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ハッピーバースデー・ハッピーバレンタイン
「今日はお前がご主人様だ。ほら、なんなりと言ってみな」
「とてもご主人様に対する言葉遣いちゃうやろ」
ジトっとした目で見つめてくるラスティ。大方、俺がくだらない遊びでも始めたのだと思っているのだろう。
「では、慇懃な態度をとればよろしいですか? ご主人様」
「……うっさい」
こちらがわざとらしくそう言ってやれば、ラスティは頬を赤くしてそっぽを向いた。
今日はラスティの誕生日である。久しぶりにお互いスケジュールに空きがあったので、一緒に過ごすことになった。
毎年のようにライターを贈るのも面白くないので、いささかベタではあるが『俺がプレゼント』という段取りで話を進めるが、その戯れに彼はノッてこなかった。
「なんだよ、こういうの好きだろ。お前」
オレンジの髪を撫でながらそう言えば、ますます顔を赤くしたラスティがキッと睨んでくる。
「好きとか嫌いとかやなくて、オレは普通に久秀さんと過ごしたいの!」
「だから、こうしていつもと違うプレイをだな」
「エッチしたいワケちゃうわ!」
彼は俺の頬を軽くつねって、それからバツが悪そうに顔を伏せた。
「……久秀さんと過ごせればそれでええの」
「へぇ」
俺はラスティに顔を近付けて、意地悪く囁く。
「俺と二人で、ナニをするつもりだったんだ?」
「は?」
ラスティの顔がまた真っ赤になる。
「久秀さんのあほ! もう知らん!」
とうとう怒ってしまったようだ。ラスティはソファーから立ち上がると、部屋を出ようとする。しかし俺はその腕を摑んで引き戻した。
「ごめんって」
後ろから抱きすくめるようにして、俺はラスティの耳にキスを落とした。彼は一瞬ぴくりと肩を震わせたが、諦めたように体の力を抜いている。俺の掌が胸に回ると、その動きを阻むように手首をつかんでくるところもいじらしい。
「まだ外明るいやん」
窓の外を見ながら、ラスティが拗ねたように言う。
そんな子供っぽさがかえって愛しく感じられて、今度はその唇にキスをした。彼は静かに目を閉じてそれに応える。
俺はゆっくりと舌を入れた。歯列をなぞり、上あごを舐め上げると、ラスティの体はそのたびに小さく跳ねる。しばらくキスに夢中になっていると、彼は焦れたように俺のスウェットパンツを下ろしてきた。そして下着の上から俺の性器に柔らかく触れたかと思うと、頬を寄せてささやく。
「もう、こんなになってるやん」
艶を帯びたその言葉に、俺のモノはぐっと質量を増した。
「お前が可愛いからだろ」
「久秀さんのへんたい……」
ラスティは呆れたように言ったが、それから自分の服を脱いだ。
俺はその肌に触れる。きめの細かい滑らかな肌が指先に吸い付くようで心地よい。耳元からうなじへ、そして背中へと愛撫の範囲を広げていくと、彼の口から吐息が漏れた。頃合いを見計らって彼をそのまま押し倒し、俺はラスティに覆い被さった。
「久秀さん……」
そう俺を呼ぶその唇が唾液で濡れて光っている。俺はそれをぺろりと舐めると、もう一度彼の口内を蹂躙した。
舌を吸い上げ歯列をなぞる。そうすると彼はくぐもった声を漏らしながら、懸命に応えてくれるのだった。しばらくそうやって味わってから口を離すと、名残り惜しそうに銀糸が二人の間を繫いだ。
それからラスティの首筋に舌を這わせていく。同時に両手で彼の乳首をつまんだり弾いたりする。すると彼の口からは鼻にかかったような声が漏れた。
「んっ……あかん」
ラスティが俺の手を掴んで制止しようとする。しかし俺はそれを気にせず愛撫を続けた。次第にそこは硬く張り詰めてくる。
もう片方を口に含んで舐めながら、時折強く吸い上げると、彼は耐えきれないように小さく声を漏らした。同時に太腿の内側を優しく撫でてやると、ビクビクと腰を揺らすのがいやらしい。
「久秀さん……下も触って……」
やがてラスティは我慢できなくなったのか、ねだるような表情でこちらを見上げてきた。俺はそれに応えるように、彼の下着を取り払う。
すっかり立ち上がっていた性器がふるりと現れ、先端からは透明な液体が玉を作っている。それを塗り広げるように親指でぐりぐりと刺激すると、ラスティは身を捩らせて悶えた。
「んっ……はぁ……」
彼が快楽に染まった声をひっきりなしに漏らすのがたまらず、今度は空いている方の手で脇腹や臍のまわりを撫でる。すると彼はひときわ大きな声を上げた後、体を痙攣させた。
その隙を狙って、俺はゆっくりと中指を沈めていく。初めは拒むように収縮していた内壁も、次第に柔らかく開いていった。
「久秀さん……もうええから……」
息を荒げながらそう言うので、俺も下着を脱ぐ。それからラスティの膝を抱えるようにして持ち上げると、コンドームを装着した自分のものを彼の後孔にあてがった。
そして少しずつ体重をかけていくと、彼は眉間にしわを寄せてそれを受け入れた。全部入ったところで馴染ませるようにゆるゆると動かす。
「久秀さん……好き……」
ラスティはうわ言のように繰り返しつぶやくと、俺の首に腕を回してきた。そのまま抱きしめ合うようにして抽挿を繰り返す。
