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 食事の前に部屋着へ着替えた俺を、カワイはおっぱいプリンと共にリビングで待っていた。 「おかえり、ヒト」 「うっ。……た、ただいま~」 「ヒトが帰ってくるの、胸を弾ませて待ってたよ」 「ううっ。かっ、可愛い……」  ちなみにカワイが言った『胸』というのは、おっぱいプリンと掛けているのでしょうか? やめてください、耐性が無いのでどんな反応が正解か分かりません。  カワイは食卓テーブルに肘を突き、頬杖の姿勢で俺を見ている。対する俺は、心臓のバックバクが止まらなかった。  と言うか『おかえり』は最初に言ってよ、なんだかエッチな空気になっちゃうじゃん~っ。嫌じゃないけどさぁ~っ  などと俺が葛藤しているなんて、露知らず。さっきまでのモジモジ感はなくなって、カワイは妙に余裕そうな態度で俺を見上げていた。 「ヒト、おっぱい食べて?」 「あぐッ!」  セリフだけ見るとエッチだよ卑猥だよ! そんなっ、そんな淡々と口にするセリフじゃないと思うなっ!  だが、カワイは楽しんでいるのだ。興味本位な好奇心で作ったおっぱいプリンを俺に食べてもらえるこの状況を、カワイはずっとずっと待っていたのだから。  期待には、応えたい。俺は食卓テーブルに近付き、椅子に座る。そして、揺れるおっぱい──否、プリンと対峙した。  くっ! カワイに、メチャメチャ見られている! 視線をバシバシと感じるぞ。これは……た、食べづらい!  い、いや、しかし! 勘違いだったとしても、俺は一度【覚悟と決意】を固めた男! カワイの気持ちを受け止めると決めた男だろう! 行ける、行くのだ! 進めっ、俺ぇ~っ!  ということで、いざ実食。俺はプルプルと揺れるおっぱいプリンにスプーンを当てた。  これは、プリン。ただのプリンだ。ビジュアルに騙されるな、俺。何度も何度もそう念じて、俺はプリンを掬った。 「いただき、ます」  パクッと、一口。俺は勇気を込めてプリンを食べて……。 「んっ? 普通においしい!」 「やった」  思わず、本心からの絶賛。これにはカワイも嬉しいらしく、小さな微笑みを浮かべてくれた。 「ボクも食べたけど、おいしかった。人間は面白い生き物だけど、こういう面白さは本当にすごくすごい。魔界だと、こんなものは見られなかった」 「俺は『面白い』って理由だけで実際に作っちゃったカワイがすごくすごいと思うなぁ」 「ん、褒められた。嬉しい」 「ちょっと違うけど、可愛いから全部なんでもオッケーです!」  照れくさそうに頬を掻くカワイを眺めて、俺は親指をグッと立てる。可愛いからね、仕方ないね、全部オッケーにしちゃおうね。  プリンを食べ進めていると、カワイが不意に、コテンと小首を傾げた。 「でもヒトは、女に興味ないからおっぱい──胸に魅力は感じない?」  なんということだろう。これは聞き捨てならないぞ。俺はスプーンをしっかり握ったまま、真剣な表情でカワイと向き合った。 「──なにを言っているのかな? 俺はカワイの胸に興味津々だよ?」 [──主様こそなにを言っているのですか]  ハッ! しまった、俺たちは保護者と保護対象。今の発言は少々軽率だったかもしれない。ゼロ太郎がビカビカッと眩い光を俺に向けてきたからこそ、俺は我に返った。  しかし、当のカワイはなにを思ったのだろう。自分の胸をペタペタと触り、小首を傾げている。おそらく、俺の発言が意味するものを理解していないのだろう。  ふぅ、危ない危ない。告白だってまだなのに、破廉恥なところだけ進めるのは本意じゃないからね。  ……こら、そこ。『酔った勢いで手を出したくせに』とか言わないの。それは俺にとってデリケートな話なんだぞ。ぷんすこ。

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