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真骨頂
高野久秀の真骨頂は、その演じ分けの幅にある。
どんな役を演じても、そこに本人を感じさせない。まさに、役として生きている、と言っても過言ではない。
今回、久秀が演じるのは複数の人格を持つ青年役だ。
一つは狡猾で粗野、人を傷付けることを厭わない男。もう一つはこの世の醜いものなど知らず人を愛することを喜びとする少年、そして主人格のいたって平凡な男。大人と子どもをきっかけ一つで演じ分けなくてはならない。
最近はもっぱらミュージカルが多かった久秀の、久しぶりのストレートプレイだ。
久秀はラスティに、絶対にこの舞台を見に来るように、と念を押した。少しも、茶化すことなく。
どうやら久秀はこの舞台作品で、何かをラスティに伝えたいようだった。
しかしながら、いかんせんラスティも多忙だ。雑誌のインタビューやテレビやラジオの収録もある。それでも久秀がどうしても、というのでスケジュールを調整し、なんとか東京公演の大千穐楽だけ観劇することができた。
開演時間ギリギリに滑り込み、関係者席に座る。
やがて客電が落とされ、公演が始まった。
舞台は明治初期の日本。どことはしれない。文明開化の音が聞こえてきてまもない頃だ。
その共同住宅には様々な人物が住んでいる。すでに倒幕された幕府に並々ならぬ情熱をかける男、西洋に憧れる女、福沢諭吉に傾倒する学生、そして会うたびに顔つきの変わる男。そこに地方から出てきた生真面目な男が加わる。
出演者は実力派揃いで、そのなかでも実質三役を演じる久秀の存在はもはや異質であった。
平凡な主人格はどこまでも平凡で、個性がない。というより、素の高野久秀に近いとも言える。
個性的な面々を少し離れたところから見守っている。そんな男だ。
しかし、それもきっかけ一つでガラリと雰囲気が変わる。舞台作品である以上、そのきっかけは分かりやすいものでなければならない。
それが今回はシャン、という鈴の音だ。
その音一つで、さっきまで平凡だった男が、粗野な男や無垢な少年に代わる。
表情、声、仕草。そのどれもが違う。
平凡な男は優しく微笑んでいるが、粗野な男は眼光が鋭く声も低くしわがれている。逆に少年は高い声で言動も子どもっぽくなる。
百八十五センチの長身の男とは思えないその変わり身に、観客は度肝を抜かれる。最初はそのギャップをギャグと見ていたが、次第に違和感がなくなり『そういう人物なのだ』とみるようになる。
人格が変わるタイミングは、前半は頻繁ではない。なので、ゆったりとその三者三様を楽しむことができる。
しかし、物語も終盤に差し掛かると、入れ替わりは頻繁になる。登場人物たちの思惑が明るみになるにつれて、彼の精神状態は不安定になっていく。
そして、その不安定さが最高潮に達した瞬間に、高野久秀の芝居の神髄を見ることになる。
十分近い長台詞を三つの人格が、センテンス毎に喋るのだ。この時点ですでにきっかけである鈴の音は鳴っていない。表情、声、仕草ですべて演じ分けているのだ。
汗を流し、涙を流し、鼻水を垂らし、顔面をぐしゃぐしゃしながら、高野久秀はこの難役を見事演じきったのだ。
終演後、劇場を出たラスティは、胸のなかにある奇妙な感情の正体に困惑していた。
作品は純粋に面白かった。脚本家はクセのある作品を書くことで有名だが、それを抜きにしても群像劇としてよくできていたと思う。
演者も実力派揃いということもあって、安心して見ることができた。自分ならあの役をやってみたい、自分ならこうする、あの人の表現は自分の芝居に取りいれてみたいと、役者として学びの多い作品でもあった。
それなのに、胸の奥にはモヤモヤとした感情が渦を巻いている。
