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旅の夜

 夜の帳が下りて、鈴虫の鳴き声を聞きながら酒を酌み交わしていた。他愛のない話に花が咲き、時を刻むかのように酒瓶やグラスの中身が少なくなっていく。 「なぁ久秀さん」 「うん?」 「オレのこと好き?」  その言葉に一瞬きょとんとしたがすぐに笑顔を浮かべると、隣に座るラスティを抱き寄せてその頬に唇を寄せる。 「……もちろん大好きだよ」  耳元で囁かれる甘い声にラスティはくすぐったそうに笑う。そしてお返しとばかりに久秀の頬にキスを贈った。 「オレも」  はにかみながらそう答えるラスティを優しく抱きしめて、もう一度キスをする。  それから啄むような軽い口付けを繰り返し、やがてどちらからともなく舌を絡めて深く口づけを交わすのだった。  唇を離すと銀色の糸が引いた。それを舐め取って再び唇を重ねる。角度を変えながら何度も繰り返しているとラスティの体が小さく震えたのがわかった。  それに気をよくして、今度は耳たぶに噛みつくようなキスをして舌先で舐る。 「ちょ、久秀さ……」  身をよじって逃げようとするが力が入らないようで、あっさりと抱き寄せてしまう。そのままラスティの首筋や鎖骨に吸い付いて赤い痕を残していった。 「んっ、だめやって」  制止の言葉を無視して服の中に手を滑り込ませると、ラスティは慌ててその手を掴む。 「ここじゃ嫌やって」 「どうして?」  意地悪く笑って聞き返すと、ラスティの顔が真っ赤に染まっていくのがわかった。それでも構わずに胸の先端を摘まみ上げると、高い嬌声が上がる。 「ひゃっ!」  そのまま指先で転がすように弄ぶと、ラスティは切なげに身をよじらせた。その姿が可愛くて執拗に弄っているうちにラスティの股間が膨らんでいくのがわかった。 「あっ……やだ……」  恥ずかしそうに内腿を擦り合わせる姿に煽られて、久秀はラスティの浴衣の裾を捲り上げるとその中心に手を伸ばす。そこはすでに熱を持ち始めていて、軽く触れるだけで腰が跳ね上がるほどだった。 「久しぶりだから我慢できないみたいだな」  久秀は耳元で囁くとラスティのものを優しく握り込む。  ゆっくりと上下に扱き始めるとその先端からは透明な液が滲み出してきた。それを潤滑油代わりにしてさらに強く刺激を与え続けると、やがて限界を迎えたらしくラスティは久秀の手の中に熱を放ったのだった。 「はぁ、はあ……」  荒い呼吸を繰り返しながらもまだ物足りなさそうに腰を揺らす姿に、久秀も思わず生唾を飲み込む。  そしてそのまま、ラスティを押し倒し、彼の浴衣の中に手を滑り込ませた。  胸の先端を指で押し潰すように刺激を与えながら首筋や鎖骨に舌を這わすとラスティは甘い吐息を漏らす。  久秀はラスティの浴衣を取り去ると自分も裸になり、彼の両足を開かせた。そして露わになった秘部へと手を伸ばすとゆっくりと中へ侵入させる。 「んっ」  太い指が入ってくる感覚にラスティは小さく声を上げたが、久秀はそれを無視して中を探るように動かす。そしてある一点を見つけるとそこばかりを刺激し始めた。 「ここが好きだったよな?」  意地悪く言うとラスティは涙目になって首を横に振る。しかしその表情とは裏腹に、彼の体は敏感に反応していた。  久秀の指を締め付けるように収縮を繰り返す内壁の動きを感じながら、さらに追い詰めるように強く擦る。  するとラスティが一際高い声を上げながら体を痙攣させた。どうやらまた達してしまったようだ。 「まだいけるだろ?」  そんな久秀の言葉に応えるかのように、ラスティは蕩けた表情を浮かべながら小さく首を縦に振る。  それを確認した上で、久秀は自分の欲望の塊を取り出すとラスティの中へ一気に突き入れた。 「ああっ!」  待ち望んでいたものを迎え入れたかのように絡みつく内壁の熱さに思わず達してしまいそうになるのを堪えつつ律動を開始する。  最初はゆっくりだった動きが次第に速くなっていくにつれてラスティの口から漏れる声も大きくなっていった。  そしてついに限界を迎えたその時、二人は同時に果てたのだった。熱い飛沫が中に注がれる感覚に身を震わせながらもラスティは幸せそうな表情を浮かべていたのだった。  しばらく余韻に浸っていた二人だったが、久秀はラスティの中から自身を引き抜くと、今度は彼をうつ伏せにして尻だけを高く上げさせた。 「ちょっ何すんの」  突然のことに狼狽えるラスティを無視して背後から覆い被さると再び挿入する。  