ってたか?」 「明が俺を褒める度に、俺はすごい惨めだった。どんなに俺を褒めたって昴に選ばれてるのは明なのに。まるで慰められてるみたいな気分だった」 口元は笑っているが幸の瞳に影が落ちる。 「・・俺は、そんなつもりは・・」 「・・本当に?明はいつも俺のことを上げて自分の存在を卑下する言い方をするよね。それに俺を気遣うことで兄想いな顔をする」 「・・そ、そんなこと・・」 否定しようとする明の言葉を遮って幸は続けた。 「そういうの、俺から見たらすごく傷つくんだ。明が周りからよく見られるために俺は踏み台にされてるみたい・・俺はΩで立場的にも弱くて、明みたいに普通の生活が送れるわけでもないのに。どれだけ俺のこと惨めにさせたら気が済むのって」 「・・・幸・・」 幸の表情にさっきまでの笑みが消えた。 今まで溜めていたものを吐き出して気持ちが昂ったのか頬が少し紅潮している。 目からは一粒涙が溢れた。 「・・基依君、ちょっと肩貸して」 幸はそう言うと隣の基依の肩に額をあてて、溢れる涙を拭く仕草をする。 「・・ごめん、ありがと・・」 幸が基依にお礼を言いかけたその瞬間、バチンと鈍い音がリビングに響いた。 昴と基依、そして幸が目を見開いて音の方を見つめる。 明が両手で自身の両頬を叩いていた。 「・・め、明?」 隣にいた昴は心配そうに眉を顰める。 しかし明はさらに数回自分の頬を軽く叩くと、正面の幸を捉えるように見つめた。 「・・・わかった・・俺も、もっと遠慮しないで言う・・」 「・・・」 明のその言葉で幸の目元が少し引き攣る。 明は一回軽く深呼吸をすると視線を逸らすことなく言った。 「・・なんで、幸はそんなに自分のことばかりなの?」 「・・・え?」 「傷つくって、よく言うよね。分かるよ。悲しい事や嫌な事があったら傷つくのは。でも幸はまるでそれを免罪符のように使ってない?傷ついたって言えば、自分が人を傷つけていいと思ってない?」 「・・・」 幸はキュッと自身の下唇を噛む。しかし反論する気配はない。 明はそんな幸の様子を見ながら続けた。 「それって結局幸は自分のことしか考えてないんだと思う・・自分で自分を可哀想にして、それで人を攻撃していい理由を作ってない?」 そこまで言うと、明は瞳を閉じて幸から目を逸らした。 ・・言ってしまった・・ いや、覚悟を決めて言ったのだ。後悔してはいけない・・ 時々、思っていたことだ。けれどそんなことを考える自分の方が酷い人間だと否定してきた。 幸は繊細で傷つきやすいのだから、そうなることは仕方がないと・・ けれど、ずっとこんなことを続けていいのだろうか? 誰かが言わなければ幸はずっと同じことを繰り返してしまう・・それを出来るのはきっと自分だけだ。 明が黙って目を閉じていると「・・・そう」と言う幸の小さな声が聞こえた。 そっと瞳を開くと、幸が卑屈な笑みを浮かべている。 「やっぱり、そう・・思うよね」 幸の瞳は先ほどと変わらず赤みがかったままだ。 「俺も本当はわかってたよ。自分はすごく卑怯だって。でもそうでもしないと守れなかったんだ、自分の心を。いつも周りから好意も悪意も含んだ視線を向けられる、その気持ち明には分からないでしょ?」 「・・・」 「明は俺が人から好かれる人間だと思ってるみたいだけど、同じくらい妬まれてもいるんだよ。そういう嫉妬してくる人達から・・自分を守らなくちゃいけない。そのために誰かを傷つけてしまっても仕方ないと思ってた」 幸はそう言うと口を噤んで視線を下に向けた。 「でも、それも言い訳だよね・・」 「・・・」 シュンと俯いた幸は、いつもよりさらに小柄で儚く見える。 その簡単に綻びそうな姿を見ると、やはり庇護欲が掻き立てらてしまう。 「あぁ・・そっか・・」 明は息を吐きながら呟いた。 「俺は、ずっと幸を傷つけるのが怖かった。それは幸の悲しい顔を見たくないからだって、思ってたけど・・違ったのかも・・」 「え・・」 幸は顔を上げ明をジッと見つめる。 「幸が傷つくと、みんな幸の顔色をうかがいだす。みんな、幸のことばかり考える。だから・・俺は幸に傷ついてほしくなかったんだ」 「・・・」 「俺も、幸に嫉妬する人間の一人で・・結局自分のことばかり考えてた。