駅に向かう途中、ポンとスマホの通知音が鳴った。久秀からである。
『今どこ?』
『駅の近く』
『了解。ちょっと駅で待ってて』
そんな短いやりとりをしてから駅前で待っていると、一台の車が横付けされる。
「ラスティ!」
車の中か久秀が声をかけてきた。
「……久秀さん、お疲れさまです」
「お疲れさま。ほら、乗って」
久秀に促されるまま、ラスティは車のなかに乗り込む。
運転手は彼のマネージャーで、そのまま自宅に向かうように久秀は指示を出した。
車内では始終、無言だった。久秀はスマホを操作しているし、ラスティは窓の外に流れる景色を見ている。決して重苦しい空気ではないのだが、マネージャーはカーステレオから流れてくるラジオの音を少しだけ小さくした。
「高野さん、本日はお疲れさまでした」
「ああ、お疲れさまでした。お気をつけて」
自宅マンションに着くと、久秀はマネージャーを見送ってラスティとともになかに入っていく。
部屋に入ると荷物をまとめて寝室に置いて、風呂の給湯器のスイッチを押した。
「いやぁ、疲れたな。ダメだ、風呂入ったらすぐに寝そう」
「お疲れさん」
ソファに二人して腰を掛けると、久秀はごろんと横になった。ラスティの膝の上に頭を乗せて、大きなため息を吐く。
「ラスティ、今日は泊まっていける?」
「どうせ帰すつもりないやろ。まぁ、明日は夜からうちの事務所の懇親会があるから、それまでやったらええよ」
手を伸ばして頬を撫でてくる久秀に、ラスティは肩をすくめてみせた。
「久秀さんって千穐楽のあとってこんな感じなん?」
「こんな感じなんだよ。今回は本当に疲れたからな」
「ふうん」
撫でていた手を降ろして、また大きくため息をつく。目を閉じて、それっきり久秀は黙ってしまった。
呼吸は静かになったが、眠っているわけではなさそうだ。久秀の頭の重さを膝に感じながら、ラスティは彼の髪を撫でる。すると、久秀はクスクスと低く笑って、ラスティの腹に顔を埋めた。
珍しく甘えてくるものだから、さきほどまで舞台上にいた男と果たして同一人物なのかと疑いたくなる。しかし、どらちらもまぎれもなく高野久秀なので、ラスティはまた胸のなかにモヤモヤとした気持ちが沸き上がるのを感じだ。
軽快なメロディーとともに、お湯張りが終了したことを給湯器が告げる。
「久秀さん、お風呂は?」
「んー、面倒だけど入るわ。ラスティも一緒にどう?」
「やだ」
「つれないなぁ」
少しだけ残念そうにしながら、久秀は着替えを持って風呂場へ向かった。
彼がいなくなると、すこし気持ちが和らいだように感じる。ふう、と一息ついて何気なくローテーブルの上に目をやると、とたんにドキンと心臓が鳴った。
そこにはよく使い込まれた冊子があり、それが今回の舞台の台本であることがすぐに分かった。
表紙には久秀のサインが入っている。付箋がびっちりと張られていて、ページもかなりくたびれている。
久秀は台本にかなり書き込むタイプだ。それは歌の譜面も同様で。一度、譜面を見せてもらったことがあるが、とにかくぐちゃぐちゃで、何が書いているのか元は何が書かれていたのか判別ができないほどだ。
台本はいわば演者の商売道具。演技のプランを書き込む者も多く、企業秘密として見られることを嫌う者も多い。
それは久秀も例外ではない。譜面はどうせ見ても分からないだろうということで見せてくれるが、台本だけは頑なに死守している。
その『企業秘密』がこれ見よがしに置いてある。
芝居に関して一切の妥協も油断もしない久秀が、こんなヘマをするだろうか。これでは、見てくれと言っているようなものだ。
操られたようにラスティは台本に手を伸ばす。しかし、残った理性が制止をかけた。見てはいけない。これは、彼の商売道具なのだから。
もし、これを見たことがバレたら、久秀は怒るだろう。怒らないにしてもいい顔はしないはずだ。
