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第11話

「起きてる桜にキスするの最高だわ。応えてもらえるっていいもんだな」  風吹に言われて僕は「?」となる。 「起きてるって……寝てる僕にキスしたの? いつ?」  風吹は即座に、ヤベって感じの顔をした。 「い……いつってそりゃ……まぁ寝てる時だな」  曖昧な言い方が風吹らしくない。僕はなんとなく、嫌な予感がした。 「──ねぇ、寝てる僕に何をしたの?」  風吹は一瞬顔をしかめた後、仕方なさそうに一つ息を吐いた。 「何って……キスしたり? 触ったり? 他にも嗅いだり、舐めたり、吸ったり、(くわ)えたり?」 「くっ……(くわ)えるって!? まさか……風吹、僕の……」 「だって! お前ほんと可愛いんだぜ? 眠ってる時キスすると、息苦しいのか顔背けられるけど、色んなとこ吸ったり舐めたりするとちゃんと反応するし、咥えたら無意識で出したこともあるし……」 「え? 待って。ちょっと待って!? ぼく……僕もしかして、風吹の口の中に……しちゃったの?」 「最高でした。俺の名前、甘えた声で呼んでくれました」  敬語。 「そんな……。そんな無意識で僕……。やだ。信じられない」  僕は驚きと恥ずかしさで風吹に背を向けた。風吹ってば、寝てる僕になんてことをしてくれたんだろう。しかもされているのに気付きもしないなんて……。 「悪かったよ。マジで俺、変態だと思う。でも俺もたまったもの出したかったし、いつもお前の寝顔で抜いてたんだけど、いつだったか、つい触ったら寝てても感じてくれて……。それから癖になった」 「なった、じゃないよ! もう……もう、ほんとに……」  僕は自分の顔を両手で覆った。風吹は酷い。僕だって……僕だって……。 「ごめんて。マジで謝る。やっちゃいけないことした。ほんとにごめん」  風吹は焦ったように僕を背後から抱きしめる。僕はしばらく羞恥で何も言えなかった。でもあんまりにも風吹が何度も謝るので、ほんとの気持ちを言う事にした。 「……僕だって、起きた状態でキスしたかった。ファーストキスが寝てる時に終わってるなんて、ショックだよ」 「ファーストキスならお前が三歳の頃、昼寝してる時に俺が奪ってるから問題ない」 「はぁ!? 何それ? 本気で言ってるの?」 「当たり前だろ。だって可愛いんだもん、お前」 「……はぁあ……。もう……ほんっと風吹は……」  三歳の頃の話はちょっと信用できない。風吹だってせいぜい四歳くらいの頃の記憶だし、風吹は菫が好きだったから、僕と顔がそっくりな菫にキスをした可能性が高い。 「許してくれるか?」  不安気な声だった。許すも許さないもない。僕は風吹が好き過ぎる。例えどんなことをされても許してしまうだろう。 「……いいよ。でも次は意識のある時、気持ちよくして……?」 「当たり前だろ。もう我慢しない」  風吹は僕を自分の方へ向かせると、また長い長いキスをした。僕の薄い夏物のパジャマのズボンは、前側が今までにないくらい大きく盛り上がっていたと思う。  そして風吹は、スエットの下腹部部分が、かなりの出っ張りを見せていた。抱きしめ合うと触れ合ってしまうソレが、(うず)いて頭がおかしくなりそうだった。 「ねぇ……風吹。なんで今までキスしてくれなかったの?」  キスを長い時間堪能(たんのう)してから口を離し、僕は風吹に質問してみた。風吹の唇はまだ僕の頬っぺたや鼻の頭を行ったり来たりしている。 「……正直、怖かった。俺は自分が変態だって自覚あるけど、桜は違う。〝オナニーの手伝い〟を大義名分にしてるのに、俺がキスなんかしたら怖がって泣くんじゃないかと思ったんだ」 「そ……そんな理由だったの? 僕は全然良かったのに……」 「俺はお前に嫌われたくないんだ。絶対」 「僕は風吹を嫌わないよ。僕から、キスしてって言えば良かったね」  風吹は僕のおでこにキスをした。僕はもうひとつ、ずっとしたかった質問をした。 「あの……ね。風吹の……アソコなんだけど……」 「──うん?」 「僕に触らせてくれないのは、どうしてなの?」  風吹は真顔で僕を見てから、目を閉じてグッと歯を食いしばった。 「……お前に触られたら、止まんなくなるからだよ。多分どんなにお前が泣いても、ガンガンに攻める。そんなことになったら、俺は一生自分を呪う」  悲痛な様子で言われて、僕は呆然とした。風吹はそこまで、僕の身体を心配してくれてたんだ。 「それじゃ……どうしたらいい? 僕はその……風吹としたい。結婚するって言うなら、尚更ちゃんと結ばれたいよ」 「そう、それだよ。今日遅くなった理由は」

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