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翌日の、月曜日。
「と言うわけで。昨日は近所のジムで運動してみたけど、ダイエットって大変だよね。月君の筋肉は努力の賜物だなぁって、改めて尊敬しちゃった。偉いね、月君は。本当に偉いし、すごいよ」
隣に座る後輩──月君の素晴らしさに、俺はただただ感心してしまった。
出勤するや否や俺の話を聞かされた月君は、締めの言葉を受けると同時にソワソワと落ち着きを失くしていく。
「えっ、えっ? 月曜の朝から、尊敬するセンパイに褒められたっ? わっ、わわっ! メチャクチャ嬉しいッス! あざッス!」
うおっ、眩しい! 月君が太陽みたいな笑顔をっ! 俺は月君の輝く笑顔を直視できず、思わず目の辺りを手で覆ってしまった。
しかし、努力を褒められると嬉しいのは分かる。そして、その喜びを狙ったわけではないにしても引き出したのは俺だ。俺は月君の笑顔を、ライフで受ける。
ニコニコ笑顔な月君は、月曜日の憂鬱さなんてどこ吹く風。とても爽やかに、俺を見ていた。眩しい、存在が眩しい。『俺も頑張ろう』と思わせてくれる素晴らしい後輩君じゃないか。
だが、月君は俺の話に思うところがあるようだ。コテンと小首を傾げたかと思えば、俺の顔をジーッと凝視してきたのだから。
「それにしても……センパイ、言うほど太りましたか? 最近『顔色が良くなったなぁ』とは思ってましたけど」
「うん、太ったんだよ。ゼロ太郎が驚愕する程度には、太ったんだ……」
「マジすか。人工知能が驚くくらい太ったんスか」
うぅ、そんな目で見ないで。恥ずかしさを感じた俺は、顔をそっと両手で覆う。
落ち込む俺を見て、月君はなにか閃いたらしい。突然、花火かと錯覚してしまうくらい『パンッ!』と大きな音を立てて、両手を合わせた。
「そうだ! オレで良ければ、センパイ用のダイエットメニューを考えましょうか?」
なん、だと? 俺は慌てて、首を左右にブンブンと振る。
「えッ? うッ、ううんッ! 遠慮するねッ!」
「そんな、遠慮なんていいんですよ。オレ、そういうの考えるの好きなんで」
「いやいや遠慮じゃなくて! 無理ッ、無理だよ! 無理なんだよ!」
「まだ案すら出していないのに、なんでそんなに全力で……」
月君がしょぼくれてしまった。これは、なんと言うか罪悪感が募る表情だ。今すぐ『ヤッパリお願いしようかな~?』と言いたくなってしまう。そんな顔だ。
だが、そんなことを冗談でも言ってみろ。俺の体はきっと、とんでもないことになる。
なぜなら──。
「──普段運動をしていない奴に【会社のデスクにプロテインを常備している人の運動メニュー】をこなせるはずないでしょ!」
月君のデスクには、まるでインテリアのようにプロテインの袋が置いてある。なんなら、デスクに付属されている引き出しの一番下──つまり、一番スペースが広いボックスの中には大袋のプロテインが収納されているのだ。
しかし、月君は俺の危惧に気付いていない。むしろ、なにやらポジティブな解釈すら始めてしまった。
「大丈夫ッスよ、センパイ! 最初はキツくても、徐々にそれが感動や快楽や興奮に繋がり、最終的には最高にハイな気分になれますから!」
「えぇッ! なにそれ怖いッ! プロテイン怖いーッ!」
危うく俺は、月ーズブートキャンプを始めさせられるところだったとか。体は大事にしよう。本気で、本当に、マジで!
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