でも、見てみたい。どうすれば、あんな芝居ができるのか、その秘密が分かるはずだ。
気が付くとラスティは台本のページをめくっていた。
そこには、今回演じた役の全てが記されていた。
おそらく脚本家に聞いたのだろう。役のバックボーン。それぞれの人格がどういう性質を持っているのかという人物像。声のトーンに至っては、まるで歌でも歌うかのように音程が書かれていた。
そして、あの長台詞。
どうすればあんなふうに瞬時に役を切り替えられるのか。どうして混同しないのか。ラスティは不思議で仕方がなかった。
長台詞のページは、まさに譜面だった。一文字単位で計算されており、この文字から人格が変わる、この文字の子音であの人格に変わる、ここから声のトーンを上げていく、下げていく。
といったことが一文字単位で記されていた。
その緻密な熱量にラスティはゾっとする。この『作業』をそうだと気付かされないように、あの芝居をしていたのだ。
勝てるわけがない。追いつけるわけがない。
ラスティは、胸のモヤモヤの正体をやっと理解した。
これは嫉妬であり、恐怖であった。
久秀はおそらくこの台本を、わざと見えるところに置いて行った。
演劇というものに対して貪欲なラスティが、あの久秀の芝居を見てなにも感じないはずがない。こうしてその秘密が書かれたものを置いておくことで、確実に手に取るだろう、という久秀の思惑が見えて、悪寒が走った。
「なぁに見てんだよ、えっち」
感情の読めない声が後ろから聞こえる。ラスティは振り返ることができない。
「俺、そういうの嫌いなの知ってるだろ?」
わざとらしい口ぶりに、ラスティは生唾を呑み込んで台本をもとの位置に戻した。
声の主・久秀は上半身裸で髪を拭きながら、ラスティの隣に腰を下ろす。
「それで、なにか盗めたか?」
じっと顔を覗き込んでくる久秀。そこにいるのは、恋人の高野久秀ではなく、役者としての高野久秀だった。
「……なんも」
「へぇ。あの芝居見て、台本まで読んで、なにも学べなかったんだ」
チクリと針で刺すような久秀の言葉に、ラスティは押し黙る。
「残念だなぁ」
台本をパラパラとめくりながら、久秀はため息をつく。
決して怒っているわけではない。それでも、その言葉に威圧感を感じてしまい。ラスティはますます言葉を発せなくなった。
久秀はラスティに明確な答えを求めているわけでない。ただ、どう感じたのか聞いているにすぎない。
ラスティは、小さく深呼吸をしておずおずと口を開いた。
「久秀さんの……高野さんの真似はできへんなって思った」
「ふうん。それはどういう意味で?」
「オレがこの台本の通りにやっても、同じようには演じられない。自分がいかに未熟か、わかった」
「できるだろ。全部、答えが書いてるんだから」
「できへん。オレの今の実力じゃ、この通りにはならへん」
ラスティの言葉に、久秀はまた「ふうん」と気の抜けた返事をした。
「オレだったら、たぶん、どこかで齟齬が出てくると思う。あの長台詞は今のオレじゃ無理や」
「微塵もできない?」
「……うん。全部、オレの言葉になってしまう、と思う」
それは久秀の芝居を見ながら思ったことだ。
ラスティは舞台にせよ映画にせよ見るときは必ず、もし自分なら、と置き換えている。自分ならこういう言い回しをして、こういう感情のもっていきかたをする。
これは役者を初めて間もないころ、久秀に教えてもらったことだ。
芝居に正解はないのだから、人のそれを見ていいところを吸収する、見て学ぶものだと言っていた。しかし、だからといって猿真似はするな、と。
ラスティはちらっと久秀の顔を見る。彼は別に怒っている顔はしていなかった。ただ、じっとラスティの顔を見ている。
