12 / 20

第12話

急に話がわき道にそれた形になって、僕は理解できなかった。   「なんで、遅くなったの?」 「明日出かけよう。泊りで」 「え? 泊り?」 「ああ。明日土曜だろ? 部活終わったら一回ここへ戻って、荷物取ったら出かける。レンタカーも借りた。その手続きだなんだで今日は遅くなったんだ。明日は高原に行く。コテージ借りたから、明日の夜そこでセックスする」 「あした……?」  ドキン、と心臓が跳ねた。明日、風吹とセックスする……? 「明日だ。お前ずっと調子悪かっただろ? 元気になったら、高原でプロポーズするって決めてたんだ。俺の中では、結婚申し込んだ日に初セックスするのがマストだって考えだ。それなのにお前が今日、ごちゃごちゃ言い出すから……」  風吹がそう言ったことで、僕たちはお互いが同時に、これからの関係を今までとは違ったものにしようと思っていたと分かった。風吹は前向きに、僕はかなり後ろ向きな考えだったけど……。  「あした、なの? 今じゃないの? ぼく……今でも……」 「明日だ。明日の夜なら、次の日何も予定はないしゆっくり出来る。月曜も一コマしかなかった講義が休講になっただろ? 部活も休みで、何の気負いもない。俺は時間をかけて桜を抱きたいんだ。 高原の綺麗な場所でプロポーズして、お前に痛い思いをさせないで一つになりたい。ずっとそういう計画を立てて来たんだぜ。できればサプライズにしたかったんだけどな」 「そっか、そうだよね。僕何も知らなくて……ごめん。ありがとう」  僕はまた泣いてしまった。風吹は僕を大切にして、ちゃんと考えてくれていた。それにひきかえ僕の方は、何も動こうとせず、グジグジ悩むだけだったなんて……。 「驚かせたくて黙ってたのは俺だから。謝んなよ」  言うと風吹は僕のおでこまたに口づけた。僕の涙を唇で拭いながら、僕のパジャマの上着をめくる。指で乳首を刺激されて、僕は泣きながらも、全身がゾクゾクするのを抑えられなかった。 「バックでイかせていい? 久しぶりだし明日の為にほぐしたい」 「う……うん。お願い……」  風吹は起き上がり、僕のパジャマのズボンと下着を一緒に脱がせた。そして僕の両膝をつかんで左右に広げる。僕の鬼頭の先端に指をつけ、あふれ出た液をお尻の穴に塗り付けた。慎重な指使いで穴の浅い部分に体液を出し入れしている。そのままもう片方の手で、ベッドの横にある僕の机の引き出しを開けた。  そこにはローションが用意されている。風吹はこだわり屋で、ローションも何種類か僕に試していた。僕の肌に一番合ったものを見つけて、切らさないように常備してくれている。  とろりとした液がお尻に垂らされ、風吹の指は僕の奥へと差し入れられた。「んんっ!」と思わず声が出る。 「明日は部活あるし、早めにイかせるからな」  この五年間で風吹の指は僕の一番感じる場所を知り尽くしていた。一本から二本、三本と挿入する指を増やし、首筋から胸へと舌を這わせる。 「……はっ……はぁっ……あっ!」  内側を追われる様に刺激されて、僕は身体をビクビクと震わせた。「イキそうか?」と風吹が訊いてくる。 「ん……。い、イキそう……っ。風吹キスして……!」  風吹が僕の唇をふさぐ。激しく舌を絡ませ、指でアナルと乳首を同時に追い立てられて僕は射精した。気持ちも身体も幸福で満たされていて、気絶するんじゃないかと思うくらいの絶頂を味わった。  ぐったりとした僕に、風吹はキスをし続けた。指も入れたまま抜こうとしない。明日の為なのか、リズムをつけて指を動かしている。僕は風吹の頬を両手で挟んで、やんわりと唇を離した。 「……風吹、入れたいでしょ? いいよ、ぼく……」 「明日だって言っただろ。もう寝ろ。明日午前中、部活でバテたら夜持たないぞ」 「うん……。わかった」  風吹はゆっくり指を抜いた。スルッと抜ける感覚がどこか寂しいような、スッキリしたような奇妙な感じがして、僕の陰茎はまた少し硬くなった。  僕のお腹とお尻をティッシュで拭いてから、風吹はパンツとズボンを履かせてくれた。僕を自分と反対側に向かせると、背中からくるむように抱いてくれる。 「おやすみ、桜」 「おやすみ……。ね、風吹。当たってるよ……。」 「仕方ねぇだろ。明日、入れるからな。ここに」  風吹は僕のお尻に自分のモノを擦り付けた。風吹が僕の意識がある時に、そういう欲望を身体で教えてくれるのは初めてで、その大きさに単純に驚いた。まるで……張り型でも仕込んでるんじゃないかと思うくらい大きくて硬い。 僕はまた背中がゾクゾクした。明日ソレを僕が受け入れるんだ……。ちゃんと風吹を満足させることが、僕に出来るだろうか……。 「──僕が眠ったら、好きにしていいからね……」  僕は眠りに落ちる前に風吹に伝えた。風吹はポン、と軽く僕の頭を叩く。 「まったくお前はそういう殺し文句を……。まぁ、適当に抜いとくから。もう眠りな」 「……うん。おやすみ……」  僕の意識はそこで途切れた。風吹がいつ眠ったのか分からなかったけど、真夜中に目覚めた時、すぐそばで寝息が聞こえたから、安心してまた眠りに落ちた。 

ともだちにシェアしよう!