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自慰事情
「ラスティってさ、オナニーってする?」
「は?」
ふと思いついたことを聞いてみると、ラスティは素の声を出した。
そして汚いものを見るような目で、俺を睨んでくる。外国人の冷めた目というものはなかなか強烈ではあるが、相手がラスティなのでその視線すら可愛いと思ってしまう。
「だからさ、ラスティは一人でヌイたりするのかなぁって」
「それ知ってなんか意味でもあるんか」
「いや、意味はないけど。気になって」
瞬間、ラスティのグーパンが飛んできた。それを受け止めてやると今度は蹴りが繰り出される。反対の手でそれも防ぐと、ラスティは悔しそうにする。
「ラスティは気にならない?」
グーパンを受け止めた手を引いて、彼を抱きしめ耳元で囁くと、ラスティは頬を赤くする。実に単純で分かりやすい。
「なにを……」
「俺のオナニー事情。オナホは使うのか、とかオカズはどんな媒体を使ってるのか、とか」
ぼかすことなく直接的に言ってやると、ラスティはますます顔を赤くした。
ケガで入院していたころ、電話越しに一回だけ自慰をしたことがある。付き合って間もなかったし、早く触れ合いたいという気持ちが先走って、二人して電話越しに致したのだ。
あれはあれで興奮したし、ラスティが俺をオカズにしている事実に征服欲が疼いたものだ。
「俺の教えるから、ラスティも教えてくれる?」
「アホちゃうか!」
真っ赤な顔で口をはくはくさせて。うぶなその反応が可愛い。なんならこの反応をオカズに致すこともできる。
正直なところ、市場に出回っているアダルトビデオの類には取り立てて興奮はしない。綺麗な子だったり可愛い子だったり、好みの子はいるがどうも演技だと分かってしまうのか冷めてしまう。では、洋ピンではどうかと聞かれてしまうと、それも特に興奮はしない。向こうで遊びすぎたため、飽きてしまったのだ。
それでも溜まるものは溜まる。そういうときは、やはりネットに転がっているエロ動画を見てヌイていた。
しかし、ラスティと出会ってからは、彼のことを思い浮かべていたが、やはり本物に勝るものはない。自分でいうのもなんだが、俺は変なところでリアリストなのだ。
相変わらずラスティはゆでだこ状態のままで、なにかを喚いている。変態だのスケベだの可愛いことしか言わない。
あまりに可愛かったのでその唇に口付けると、ラスティは一瞬固まって、そのあと余計に怒り出した。
「このスケベオヤジ!! なにすんねん!!」
「いや、可愛いからつい」
「つい、じゃないわ! アホ!」
ぎゃんぎゃんと喚くラスティの唇をもう一度ふさいだ。今度は大人しくなされるがままだ。それでも不貞腐れているようで、そっぽを向いている。こういうところがまた可愛いのだ。
「じゃあ、質問を変えようか。俺でヌイたことある?」
「はっ……」
その質問をした途端に、ラスティがわかりやすく動揺した。
「あ、あるんだ。へー、そう」
それを肯定とみなして頷くと、ラスティは慌てたように首を振る。
「そ、そんなの違う! オレ、そんなのやってへん」
「俺はお前をオカズにしたことあるけどなぁ」
「はぁ?!」
焚きつけるようにそう言ってやると、彼は大声をあげた。肌が白いので真っ赤になると分かりやすい。
「なんで……」
「だってお前、可愛いもん」
なんでもないふうに言ってやると、ラスティは絶句する。
彼はこういうとき、結構足が速いのを俺は知っているのでベッドサイドまで追い詰めてやると、ラスティは目に涙すら溜めた。
「なあ、どんな妄想した?」
少し体を屈めて彼の顔を覗き込むようにすると、その潤んだ瞳からは涙がこぼれそうだ。困ったように視線を泳がし、俺の視線から逃れるようにして縮こまった。
「なにを想像した?」
自分の吐息さえ色を帯びている。そのくらいの距離で囁きかけると、ラスティは蚊の鳴くような声で答えた。
「……なにって……言わなあかんの」
「うん、聞きたいなぁ」
いつもはハキハキ喋る彼の小さな声に背中がぞくぞくした。この声を知っているのも俺だけなのだと思うと興奮する。
「ひ、久秀さんの出演した…Vシネ見て……ヌイたこと……ある」
「へぇ、アレ見てオナニーしたんだ。えっちだなぁ」
俺がいつか出演したやや大人向けの作品だ。彫師の男と極道の娘の濃厚なラブロマンスで、ガッツリと濡れ場がある。俺たちが付き合うことになるそもそものきっかけとなった作品だ。
「どんな風にヌイたの?」