ラスティの中は柔らかく絡みつくようで、とても心地よい。俺は夢中で腰を打ち付けた。最奥まで届くたび、ラスティの体が小さく跳ねる。
「あ……ふ……」
吐息混じりに喉を震わせる彼の声に情欲を駆り立てられるようだ。俺はさらに激しく責め立てる。するとやがて限界が来たのか、ラスティはびくびくと体を痙攣させた。
同時に俺のものを包み込む肉壁も収縮し始め、まるで搾り取るような動きをする。
その時、ラスティの体が電流が走ったように震えたかと思うと脱力してしまった。絶頂を迎えたようだった。しかし俺はまだ満足していないので、そのまま抽挿を続ける。
「あ……だめや……オレ今イッてるからぁ」
ラスティは泣きそうな声を出したが、構わず続けるうちにまた彼のものは硬さを取り戻していった。
絶頂の余韻を引きずった状態のまま快感を与えられ続けて、彼の理性は崩れ落ちてしまったらしい。ラスティは焦点の合わない目で虚空を見つめている。
その瞳からは涙が流れ落ちたが、それでも快楽に浸りきっていることは明らかだった。ラスティの性器はどろどろになっていて、その先からは白い液体が止めどなく溢れていた。
俺はラスティに口付けると、そのまま舌を差し入れた。彼の口内を蹂躙しつつ、腰を動かす速度を上げると、やがて彼もまた自分から舌を絡めてくるようになった。
ラスティの口から漏れ出る吐息混じりの声に煽られて、俺も一気に高みへと上り詰めていく。そして同時に果てた瞬間、彼の中から自身を引き抜いた。するとゴムの先端には大量の精液が溜まっていて、自分でも驚くほどだった。
「ラスティ」
俺は息を整えながら、まだぐったりとしているラスティの名前を呼ぶ。彼は力なく顔を上げると、トロンとした瞳でこちらを見た。
「気持ちよかった?」
「……うん」
少し照れたようにうなずく姿が可愛くて、思わず笑みがこぼれる。このままもう一戦交えたい気分になったのだが、さすがに、彼の体を休ませなければならない、と思い直し自制した。
コンドームの処理をしていると、ラスティがじっとそれを見つめてくる。
「誕生日なんやから、中出ししてもよかったのに」
「……お前、そういうこと言うのは俺だけにしておけよ」
再び勃ち上がりそうになる自身を叱咤して、彼の頭を撫でた。
「誕生日おめでとう、ラスティ」
「うん、おおきに」
そう言ってラスティは無邪気に笑うのだった。
それから二人で軽くシャワーを浴びると、リビングでくつろぐことにした。いつの間にかすっかり日が落ちていて、窓の外には夜の気配が漂っている。
「ケーキ、買ってきてんだよね」
キッチンから持ってきた皿を見せると、ラスティは分かりやすく目を輝かせた。
冷蔵庫で冷やしておいたそれはイチゴのショートケーキだ。生クリームをたっぷり使って作ったそれを切り分けていくと、彼は嬉しそうにフォークを手に取った。そして一口食べるごとに感嘆の声を漏らす。
そんな彼の様子が可愛らしくて、俺はつい口元を緩めた。
「久秀さん」
突然ラスティが俺を呼んだ。彼は頬を赤く染めながらこちらを見つめている。
何か言いたげな様子だったので、俺は次の言葉を待った。しかしなかなか切り出さないのがじれったくて、俺から問いかけてやることにする。
「どうした?」
すると彼はさらに赤くなって俯いてしまった後、ゆっくりと口を開いた。
「今日はオレの誕生日なんやから……その……もっと甘えてもええ?」
そう言って上目遣いでこちらを見る瞳と視線が交わる。俺は思わず生唾を飲み込んだ。
「もっと具体的に言ってくれないと分からないな」
理性が崩壊する前に、今一度彼の口から俺を求める言葉が聞きたくて、わざと焦らすように言った。するとラスティは耳まで真っ赤にして視線をさまよわせる。
だがやがて覚悟を決めたように俺の目を見て言った。
「……久秀さんにぎゅーってして欲しいねん」
その破壊力たるや凄まじいものがあった。一瞬にして体が熱くなるのを感じて、俺は慌てて自分の顔を手で覆う。しかし彼には当然気づかれてしまったようで、彼はふふんと勝ち誇ったように笑っていた。
「仰せのままに、ご主人様」
俺は両手を広げてラスティを迎える体勢を取る。するとすぐに彼の体が飛び込んできた。背中に腕を回しながら抱きしめると、彼の鼓動を感じることができる。いつもより少し速いリズムを刻んでいる気がした。
しばらくそうしていると、不意に首元に顔を擦り付けてきたかと思うと、すんっと匂いを嗅がれる気配がした。
「久秀さんの匂いする……」
それだけ言って満足したのか、ラスティは俺から体を離して、照れくさそうに笑った。
「好きな人と一緒に過ごせる誕生日って、こんなに幸せなんやな」
「しかも、今日はバレンタインときたもんだ。お前は贅沢者だよ」
「高野久秀を独り占めできるもん。そりゃ贅沢やろ」
最高のプレゼントや、とラスティはまた俺に抱き着いてきた。
「今日は好きなだけ甘えていいからな」
そう言って今度は俺が彼の頭を撫でてやる。すると彼は幸せそうな笑みをこぼしたのだった。
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