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第5話 ※R18
「…っ、はぁ」
そこを舌でねぶられるのは初めてだった。
「ん…、っう、ん」
肛を舐られ、これまでに無い羞恥と快感を覚え、自坊では許されたことが無かったような声をあげてしまう。
「…あ、あぁっ…ん」
「やはり、な」
興奮のためか熱く荒い息づかいで左馬之介が囁く。
その声の響きにまでも淫らな感覚が研ぎ澄まされ、修顕は身を震わせた。
「その美貌だ。稚児上がりとは思うたが、これほど良く狎れているとはな」
その蔑んだ口調に、修顕は己の中の捨て切れぬ煩悩を引きずり出されたような気がした。
「前も、よう濡れて…。ほれ、これほど、しとどに…」
掬われ、たっぷりと汁を乗せた左馬之介の指が、修顕の喘ぎに閉じられぬ口の奥に押し込まれた。
「ん~、っく」
自分の忌まわしい欲望の証を口に含まされ、修顕は屈辱に涙する。
だが、その涙は煩悩にまみれた歓びの涙でもあった。
「やっ!…あ、ぁん…」
修顕のぎゅっと閉じられた眦(まなじり)から零れた滴は、ぽたぽたと音を立てて、修顕がきつく握りしめた敷布へと落ちる。
「それほど、嬉しいか…」
堅い蕾であった肛を舌で濡らされ、指を差し込まれて緩められ、心で拒みながらも嬉々として先を望む修顕の体を、左馬之介は目を細めて眺めた。
両手と両膝を付いてその華奢な体を支えながら、全身を紅潮させ身悶えする修顕は、もはや学僧としての徳の欠片も見えず、ただの妖艶な色子にと堕ちていた。
「さぞ可愛がられたか、稚児どの」
指を増やし、一層奥までねじ込まれた。
「ひっ…い、いや…ん」
「これほど良く狎れた身で、…修行など出来まいて」
左馬之介の指摘に、ハッと身を固くした修顕だったが、それは我が身の浅ましさを認めたと同じだった。
「もしや剃髪のちも、師や兄弟子に可愛がられておいでか」
修顕を嬲るのを楽しみながら、左馬之介は耳元で囁いた。
耳の奥に舌を差し込まれ、ゾクゾクと淫らな感覚に修顕は震えた。
稚児として蘭若(てら)に預けられ、師や兄弟子の慰みを勤めたのは確かだった。その後出家して、本来であれば衆道を忘れ、仏道一途に励むものだ。
修顕もその決意であった。
だが、修顕は未だ師にも言えぬ煩悩を捨て切れなかった。
「ほれ…っ」
「あっ…!うっ…、う…ん」
体格の良さにものを言わせるかのように、左馬之介が深く、強く、激しく腰を動かし始めた。
華奢な修顕の細腰が乱暴に揺すられ、全身が戦慄(わなな)いた。
「や…ぁ…、あ、お、お許し…を」
拒絶するような叫びを上げながら、気づくと修顕は自ら動きを合わせ始めていた。
「好き者めが」
絶妙の間で、左馬之介が出し入れすると、欲した修顕はますます色香を際だたせ、出家者とは思えぬ妖艶さで身を捩る。
その姿がさらに左馬之介を煽り、動きを大きくする。
「あ…っ、あ…ぁ…」
もう、修顕の中に仏心は消え、穢れた欲だけが若く美しい青年を狂わせる。
「やぁ…あ、あぅ…んっ。…も、もう…」
色街の馴れ馴れしい色子もかくや、というほどの修顕は、男を知り尽くし、喜ばせ、夢中にさせる。
この美貌に、肌の美しさ、そして巧みな仕草が修顕のこれまでを語っていた。
すでに左馬之介は口を開くのも惜しむのかのように、修顕の柔肌にのめり込み、夢中で貪っていく。
「はぁ…あ、ん」
いやらしい声を上げ、修顕もまた我を忘れた。
「も、もっと…。もっと奥~ぅ…、中~ぁ。あ、あぁ~、よ、与助 っ」
思わず口にした名を、左馬之介が聞きとがめた。
「なんと罪深い御方だ…。お相手は、在家の男か」
出家とは、この世での欲を、しがらみを捨て、浄土への救済を一心に求めること。
にも関わらず、修行中の身であるはずの修顕は、煩悩色情を捨てきれず、その上、相手は絶たねばならぬはずの俗世に身を置く在家のもの。
どれほど貪欲に修顕が世俗に引かれているか、その罪深さを左馬之介の一言は修顕に思い知らせた。
「澄ました顔をして、在家 の男を銜え込んだ坊主か…。まさに破戒僧ぞ」
言われて、全身に氷水を浴びせられた思いであったが、哀しく罪深い事に、修顕の肉体はますます燃え上がっていった。
「神女 が娼婦を兼ねた白拍子のたとえは聞くが、どうやらそなたも…」
ここまで言葉で責めても、その気の衰えるということのない修顕を左馬之介は弄んで楽しんだ。
抱え直して、もう一度奥まで犯し始める。
「い、いいっ。…か、堪忍して…与助…。も、もう…ああ…」
「欲しいか、まだ。ほんに強欲な尻殿じゃ」
「よ、与助…ああ、漏れる…漏れてしまう…・」
またしても、修顕は若い欲を放った。
今宵何度目の罪であるか知れない。
「あぁ…ま、また…。気が…。与助…出してぇ」
まさに気の触れた淫売と同じだった。
違うのは、自分が貪るだけでなく、確実に左馬之介にも満足を与える肉体であったのだ。
「ま、まだ締まるか…。よ、良い。今度も…」
「ひっ~。ぁ、ううっ…、ん、…あ…ぁ」
うっすらと空が白み始める頃、修顕は意識を手放した。
修顕は、この夜、気を失うほどまでに左馬之介に犯されたが、その実は、この旅で長く離れたこの世で唯一愛しい男を想って抱かれたのだ。
愛しい男に激しく、死をも覚悟するほどの交わりを、修顕もまたその身で知っていた一人だった。
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