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二人の意外な私生活を知った俺は、カワイの可愛さに乾杯──もとい、完敗。副業を断念し、それでいてカワイとゼロ太郎の在宅ワークも止められなかった。
それでも、食欲は正直だ。俺たちは料理を堪能しつつも、お弁当箱の中身を空にした。
「ふぅ、お腹いっぱい。いやぁ、メチャメチャ食べたぁ~っ」
「お粗末様でした」
「いやいや、ご馳走様でしたぁ~っ」
贅沢なお弁当を完食し、二人のお仕事とやらに驚きつつも、胃と心は満たされてしまう。
「天気もいいし、お腹もいっぱいだし……。このままお昼寝しちゃいたいくらいだなぁ~っ」
「えっ。……じゃあもう、部屋に戻る?」
お弁当箱を片付けながら独り言ちると、カワイがシュンと落ち込んだ。
しまった、そんなつもりじゃなかったのに。俺は慌てて、ブンブンと首を横に振る。
「違う違う、今のはそういう意味じゃないよ! ここでゴロゴロしたいなぁって意味だよっ!」
「ここで? 太陽眩しいから、寝られないと思うよ」
「それでいいんだよ。意外かもしれないけど、俺だってたまには陽の光を浴びながらのんびりしたいときもあるんだよ」
「そうなんだ」
どうやら、納得し始めてくれているらしい。
よし。ここはもう少しなにか、例えば……そう! 決め手らしい雑学を披露すれば分かってくれるはず!
「そうなんだよ~。確か、人間は陽の光を浴びると……セロ、なんとかが、なんとかして……。つまり、セロだよ!」
[破壊光線のような言い方はやめてください]
くっ、失敗。カワイが小首を傾げてしまった。そんなところも可愛いけども、今はカワイの可愛さを堪能したいわけじゃなくてっ。
俺の心情を読み取ってくれたのか、意外なことにゼロ太郎が助け舟を出してくれた。
[主様が仰りたいのは【セロトニン】ですね。簡単に言いますと【幸せホルモン】です。とてもザックリ説明しますと、人間は陽の光を浴びると幸せホルモン──つまり、セロトニンが分泌されるのです]
「そう! それだよ!」
ゼロ太郎が出してくれた助け舟に全力でしがみつき、乗りかかる。
何度も頷く俺を見て、カワイは若干引いて──いやいや、驚いているだけだ。とにかく、ビックリしている様子だった。
しかし、さすがカワイだ。人間界の雑学が大好きなので、すぐにセロトニンを理解した。
「つまりヒトは、太陽の光で幸せになるってこと?」
「幸せって誇れるほどじゃないかもしれないけど、気分はいいかなぁ」
「そうなんだ」
コクンと、カワイが頷く。どうやらゼロ太郎のおかげで危機を脱したらしい。さすが優秀で有能なゼロ太郎だ。ありがとう、切実に。
お弁当箱をしっかりと片付けた後、カワイは姿勢を正す。それからポンと一度、カワイは揃えた自分の膝を叩いた。
いったい、なんだろう? 俺がそう思うと、カワイはどこかポソポソと小声気味に俺へ訊ねた。
「……ボクが膝枕したら、ヒトはもっと幸せになってくれる?」
「えっ、いいのっ? なるなるっ! お願いお願いっ!」
再度、全力で家族の発言に乗りかかる俺。プライドなんてあったものではない。
俺が全力で頷き並びに肯定をすると、カワイはもう一度自分の膝をポンと叩いた。
「じゃあ、いいよ。……ヒト、来て?」
わおっ、ちょっとエッチだぞ。言ったら最後、カワイではなくゼロ太郎にドン引きされるので当然、言わないけど。
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