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第24話

「先輩は俺に、ベッドに仰向けで寝る様に言った。そんでこれまた慣れた感じでゴムつけてくれたんだ。先輩は制服のままパンツだけ脱ぎ捨てて、俺にまたがって来た。俺は目をつぶってた。自分のが先輩のアソコに入って行く感覚だけに集中した。それは結構気持ち良かったよ」 「……うん」 「先輩は俺の上で動いてくれてさ。声出しながら(あえ)いでた。手を引っ張られて仕方なく目を開けたら、シャツを脱ぎ捨てた先輩の胸が見えた。先輩はブラを上にずらして、舐めてもいいよって言った。俺は先輩の胸を(つか)んで、感触だけ味わった。先輩はすげぇ声出して腰の動き早くしてさ」  そういって事細かに説明されると、あの清純そうな浅川先輩の顔を思い出すのが気恥ずかしかった。考えてみれば当時先輩はまだ中三で、せいぜい十五歳くらいだろう。とんでもなく進んでるんだな……と思ったけど、もしかしたら単に僕が遅れているだけなのかもしれない。 「それ見たら、ガクンとやる気なくしたっていうか……」 「え……?」 「()えてしぼみそうだったから、先輩の乳首を両手でつまんで引っ張ったら、あっさりイってくれた。ほぼ同時に俺のアソコは撃沈(げきちん)した。先輩は俺が一緒にイったと思ったみだいだけどな」 「そ……そうだったんだ」  僕はなんとも言えなかった。浅川先輩が可哀そうな気もした。でも風吹もちょっと気の毒に思えた。 「すごく良かったって先輩から言われて、付き合いたいとも言われたよ。俺は断った。その後も何度か誘われたけど、もう二人で会う気はないってハッキリ伝えた。先輩はあたし達関係持ったのに、とかグズグズ言ってたけど、少ししたら違う奴と付き合い始めた。覚えてるか? 西田っていう三年の」 「うん。西田先輩、覚えてるよ。大柄な人だよね。弓道も上手だった」 「それな。どうも西田先輩と浅川先輩は、くっついたり離れたりを繰り返してたらしいんだ。奔放(ほんぽう)な彼女がちょっとよそ見しても、戻ってくれば元の鞘に収まる的な」 「へぇ~。西田先輩は心が広いね」 「いや、馬鹿なだけだろ。つか彼女がフラフラしないように捕まえとけよって話。ああ、でも……」  風吹は顎に手を当てて考えるしぐさをした。 「そのお陰で俺は女とヤる経験が出来たから良かったのか」 「──風吹は、なんで浅川先輩の家に行ったの?」 「それはその……俺はお前の事で悩んでて……」 「? 僕?」 「ああ。あの頃、俺は桜が近くにいるとドキドキして触りたくてたまらなかった。一緒にゲームしてても、勉強してても、お前を見てるだけで(はん)()ち状態だった」  僕はまたビックリした。そんな風に風吹が僕を見ていたなんて、全然知らなかったから。 「俺は自分が異常者なんじゃないかって思った。その内ゲイかもしれないと考えついたんだけど、俺は別に男が好きなわけじゃない。実際、桜以外の男とヤりてぇとか思わねぇし」 「そうなの? えっと……じゃあ、例えば同じクラスの山村くんとかどう? いつもフェミニンな服着てて、女子が下手な女子よりカワイイって騒いでたけど」 「は? 山村ってあのナヨっとしたやつ? 想像もしたくねぇよ。あいつクネクネしながら俺に近づいて来て、相手にしなかったら裏で桜の悪口言ってやがった。俺の悪口じゃなくて、桜の悪口だぜ? 桜全然関係ないのにさ。あんな奴をどうこうしようなんて思ったこともねぇし、あいつが今その辺の道端で死んでても俺には一ミクロンもダメージないね」  ひどっ。 「浅川先輩とヤったのは……ていうか、俺はヤられたんだろうけど、自分が女と出来るのかっていう単純な実験みたいな感じだったんだ。後は桜を──忘れられないかなって……」  風吹は僕の頬に手を当てて目を合わせた。 「無理だった。先輩と寝てみて余計、桜を忘れる事は出来ないって分かった。でも桜は大切な友達で、それ以上の関係になることなんて不可能だとも思ってた。悩んで一時お前から離れた」  風吹はその頃の事を思い出したのか、どこか苦し気な表情で僕を見つめる。 「しばらくして、お前と離れている事に耐えられなくなった。だからゲーム買ったからって口実でお前と遊ぶ約束をしたんだ。あの時、ベランダに干してある桜のパンツを拾って良かったよ。あれがなかったら、俺はずっと悩んで……お前の元から去ったかもしれない」  僕はぶんぶん首を横に振った。 「やだ。風吹が僕の前からいなくなるなんて、絶対」  僕は風吹に抱きついた。風吹は強く抱き返してくれる。 「僕……あの時恥ずかしかったけど、パンツ仕舞(しま)うの忘れて良かったんだね」 「そだな。お前がどんくさくて助かった」 「もぉ……ひどいなぁ、風吹は」  僕たちは笑ってから見つめ合った。そしてお互い確かめ合うようにキスをした。

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