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第3話

 風吹は中学二年のその頃、弓道部の上級生の女子といい感じになっていて、あまり僕とは遊ばなくなっていた。  久しぶりに風吹から声を掛けられた僕は、嬉しくてやっと明るい気分になれた。少ないおこずかいからお菓子やジュースを買って用意して、風吹が来てくれるのを待った。そうやって浮かれていたせいで、ベランダに干していた自分のパンツをしまうのを忘れてしまったのだ。  風吹は僕の部屋を訪れる時、決まってベランダ伝いにやってくる。自宅のあるこの地域は結構な田舎だ。バブルの頃首都圏に一本の電車で行けるベッドタウンとしてたくさんの建売住宅が売り出された場所だった。  狭く区切られた土地にギチギチに家が建てられていて、僕の部屋の小さいベランダと風吹の部屋のベランダはかなり近くにある状態だった。  僕は少し怖くて出来ないが、風吹は恐れ気もなくベランダを飛び越えて部屋に来る。その日もガタガタ音がして、既にカギを開けておいた僕の部屋のベランダ側の窓が開いた。 「これお前のパンツ? ベランダに落ちてたぞ」  開口一番、風吹はそう言った。僕は仕舞い忘れた下着を見て、心臓がちぎれた様な気分になった。  僕は多分、真っ青になった後、真っ赤になった。そして自分でも分からない激情に襲われて、ボロボロ泣き出してしまった。風吹はそんな僕を見て相当ビックリした様だった。 「なんだよ、どうした? 何があったんだ?」  風吹は僕の肩を抱き寄せると、ベッドに座らせてくれた。あふれて来る涙を両手で子供の様にぬぐいながら、僕はしばらく黙ったままでいた。風吹は根気よく僕の肩を撫でて待っていた。  風吹の胸元に顔を押し付けていたら、少し涙が収まって来た。風吹は僕の頭に頬っぺたを乗せて「どーした。話せよ。何でも聞くから」と言ってくれた。 「ぼ……ぼく……、僕、病気かもしれない」  泣きながら朝起きた時パンツが汚れている話をすると、風吹は最初目を真ん丸にしていた。そして口元を震わせたかと思うと、ブハッと吹き出して笑い始めた。 「お前、そりゃ夢精だよ。まさかマジで知んねーの?」  風吹は夢精が第二次性徴の身体に起こる事象であることと、病気ではない事を説明してくれた。僕はそれを聞いて、あの液体がチンコの病気じゃないと分かってホッとした。 「それじゃ……これまだずっと続くの?」  病気じゃなくても、朝起きてパンツが汚れているのは困る。僕の質問に、風吹は首を横に振った。 「ちゃんと〝処理〟すりゃ大丈夫だよ。オナニーって分かる?」  僕は頷いた。言葉としては聞いたことがある。 「知ってるけど、どうするのか良く知らない」 「そっか……」  風吹は何か考えている様に顎に手を当てた。僕は風吹になら言えると思って、相談を持ち掛けた。 「あの……、凄く悪いんだけどスマホ貸してもらえないかな? 僕、オナニーを調べてみる。それが出来れば、もうパンツは汚れないんでしょ?」  風吹はまじまじを僕の顔を見た。しばし思案するように黙っていたけど、ちょっと表情を和らげるとすまなそうに微笑んだ。 「さっき、笑って悪かった。お前マジで悩んでたんだよな。桜は身体弱くてエロいことに興味持つ暇なかっただろうし、知らなくても当然だよ」 「ううん。違うよ、僕が情弱なだけ。保健の教科書ももっとちゃんと読めば良かったと思う」  僕が否定すると、風吹はまた僕の肩を優しくさすった。それから、横を向いたまま低く僕に言ってきた。 「俺が……やってやるよ」 「え? 何を?」 「オナニー。俺が手伝ってやる」 「え……?」  僕はちょっと混乱して言葉が出なかった。「むこう向いて横になって」と言い、風吹は僕をベッドへ寝かせた。 「風吹、ぼく……」 「いーから、黙れ。でも嫌ならちゃんと言えよ」  そう言うと、風吹は僕の大腿部を手で撫で始めた。僕は訳が分からないままだったけど、風吹の手の優しい感触に、すぐに背中がゾクゾクし始めた。 「俺の手の感覚を追ってみな。感じて」  言われて僕は目を閉じて集中した。風吹と僕は同学年だけど、風吹の誕生日は四月二日で、僕は翌年の三月三十日だ。 ほぼ一年お兄さんの風吹は、小さい頃から僕の面倒をよく見てくれた。そのせいか今でも、風吹の言う事を素直に受け入れるのにためらいはなかった。  風吹は僕の着ていたTシャツを上にたくし上げると、乳首をそっと指でつまんだ。指先で円を描くように先端を転がされて、僕は思わず声を上げた。 「……アッ」 「上手に感じてる。感度いいな」  耳元で風吹の低い声がする。風吹は僕の耳たぶに軽く舌を這わせた。「……っ」と、なんとか声を殺して、僕は身を震わせた。 「おばさん、まだ仕事だよな? 声我慢しなくていいよ」  風吹は僕の首筋に唇を滑らせた。指が今度は逆の乳首をいじり始める。 「ンッ……アンッ……!」  僕は声を出して身悶えた。これはオナニーの手伝いというのかな? という疑問は頭の片隅にあった。でも風吹から受ける快楽の方を、僕の精神も肉体も優先してしまっていた。 「……めちゃくちゃ可愛い」  風吹は今度、首筋を舌で舐め始めた。しばしの間、首元と乳首を責められていた。もう、僕の身体の中心は完全に勃っていた。僕のお尻の辺りに、風吹の硬いものもずっと当たっている。

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