幸の本当の傷に気づきもしないで、幸を羨んでばかりだった」 「・・・明」 「ごめんね、幸。幸が本当はどんな気持ちでいたか気づかないで・・」 「やめてよ・・!」 幸がか細い声で叫んだ。 「明は謝らないで・・謝らなくちゃいけないのは俺なんだから」 「・・でも」 目頭を押さえながら幸がポツリと言った。 「・・・ごめん・・俺さっきから明に酷いことたくさん言ったね。自分の最低さに気づいたばかりだったのに・・明を前にしたらずっと溜めてたものが爆発しちゃった・・」 「・・それは、俺だって・・・俺も・・いつだって選ばれるのは幸で、それを頑張って気にしないふりしてたけど・・本当はずっと悔しくて羨ましかった。正直、さっき幸に思ってること言えてちょっとスッキリしてる・・」 「・・・そっか」 幸は少しだけ安心したような顔をして微笑む。 「・・・俺達、こういう風に言い合いしたの初めてだね。明の、言葉が聞けてよかった・・」 「・・うん、俺も・・」 明も目元を緩めて笑った。 幸と、ぶつかるのが怖かった。 傷つけたら二度と元には戻らない気がして。 けれどそんなことはない。 俺達は他人では絶対に結べない特別な縁で繋がっている。 だから、怖がらずにぶつかっていけばよかったのだ。 そのことに気づかせてくれたのは・・・ 「明、悪いんだけど基依君のこと、駅まで送ってあげてくれない?」 それまで明に微笑みかけていた幸が隣にいた基依の肩に手をかけて言った。 「え・・・」 「昴と二人でちゃんと話したいんだ。いいかな?」 幸がチラリと昴に視線を送る。 ずっと黙って話を聞いていた昴の表情が少し硬くなった。 「・・うん、わかった。基依、いい?」 明はコクリと頷くと基依に目を向けて聞いた。 基依は小さくため息を付くと頭の後ろを掻きながら立ち上がる。 「・・俺はもう用済みってことね」 「言い方悪い。そういうことじゃないってわかってるくせに」 幸が睨みながら基依の足を軽くこずいた。 「はは。まぁ、気が向いたら連絡くれよ。ほら、行こうぜ明」 「うん・・」 基依は幸の顔は見ずにリビングを出て行く。 明もその後をついて行ったが、リビングを出る瞬間ふと幸と昴の方に目を向けた。 二人とも無表情のまま見つめ合っている。 これから、一体どんな話をするのだろうか。 ・・二人の歪みが、少しでも綺麗な形に戻ればいいのだけれども・・ 「明ー?早くしろよ〜」 すでに玄関で靴を履いていた基依が軽い口調で声をかける。 「あぁ、うん」 明は幸達から視線を逸らすと、慌てて玄関の方へと向かった。 「うわっ、あっつ・・」 外に出ると蒸し暑い空気が一気に体全体を包み、明は思わず声を上げた。 「出る時間、間違えたなぁー」 基依はそう言いながら首元の汗を拭く。 「まぁ、あのまま居ていい空気でもなかったし仕方ねーか」 「・・・うん」 明は目の前に出来た二人分の影を見ながら頷く。基依の方を向くのはなんとなく気まずい。 「・・・」 そんな空気を察したのか、基依はわざと明のつむじを人差し指でグリっと押した。 「わっ!なんだよ!」 明は驚いて顔を上げる。 二人の視線が重なった瞬間、それまで笑みを浮かべていた基依が真剣な顔つきに変わって言った。 「明、ごめんな・・」 「え・・」 口元が思わず引き攣る。 一体何に対しての謝罪なのか。 もしかして基依のことを好きだったことがバレている? 不安な気持ちを隠しながら、明はぎこちなく笑った。 「はは、何?幸と寝たこと?でも基依は幸が好きなんでしょ。ならそういう風になるのも仕方ないかなって・・」 「・・いや、それもあるけど・・俺が謝りたいのは、明と友達になった理由」 「・・・え?」 「俺は・・元々矢野や幸のことを知ってて明に近づいた。中学の時バスケの試合見に行ったことあるって言ったろ。矢野のことはその頃から知ってたんだ」 「・・・」 基依が何を言っているのか理解できず、明はポカンと口を開けたまま瞬きをする。 確かにそんな話をした。 何部に入るか聞かれた時だ。 けれどあの時は、昴のことなんて全く知らないような顔をしていたのに。 あれは全部演技だったということか。 「ごめん、騙してたみたいだよな。