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高校2年 秋のこと
「ミキオちゃんと怜 ちゃんは次、作業棟でしょ」
「うん、早めに行って準備する」
「ミキオちゃん真面目ー」
「トロいからさー、早く準備始めないと間に合わないんだもん」
学園祭が終わっても工業科はまだ少しその浮かれた余韻を残していて、体育館には他のクラスの出し物だったストラックアウトが設置されたままになっている。昼休みに集まって遊ぶのが工業科で流行っており、美己男たちもしばらく遊んでから体育館を出た。
「俺、食堂で飲みもん買ってくから先行ってて」
「じゃあ後でねー。頑張ってー」
「うん、アイもねー」
デザイン班の授業に行く愛良 と食堂に行く怜に手を振り木工班の美己男は作業棟に向かった。
あ、寛 ちゃんだ
食堂から出て来た寛太朗 がチラリと視界に入る。彼女がぶら下がるように腕に絡みついているのが見えてなんとなく嫌な気分になった。
俺の寛ちゃんなのに
寛太朗は自分のものじゃない、彼女のものだとわかってはいるのだが最近は少し欲張りになってしまって、そんなことを考えてしまう。
でも、あの子といても寛ちゃんちっとも笑ってないし
俺といる時はもっと笑ってるけどな
俺がフェラした時の寛ちゃんの顔、すげーエロくて
「・・気持ち良さそうだったじゃん」
そう呟きながら歩いているとパン、と手の甲に何か当たって美己男はビクリとした。
あ?あれ?寛ちゃん?
走り去っていく背中を反射的に追いかける。
「え?何?」
ドキドキとしながら旧校舎に入って階段を駆け上がった。
3階まで上がるといきなりつなぎの胸を掴まれ何も言わないまま寛太朗が強く唇を吸ってくる。
「んんっ」
うわ、寛ちゃん、すげ
体、あつっ
胸を掴まれたまま奥の教室に2人でなだれ込んだ。
「あー、勃ち過ぎて痛い」
寛太朗が呻くような声で言いながらもたれかかってくる。
マジか
バキバキじゃん
血管が浮き出てギチギチに勃起したモノを握り寛太朗が辛そうに眉を顰 めているのを見て
「待ってて」
と美己男は慌てて教室の後ろにある、ローカーを次々に開けて中を覗いた。
確か、前にクラスの奴がゴム隠したチョコの箱、置いてあるって・・
「あった」
美己男はつなぎの前をはだけながら寛太朗の元に戻ってコンドームの袋の端を咥え、食いちぎるようにして開けた。
「嵌めたげる。座って」
「ん・・。ヤベぇ・・」
こんなに激しく求める寛太朗の姿を見るのは初めてで美己男は興奮してしまい、一瞬も待てずにゴムを嵌めた寛太朗に跨るとそのまま一気に腰を落とした。
「っつ」
さすがに痛みを感じて声が出る。
「痛い?」
水を湛えたように光る寛太朗の眸 に美己男は痛みを忘れて悦びに体も心も震えてしまう。
「大丈夫っ。もっときていいよ」
ああ、溢れる
寛太朗を奥まで受け入れ、胸に強く抱きしめるとすぐに快感が駆け巡り爆発した。
「ごめん、みー。痛いだろ?」
「大丈夫。寛ちゃんの好きにして」
寛ちゃん、すげぇ固い
美己男が腰を浮かせると寛太朗は奥まで何度も突き上げた。
体の中に熱が広がり
「あー、みーの中、やっぱ出る。すげぇ出てる。止まんねぇ」
最後に寛太朗はそう叫んだ。
あまりの激しい快感の余韻にぐったりとして起き上がれない。
「悪い、乱暴にして」
と上気した顔で謝る寛太朗に
「ううん、大丈夫」
と美己男は笑顔を向けた。
「ん、じゃあ、先行くな」
「大好きだよ、寛ちゃん」
寛太朗はその言葉にふさふさとした睫毛ではにかんだように2、3度瞬きをすると美己男の頭を撫でて教室を出て行った。
あー、やば
なんだよ、わかってるみたいな顔しちゃって・・
ずりぃ
寛太朗から好き、という言葉を聞くことはないとわかってはいても、寛太朗を独り占めできたら、自分が1番になれたらどんなに幸せだろう、と想像せずにはいられない。
「あるわけないけど」
そう呟いて腰を庇いながらゆっくりと起き上がる。
「いて・・」
痛みさえも嬉しくて、また愛良と怜に怒られるなと1人で笑みを浮かべながら脱ぎ捨てたつなぎを拾う。袖に腕を通しながら教室を出ると、寛太朗が廊下で立ち尽くしているのが見えた。
「寛ちゃん?まだいたの?」
そう声をかけた時、寛太朗が誰を見つめているのかに気が付いた。
あ、寛ちゃんの1番好きな人
寛太朗の彼女は美己男を一瞬睨むと踵を返し走り出した。
「待って」
美己男はその背中を咄嗟に追いかけようとした。
ヤバい、ヤバい、どうしようっ
パニックになる美己男の腕を寛太朗が掴む。
「みー、待てっ」
「でもっ、口留めしないとっ。言いふらされちゃうかもっ」
俺のバカっ
独り占めしたいとか、何考えてたんだろ
寛ちゃんに迷惑がっ
「大丈夫。言いふらしたりしないよ」
「でも」
「俺がちゃんとするから。大丈夫」
「あ・・、寛ちゃん、ごめんなさい」
「お前のせいじゃない。俺のせいだから心配すんな」
寛太朗の黒い眸 が覗き込んできて、目の中の海が穏やかに美己男を包み込む。
「怖いか?」
そんなわけない
寛ちゃんがいつも守ってくれてるのに
俺、守ってもらってばっかだ
「ううん、平気。寛ちゃんと一緒だもん」
「ん。じゃ、俺、行くわ」
そう言って、タタタ、と階段を駆け下りて行く背中を美己男は子供の頃と変わらず憧れの眼差しで見つめた。
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