役者として尊敬している高野久秀の芝居を、自分もやってみたいと思った。彼ならどう演じるか、これまで身近で接してきたし、少しぐらいならできるかもしれないと思ってしまった。
だから、先の舞台で少しだけ、高野久秀のような演技プランを出してしまった。
結果的に、周りの反応は良かったが、自分としては納得のいく出来にはならなかった。フワフワとどっちつかずで、その役ではなく『高野久秀』を演じたにすぎなかった。
「オレは、高野久秀にはなれへん」
「そりゃそうだ。俺は高野久秀で、お前はラスティアス・ライジェルなんだから。俺が積み上げてきたものを、そう簡単に真似されてたまるか」
台本をポンとローテーブルに投げて、久秀はラスティに詰め寄った。
「俺とお前じゃ年季が違う、芸歴が違う、経験が違う。俺の芝居を気に入ってくれて、参考にしてくれるのは嬉しい。でも、まるっきり真似をされるのは不愉快だ。それで不完全燃焼になられたんじゃ、なおさら」
やや強めの口調で言われ、ラスティは逃げるように視線を落とす。
「……ごめんなさい」
「それ、次は絶対にやめてくれよ。絶対に許さないからな」
久秀はラスティの頬を挟んで自分のほうを向かせ、顔を近づけた。
「いいか? 俺は俺以外の人間に俺の芝居を真似されるのは嫌いだ。だから、お前も俺を真似るのはやめろ。俺の真似をするんじゃなくて、お前自身の芝居をしろ。それができないなら、役者なんてやめちまえ」
久秀の鋭い眼光に射抜かれる。
ラスティは呼吸さえも忘れて、その瞳をただ見つめるしかなかった。
「わかったか?」
「……うん」
ラスティがうなずくと、久秀はやっと頬の拘束を解いてくれた。
「じゃあ、風呂入ってこいよ。飯にしよう」
「ん」
まだ少し呆けた状態のまま、ラスティは風呂場に向かう。その背中を見送った久秀は、フゥと息を吐いた。
ラスティは役者としてとても優秀だ。
物覚えもいいし、いいと思ったことはすぐに吸収して、自分の糧にする。会うたびに成長をする彼を見るのは非常に喜ばしい。ただ、先の彼の舞台はとても見れたものではなかった。
明らかに久秀の模倣をしている、というのがわかったからだ。ラスティアス・ライジェルの芝居ではなく、高野久秀の芝居。
どういう意図があってそうしたのかは分からないが、実際に観劇をした久秀は素直に不愉快だと感じた。
ラスティは役者としてどんどん成長する。その成長ぶりを見るのはとても楽しいし、恋人としては誇らしくもある。
しかし、ラスティは久秀の真似事をするべきではない。
役者としての『高野久秀』を尊敬してくれることは嬉しいが、その芝居をそっくり真似しようとしてはいけないのだ。それは、ラスティにはできない芸当なのだから。
「難しいなぁ」
久秀はソファに横になって天井を見上げる。
ラスティのそういうところが好きだが、その反面とても不安になる。
彼の中にある高野久秀という男はきっとひどく輝いているのだろう。けれど、それは『理想』だ。そんなものには、追い付けない。真似なんてしないでほしいと思うのだ。
「あー、どうすればいいんだろうなぁ」
ため息交じりに呟いて、久秀はスマートフォンを操作する。今から何かを作る気も慣れず、宅配サービスを利用することにした。ピザとフライドポテトのセットを注文し、怠惰そうに起き上がる。
財布の中を確認していると、風呂から上がったラスティが髪を拭くのもそこそこに、久秀の背中にポフンと頭を預けてきた。
「……どうした」
「なんもない」
「そうか」
ラスティはグリグリと額を押し付ける。なにか言いたいことがあるのだろうが、あえて気付かないふりをした。
「ピザ取ったから、一緒に食おうな」
ラスティから離れて久秀はタンクトップを着込む。スマホを確認すると、配達員はすぐ傍まで来ているそうなので、その応対のために玄関に向かった。