実はさ・・」 基依はそう言うと、なぜ昴や幸を知っていたのかを明に話し始めた。 話が進むにつれ、色々な点が線で繋がっていく。 部活に興味がなさそうだった基依がなぜだかあっさりバスケ部に入部したこと。それは俺に近づくためだった。 練習試合の時に、基依が昴や幸に対してどこか冷ややかな眼差しを向けていたこともあった。 それはきっと昴への対抗心や幸が恋人を連れてきたことによる嫉妬からくるものだ。 カラオケでの勉強会に急に乗り気になったのも、全ては幸や昴と関わるため。 そう。今思えば、基依はいつも俺の先に幸や昴のことを見ていたのだ。 それから、基依の従姉妹と言うのがお祭りで会った千晶だとわかり、あの時の昴と千晶の妙な雰囲気にも納得がいった。 夏期講習仲間とはずいぶん仲良くしていたように思えたが、明の知らない所で色々とあったようだ。 「そういう訳があったから、俺はわざと明と仲良くなった。それを謝りたくて・・」 全てを話し終えると、基依は気まずそうに俯いて頭を掻く。 しかしすぐに何かを思い直したのかパッと顔を上げた。 「でも、明のことを何とも思ってなかったわけじゃない。仲良くなって同じ部活に入って過ごす時間が長くなって・・明は自己評価は低いけどその分周りを見て気遣える奴だってわかった。一緒にいて、すごく安心できるなって思った」 「・・・」 「まぁ、それも後付けみたいに聞こえるだろうけどさ」 そう言うと基依は再び俯いた。 「・・・」 基依の話を聞き、改めて思う。 最初から基依の中では、幸が一番にいたのだ。 明が出会う前から、基依は幸が気になっていた。そのことがあったからこそ、明は基依と仲良くなれた。 『初めて自分だけを見てくれて仲良くなれた人』 そんなものは存在しなかったのだ。 「そっかぁ。うん・・やっぱり幸だよなぁ」 明は力無く呟く。 「幸は本当にすごい。友達どころか知り合いですらなくても、惹きつける力を持ってるんだもんなぁ」 「・・・」 「あっ、ごめん。なんて言うか・・改めて実感してるって言うか、幸のすごさをさ!」 嫌味ぽく聞こえてしまった気がして、明は慌てて明るく言う。 「幸に惹かれるのはおかしなことじゃないよ。弟の俺だって幸のことはつい気にかけちゃうし」 基依の一歩前を歩きながら明は上を向いた。 幸に対して、妬ましいという気持ちがなくなったわけではない。 けれど・・自分が基依を好きだと思った感情がとてもちっぽけなモノに思えるくらい、基依が幸に向けるモノの大きさを実感した気がした。 「・・あのさぁ」 明はクルリと振り向く。 「幸はさ、基依のこと結構特別に思ってると思うよ」 「え・・」 俯きながら申し訳なさそうな表情をしていた基依が目を向ける。 「さっきの基依と話してる時の幸、初めて見る顔してた」 「・・・」 「幸ってこんなに冷たかったっけ?って。基依にはなんにも気を遣ってない感じがしたよ。だから、きっと幸にとって基依は他の人より特別な何かがあるんだと思う」 「そうかな。適当に扱われてるだけじゃん?」 「え、基依わかってないなぁ。幸は人を適当にあしらわないんだよ。他人の心の機微に敏感だからね。でもきっと基依にはそういう気遣いがいらないって思ってるんだ。それって、すごい心許されてると思わない?」 「・・・」 基依はゴクリと喉を鳴らして頬を掻く。 明はニコリと笑うと両手を頭の後ろでクロスささて言った。 「だからさ・・手のかかる兄貴だけど、これからも仲良くしてくれたら嬉しい。まぁ、基依の出来る範囲でいいからさ」 「・・・あぁ」 小さな声が返ってくる。少し気恥ずかしそうにしながら基依は口の端を上げて笑った。 基依の、この笑い方が好きだった。 そう、好き『だった』とちゃんと思える。 だから大丈夫だ。 初めて芽生えた小さな感情は、ちゃんと過去の想い出として形を変えられるだろう。 そうして基依とはまた新しい形を作っていく。 幸とぶつかっても大丈夫なんだと教えてくれた、俺達の間に新しい風を吹かせてくれたこの人と。 彼の想い人の弟としてでもいい。 そんな形もまた、一つの特別な繋がりにきっとなっていく。

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