先程放ったばかりの白濁が潤滑油代わりとなり、すんなり奥まで入り込んだ。  そのまま激しく揺さぶってやるとラスティの口から甘い吐息が漏れるのがわかる。それに気をよくしてさらに動きを速めるとラスティは再び絶頂を迎えようとしていた。 「やっ、あかん……!」  一際大きな声を上げると同時に久秀もまた欲を放つ。熱い飛沫が注ぎ込まれる感覚にラスティは体を震わせたのだった。  だがそれで終わりではなかった。久秀はラスティの中から自身を引き抜くと今度は彼を仰向けに寝かせて両脚を抱え上げる。そして再び挿入し激しく突き上げ始めたのである。 「ひゃうっ! 待って……」  絶頂を迎えたばかりの敏感な体には強すぎる刺激に悲鳴を上げるが、それでも構わずに責め続ける。  やがてラスティの体が痙攣し始めたのを見て、久秀はラスティ自身を握り込み射精を封じた。 「やっ! 何で!?」  突然のことに驚きと困惑が入り混じった表情を浮かべるラスティに微笑みかける。そしてそのまま何度も最奥を突き上げたのだった。 「やぁっ! もう許してぇ!!」  涙を流しながら懇願するが聞き入れられるはずもなく、それどころかさらに激しくなる一方である。やがてラスティは限界を迎えようとしていた。 「ああぁっ!! またイッちゃうぅ!!」  ビクビクと体を震わせながら叫ぶと同時に、久秀もまたラスティの中に欲望を放った。 「はぁっ……はあ……」  肩で息をしながらぐったりと横たわるラスティを抱き寄せ、その額に軽く口付けを落とす。それから優しく髪を撫でてやった。 「大丈夫か?」 「ん……」  小さく返事をするラスティの額にもう一度キスを落とす。それから彼の頬に手を当ててじっと見つめ合った。  お互いの視線が絡み合う中でどちらともなく顔を近づけていくと唇を重ね合わせる。  触れるだけの軽い口付けだったがそれだけで十分だった。やがてゆっくりと顔を離すと見つめ合い微笑む。  そしてまた啄むようなキスをした後、二人揃って眠りについたのだった。  翌朝。目が覚めると既に太陽は昇って、障子越しに差し込む光で室内もぼんやりと明るかった。  隣を見ると裸のまま眠っているラスティの姿がある。昨夜のことを思い出しながら、そっと頬に触れてみるとくすぐったそうに身じろぎした。その仕草に思わず笑みがこぼれる。 「ん……」  ゆっくりと開かれた瞼の下から空色 の瞳が現れ、ぼんやりとこちらを見上げている。  まだ半分寝ぼけているようだ。だがそれも数秒のことですぐに我に帰ると慌てて布団を頭の上まで被ってしまった。 「おはよう」  声をかけてみるが返答はない。代わりに布団の中からくぐもった声が聞こえてきた。  どうやら怒っているようだ。その姿が可愛くてたまらないといった風に笑いながら久秀は布団の上からラスティの頭を撫でた。 「昨日は無理させて悪かったな」  謝ると少しだけ顔を出したがすぐにまた隠れてしまった。どうやら拗ねているらしい。  その姿すら可愛くて仕方がないのだが、これ以上機嫌を損ねられても困るのでとりあえず宥めることにした。  しばらく頭を撫でているとようやく機嫌を直してくれたようで、もぞもぞと動き始める音が聞こえる。  それからおずおずといった感じで顔を覗かせたかと思うと小さな声でこう言ったのだった。 「オレも……気持ちよかったからええよ……」  そんな可愛いことを言うものだから思わず抱きしめてしまいそうになったがどうにか堪えた。ここで手を出してしまったらまた怒られてしまうだろうと思ったからだ。  二人で旅館に泊まりに来たのは初めてのことだった。そして最近はお互いに忙しくてなかなか会うことができなかったため、こうして一緒にいられることが嬉しかった。  ラスティも同じ気持ちなのかいつも以上に甘えてきているような気がする。それがまた可愛くて仕方がなかった。 「そろそろ起きようか」  着替えを済ませ朝食を食べ終えるとチェックアウトの時間までのんびり過ごすことにした。  窓から見える景色を眺めながら他愛のない会話をしているとあっという間に時間が過ぎていく。名残惜しいがそろそろ帰らなくてはならない時間になってしまったようだ。  帰り支度を整えているとラスティが口を開いた。 「また来ような」  その言葉に笑顔で応えると二人は帰路に着くべく旅館を後にしたのだった。

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