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 そこからは、のんびりと会話を楽しみながら食事を続けた。 「はぁ~っ! 今日のご飯もおいしかったぁ~っ!」 「良かった。……オソマツサマ、でした?」  全ての料理を平らげた後、俺はぐい~っと体を伸ばす。 「特に、ポテトサラダ! おいしかったから、また作ってほしいなっ」 「ホント? 気に入ってくれたなら、ボクも嬉しい。だから、また作る」 「やった! ありがとう、カワイ」  残ったお酒を一気に呷って、俺はカワイにヘラッと笑みを向けた。 「誰かに『なにが食べたい』って言えて、それを本当に作ってくれて、そして俺の帰りを待っていてくれる。これって、本当に幸せなことだと思うな」  それから俺は、カワイの頭に手を伸ばす。 「こんなに尽くされちゃうと『もっともっと』って、際限なくカワイを求めちゃうなぁ、俺」  頭を撫でても、カワイは嫌がらない。むしろ、どこか嬉しそうにさえ見える。……気のせいかもしれないけどね。 「ヒトは、褒め上手。そんなに褒めても、なにも出ない」 「やだなぁ。俺、下心無しの本気で言ってるよ? ゼロ太郎がいてくれて、そしてカワイがいてくれる。俺、本当に幸せ者だなぁ~っ」 「大袈裟。ゼロタローは置いておくとしても、ボクは自分の意思でここにいる。ボクがそうしたいと思ってるのは、ヒトの人望と人柄。だから、ボク自身が特別スゴイわけじゃない」 「大袈裟なんかじゃないし、カワイは俺にとって十分【特別】だよ。だからこそ、俺は毎日幸せなんだよねっ」  プイッと、カワイは視線を下に向ける。 「ホントに、そういうおべっかはいいから──」  俯いたまま、カワイが聞き捨てならない単語を口にした。  だから俺は、間髪容れずに言い返してしまう。 「──おべっかじゃないよ。本当に、本心から、俺の一番はカワイと過ごすこの時間だよ」 「──っ」  俺は本当に、淫行目的にカワイを連れて帰ってきたわけじゃない。ましてや、こうして家事なんかをさせて尽くさせるつもりもなかった。  だから余計に、思っちゃうんだ。ゼロ太郎に教えてもらいながら、カワイが【自分の意思で】こういう時間を作ってくれているのが、嬉しいなって。 「ありがとう、カワイ。これからも、俺と一緒にいてほしいな」  これからも、カワイが俺のそばにいることを望んでくれるかは分からない。  だけど、可能であれば望んでほしい。カワイと過ごす時間に対して俺が思う気持ちを、カワイにも感じてほしいと思う。  頭を撫でながら、感謝と希望を口にする。全てを一身に告げられたカワイは、俯いたままプルプルと小さく震え始めた。  それから、ポツリと。 「──ヒトの、バカ……」  カワイが、カワイが……! 「──ばッ、馬鹿ッ? 今カワイッ、まさか『馬鹿』って言ったのッ? ワーッ! 反抗期だぁあッ!」 [──主様、近所迷惑ですよ]  まさかの、反抗期に突入。俺は自分の頭を抱えて大絶叫してしまった。  その叫びは、今の今まで黙っていたゼロ太郎に冷静なツッコミを鋭く入れられてしまうほどの咆哮だったようだ。 3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】 了

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