そう耳元で聞くと、ラスティはまた顔を赤くした。そして蚊の鳴くような声で言う。それは俺の耳にしっかり届いた。
「あの、ヒロインに自己投影して」
ラスティは、極道の娘を自分に置き換えてヌイたのだという。その自己投影した女優が、俺の演じた彫師に抱かれる姿を想像して、彼は興奮しヌいたのだ。
「どんな風に? 俺にどんなことされたい?」
畳み掛けるように聞くと、ラスティはまた口をもごもごさせた。そして意を決したように口を開く。
「は、裸にされて……胸弄られたり、吸われて……」
そう言いながら自分で自分の体を抱くようにした。その動作がまた煽情的で可愛い。
「うん」
「キスいっぱいされて、あそことか胸とか触られて、い、いくまで手とか舌とかで犯されて」
ラスティは泣きそうになりながらそう告白する。俺は彼の体を抱きしめたままベッドに倒れ込み、耳元で囁いた。
「それで?」
そんな続きを期待しているのも確かだが、同時にそろそろ理性の限界だとも思っていた。彼の体には既にしっかりと熱を持っているものが当たっているし、俺も正直苦しい。
「それで、入れてほしいってお願いして、いれられて」
ラスティはそこまで言うと、顔を両手で隠してぐずぐずと泣き出してしまった。その動作がまた可愛いのだ。
「そっかー、ラスティえっちだなぁ」
そう言いながら髪を撫でてやると、ラスティは俺の胸に顔を埋めて泣いているのか頷いた。そして俺の服の裾をぎゅっと握る。
「久秀さんとシたい……」
そう言われて俺は目を丸くした。彼がそう言ってくれるのは嬉しかったし、この流れでそのまま本番に突入してもよかったが、それ以上に彼から求められて嬉しいと感じたのだ。
ラスティの顎を掬ってこちらを向かせると、泣いている彼の唇を吸った。舌を絡め取りながら彼の下半身に手をのばしていく。デニムの上からでもわかるほど、そこは熱を持っていた。
ベルトを外して前を寛げてやると下着にはもう先走りのシミがある。軽く擦り上げると、ラスティの口から吐息が漏れた。
「んっ、久秀さん……」
名前を呼ばれながら手を掴まれる。そのまま下着の中に誘われると、彼のそこに直に触れた。
ラスティのそこはもう我慢しきれないとばかりに熱く、先端にはぬめりがある。ゆるゆると扱いてやると、彼は喘ぎ声を溢した。
そのタイミングで彼をベッドに押し倒してズボンを脱がせていく。デニムを抜き取りそれも床に落とすと、ラスティは期待するような表情で俺を見上げた。
もう何度もこういうことをしているはずなのに、まるで初めてのときのように緊張して鼓動が高鳴る。
俺はラスティのその期待に応えるように、彼の膝を割って足を開かせた。
彼のものは期待でビクビクと震えている。その先端にキスをするように口付け、それから根元まで舐め上げた。
ラスティのそこはすでに先走りで濡れていて、それを啜ってやるように舐ったあと口に含んだ。
「んあぁっ! あ、やぁ……」
わざと水音を響かせるようにしながら吸い上げてやると、ラスティは切なげに喉を鳴らした。舌先で鈴口を割り開くようにしてやれば簡単に嬌声が聞こえる。
彼自身も快楽から逃れようと腰を揺らしているが、それが逆に俺に押し付けるような動きになっていることに気付いていない。
俺はラスティの両足を肩にかけて、彼の奥の蕾を指先で撫でてやる。するとそこは期待にヒクヒクと痙攣した。
「あ、あぁっ!」
つぷりと指先を埋めてやると、ラスティはまた高い声で鳴いた。その中はもうすっかり蕩けていて熱いほどだ。
「もうトロトロだな。女の子みたい」
そう言って笑うと、ラスティは恥ずかしそうに顔を背けたあと、俺の首に腕を回してきた。そして耳元で囁く。
「はよ、ほしい」
そんな可愛いおねだりをされたら断れるはずがない。しかしそれも、いつもなら、の話だ。
「せっかくだし、一人でシてるところ見せてくれる?」
そう言って彼の腕を離すと、ラスティは驚いた顔で俺を見上げた。
「え」
「オナニーしてるところ見たいなぁ。だめ?」
わざと甘えた声で言うと、彼は戸惑ったように視線を彷徨わせる。
「久秀さんの……いじわる」
そう言いながらも、ラスティの手は自分のものへと伸びていく。そしてそれを握り込むとゆるゆると扱き出したのだ。
「あっ、あっ……久秀さん……」
俺の名前を呼びながら自慰をするラスティは最高に可愛い。
「可愛い、ラスティ」
そう言いながら彼の顔中にキスを降らせてやる。するとラスティは切なげに眉を寄せて俺を見つめてきた。そしてねだるように唇を舐めると自ら口付けてくる。
