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 そこで俺は、はたと気付く。  いや、待てよ? もしかして……。しっかりと考えてから、俺はハッとした。  ──もしかしてこの話題は、カワイの【好みのタイプ】を訊ける大チャンスなのでは!  家族について話をして、その後で恋バナっぽい話をして……。この流れなら、カワイの好みのタイプを訊いてもなんらおかしくはないのでは。むしろ、スマートな流れであるとさえ言えるだろう。  前に恋バナをした時は、カワイに好きな相手がいるかどうかについては秘密にされちゃったけど。でも、今思えばカワイの好みのタイプについては話題にも出していなかった。  俺は既に、前回の恋バナで好みのタイプをカワイに伝えている。つまり、カワイの好みを訊くにはフェアな立場だ。  そうと決まれば、早速実行! 俺は空になったカップをテーブルに置き、カワイを見つめた。  いざ、カワイの好みのタイプを! 「──ち、ちなみに! ちなみに、なんだけどさ! カワイのすっ、すすっ、好きなタイプとかってさ? きっ、訊いてもっ、いっ、いいっ、いいかなっ?」  あれっ、おかしいぞ! 自分でも引くくらいのノットスマートだ!  会話の流れは上々だった。なのに、どうしてこんなに酷い導入なんだ? 考えて、すぐに気付く。  俺の下心が、あまりにも駄々漏れだったから。理由なんて、これ以外無い。  いったい、カワイの目には俺がどう映っただろう。あまり表情が変わらないカワイは俺を見つめたまま、瞬きをしている。  どうか、ドン引きされていませんように! 俺の願いが届いたのか、カワイは……。 「確かに、ヒトの好みのタイプを訊いたのにボクは教えなかったね。これは、対等じゃない。……うん、いいよ。ボクの好みのタイプ、教えるね」  コクリと頷き、俺が問うことを了承してくれた。  ハレルヤッ、ハレルヤーッ! 大勝利~ッ! 俺は前のめりになりながら、カワイをジッと見つめる。 「じっ、じゃあっ! じゃあ、教えてほしいな! カワイの好きなタイプ!」 「うん、分かった」  よしっ、よしっ! これでカワイの好みのタイプが俺と近しかったら大喜びして、もしも遠かったら──嫌だ! 遠いなんて考えたくない! そっちの方向は答えを聴いてから考えよう!  というわけで、いざ清聴。俺は黙って、カワイからの返事を待つ。  カワイはなぜか一度、深呼吸をした。緊張しているのだろうか。そんなところも可愛い、ありがとう。  それからカワイは俺を見て、そして、そろりと視線を俯かせる。紫色のオーラのようなものを纏っている指先を擦り合わせている様子も見るに、どうやら返答に詰まっているらしい。  しかしやがて、カワイはポツリと答えを零した。 「──ボクの好みはヒトだよ」  こ、これは。これは、つまり……! 俺は、気付いてしまった。  ──もしかして、カワイは【好みのタイプ】という言葉の意味を俺とは違う意味で受け取っているのかもしれない。……という、衝撃的事実に。  分かっている。カワイが俺に対して【恋情】とは別種の愛情を抱いてくれているなんてこと、分かっているのだ。だからこそ、この答えの意味がどういうことなのかと分かってしまった。  そうだよなぁ。だって、前に俺も『カワイが好き』みたいなこと言っちゃったし、そうなるって、さすがに。くそぉ~っ、好意自覚前の俺の馬鹿野郎!  まぁでも、嘆く俺も本心だが──。 「──存在してくれてありがとうッ!」 「──えっ。……あ、こちらこそ?」  ──どんな意味であれ、好きな子から【好みのタイプ】として挙げられるのは喜ばしいではないか!  堪えきれない感謝やら感動やらを伝え、俺は自らの手で口元を覆う。もう、なんだ、込み上げる……!  だって、嬉しいじゃないか! 擬似両想い、嬉しい! 擬似でも勘違いでも嬉しいじゃないか! 俺は口元を覆いながら、プルプルと体を震わせた。  そんな俺を見て、カワイは少々戸惑っているものの通常運転。……だからこそ、思うことがある者が一名。 [──さすがカワイ君ですね。ドヘンタイすぎる生物を見た者の態度とは思えません] 「ゼロ太郎? 俺のこと、嫌いなのか?」 [いえ。人工知能には感情がありませんので]  誤魔化された! 小賢しい! でもそういうところが嫌いじゃない! 俺は相変わらずすぎるゼロ太郎に衝撃を受けつつも、カワイの発言に心を沸騰させた。

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