ほどなくしてチャイムが鳴り、配達員がピザを持ってきた。
「ほら、ラスティ。腹減ったろ」
「うん」
「ビールでも飲もう」
受け取ったピザとフライドポテトをローテーブルの上において、ビールを冷蔵庫から取り出した。
「ラスティ、おいで」
久秀が隣に座るように手招きをする。ラスティは素直に頷いて、彼の隣に座った。ソファがギシリと音を立てる。
「今日、泊まっていくよな」
「……うん」
久秀がそう言うと、ラスティは戸惑いながらも頷いた。
そして、彼にぴたりと寄り添って肩に頭を乗せる。その頭を優しく撫でながら、久秀はビールのプルタブをあけた。
「飲みたい気分なんだ」
「オレも飲む」
久秀に倣うようにして、ラスティもビールに口をつけた。アルコールのおかげで少し気分が軽くなる。
「あのな、ラスティ。俺は役者としてお前より芸歴が長い。だから、お前の先輩でもある。ただ、俺の芝居を真似てる時点で、お前は俺には勝てない」
「うん」
わかっていることではあるが、あえて言葉に出して言う。これはラスティに自覚させるためで、事実だ。
役者として自分が先輩であり、高野久秀は遥か高みにいる人間であるということ。
「けどなぁ……」
髪をなでていた手を滑らせて頭を撫でると、ラスティがくすぐったそうに首をすくめたので思わず笑みがこぼれる。
「演技の勉強を、俺から始めるのは違うと思うんだよなぁ」
その言葉にラスティの瞳が揺れた。やはり、彼は自覚していたのだろう。
「お前、俺の芝居を見てどう思った?」
「……なんか、こう、グワーッてなる」
その表現があまりにも抽象的だったので久秀は思わず笑った。しかし、ラスティは大真面目だ。そして、それが彼の精一杯の言葉だということも分かる。だから、久秀は笑うのを堪えた。
「そうか、グワーッてなるんだな」
久秀が優しく問いかけてやると、ラスティは頷く。
「それがラスティアス・ライジェルだ」
その言葉に、ラスティは数回瞬きをした。思いもよらない言葉だったのだろう。
「お前は俺にはなれないし、俺はお前にはなれない。それは当たり前のことだ。でもな、お前の芝居には『お前らしさ』があるんだよ」
「……オレらしさ?」
その答えに久秀はうなずく。
「お前にはみんなを引き付ける力がある。見ている人を前向きな気持ちにさせる力だ」
ラスティの手の中にある缶ビールを取り上げてテーブルに置くと、彼を真っすぐに見つめた。
「俺たちはこれからも高みを目指していくんだ。そのためには失敗してもいいし、恥もかいていい」
その言葉にラスティは静かに頷く。
「俺はお前の先輩として、恋人として、全力でお前に付き合ってやる」
そう力強く言い切ると、ラスティはギューッと久秀に抱き着いた。その背中をポンポンと叩いてやると、彼はくぐもった声で「おおきに」と言った。
どうやら少しは胸の中の靄が晴れたようだ。
「オレ、久秀さんみたいになりたい」
「俺みたい、か」
ラスティの言葉に久秀は苦笑いする。しかし、その目はとても真剣だ。
「なら、もっと頑張らないとな」
「……うん」
ラスティは久秀の腕の中で大きくうなずいた。
「オレ頑張るから……だから……」
そんな彼の額に口づけをして、久秀は笑った。そして、そのままラスティをソファの上に押し倒すと、その上に覆いかぶさった。
「今日は朝までコースでいくぞ」
「え?」
戸惑うラスティに久秀は笑って見せると、彼の耳元で囁く。
「……俺の真似なんかできないくらい愛してやる」
そんな言葉にラスティは顔を真っ赤にする。そして、小さな声でこう返したのだ。
「……お手柔らかにお願いします」
ラスティの言葉に久秀は笑みを深くし、彼の服の中に手を滑り込ませたのだった。
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