その舌を吸ってやると、彼はまた腰を揺らし始めた。俺の腹に自分のものを押し付けるようにして快楽を追っている姿は実に淫靡だ。
しかしそれでは物足りないのか、ラスティの手の動きは次第に早くなっていく。それに合わせて彼の声も高くなった。
「あ、ああ! あ、久秀さん……ひさひでさ、ん!」
俺の名前を呼びながらラスティは果てた。ぐったりと体を弛緩させて荒く呼吸を繰り返している彼に、俺は追い討ちをかけるように耳元で囁いた。
「なぁ、俺も気持ちよくしてよ」
そう言って彼の足を抱え上げ、自分のものを取り出すとラスティのそこに押し当てたのだ。そしてゆっくりと挿入していく。そこは柔らかく解れていて抵抗もなく俺を受け入れてくれたが、それでも中はとても熱い。
「あっ! ああぁっ!!」
ラスティは体を仰け反らせて喘いだ。その反応に気をよくした俺はさらに深くまで押し入る。
「あ、あぁ……久秀さんの、入って……る」
彼はうわ言のようにそう呟くと、自分の腹の上に手を置いた。そしてそこを撫でるようにしながらうっとりと微笑むのだ。
その姿の淫靡さといったら言葉にできないほどで、俺の理性を焼き切ってしまいそうなほどだった。
「動くよ」
そう言って彼の返事を待たずに抽挿を始めた。最初はゆっくりと、次第にスピードを上げていく。
「ああ! あ、あっ……」
ラスティの口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れ出ている。彼はシーツを握りしめて快楽に耐えているようだったが、時折耐えきれないというように身を捩った。
そんな彼の体を押さえつけるようにしながら深く穿つと、ラスティの中はさらにきゅうっと締まるのだ。
その刺激に思わず眉を寄せると、それに気付いたのかラスティが薄く目を開けた。そして俺の顔を見て妖艶に笑うのだ。
「久秀さん……気持ち、ええ……?」
「ああ、気持ちいいよ」
そんな風に煽情的に言われてしまえば我慢できるはずもない。俺はラスティの腰を抱え直すとさらに強く突き上げた。
「ああっ! あ、ああぁっ!!」
ラスティは背中をしならせて喘ぐ。シーツを掴む手に力が入ったのか白くなっている。
彼の体を反転させてバックから責め立ててやった。すると彼はシーツに顔を埋めながらも甘い声を上げているのがわかる。その肩を掴んでこちらを向かせると、蕩けきった表情の彼と目があった。
そのまま激しく責め立ててやると彼はまた達したようで、中がきつく締まる。それに搾り取られるように俺も果ててしまった。
「ああっ!」
ラスティは一際高い声を上げて体を震わせる。しかし彼自身はまだ萎えていないようだったので、俺はそれを握り込んで扱いてやった。
「あっ、ああぁっ!!」
するとすぐに白濁液が溢れ出した。それを確認してから手を離すと、ラスティの体から力が抜けるのがわかった。
そのままベッドに倒れ込みそうになる彼を慌てて支えてやると、彼は潤んだ瞳で俺を見上げる。
「久秀さん……好き」
彼はそう言って俺の首に腕を回してきた。だから俺もそれに応えるようにキスをする。舌を絡ませ合うような濃厚なキスを交わしながら、ラスティの中から自身を引き抜くと彼から小さな声が漏れた。
すると、ラスティは俺の腰に手を伸ばして引き寄せようとしてきた。俺はそれに逆らわず彼の隣に横たわるとその体を抱き締めてやった。
「大丈夫か?」
そう聞くと素直にこくりと頷いたので安堵する。
「無理させてごめんな」
そう謝るとラスティはふるふると首を横に振った。そして俺の胸に額を押し当ててくる。そんな彼の髪を優しく撫でてやりながら、俺はもう一度口付けを落とした。
ラスティはそれにすら感じるようで甘い声を漏らすものだからたまらない気持ちになる。
「ラスティ、愛してるよ」
そんな言葉を囁くと、彼は嬉しそうに微笑んでくれるのだ。その笑顔はとても可愛くて愛おしいと思った。
だからもっと甘やかしてやりたいと思うし、同時にめちゃくちゃにしてやりたくもなる。そんな相反する感情を抱えながらも、結局俺はいつもラスティを甘やかしてしまうのだった。
「なぁ、久秀さん。今日のオレのこと、オカズにしてもええよ」
そう言って悪戯っぽく笑ったラスティに、俺は思わず苦笑してしまった。
「まったく、どこでそんなこと覚えてきたんだか」
そう言いながら彼の額にデコピンしてやる。しかし彼は悪びれもせずに言った。
「久秀さんにだけだもん」
そんな可愛いことを言う恋人に、俺は白旗をあげるしかなかった。
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