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 これにて、おそらく一件落着だ。  ずっと胸につかえていた罪悪感を吐き出して、例えこれが【自己満足】だとしても、俺はカワイに伝えたい言葉を伝えられた。そしてきっと、カワイも自分の中のなにかを伝えられたのだろう。 「それにしても、ヒトはとても甘えベタ」 [カワイ君の言う通りです] 「むしろ、甘えベタすぎて手がかかる」 [まったくもって、カワイ君の言う通りです]  妙なスイッチが入って、ゼロ太郎と一緒に俺を責める程度に。  突然おかしな評価をされた俺は、さすがに驚愕する。アラサー相手に『甘えベタ』とは、なんとも妙な評価だからだ。 「いやいやっ! 俺、かなり甘えたじゃないかなっ? 家事とか色々、カワイとゼロ太郎に甘えっきりだよっ?」 「そういう意味の【甘え】じゃない。ヒトの方が人間界での生活は長いのに、そんなことも分からないの?」 [まったくです。今まで主様は人間界でなにを学んでおられたのですか?] 「ヤバい普通に泣きそう」  えっ、えぇ~っ? そっ、そこまで責められる話だったかなっ? なんかこう、大いに流れが変わった気がするけどっ? 「ボクたちはね、ヒトがダメダメな男だってよく知ってるよ。それに、ヒトだけじゃない。どんな生き物だって、一人でできることに限界はある。それはボクだって同じだし、それをヒトは分かっているでしょう?」 「うっ、うん……」 「だから、今後は遠慮しないでほしい。ボクにもっと、ヒトを支えさせてほしいよ」 「うえ~んっ! 駄目な男まっしぐらだよぉ~っ!」  しかし、飛びつく。俺ってば、正直者~っ!  確かにこの一件で、俺は張らなくてもいい見栄を張り過ぎていたかもしれない。その結果が【カワイに噛みつく】だったなら、もっと早い段階から全てを明かしても良かったのかも。  つまり今後は、もっとカワイとゼロ太郎に頼るべきなのかもしれない。つまり、つまり……そう! 「カワイの隣が、俺にとってのハビタブルゾーンだよ~っ!」 「ハビ、タ……? ……えっと、なに?」 [ハビタブルゾーン、ですね。天文学上、生命が生存可能な領域のことです] 「よく分からないけど……大規模、だね」  カワイの体をムギュ~ッと抱き締め、スリスリと頬を擦り寄せる。なんという癒しだろう。堪らない。  ……あれ? 俺はふと、カワイの体温を感じながら思い出す。  そう言えば俺、カワイに『好き』って言われたよね? で、俺もカワイが好きだから……あれっ?  ──もしかして俺たちって、両想いなのでは?  ……なんてことを考えていたのも、束の間。 「ボク、ヒトの元気がないのはイヤだけど、それでもヒトがずっと一緒にいてくれるのは嬉しい」  俺に強い抱擁をされながら、カワイは顔を上げる。  そしてカワイは、キュルンと可愛らしい上目遣いをしながら、破壊力抜群な【甘え】を披露した。 「──だから、ヒト。今すぐ、会社に行かなくていい程度の風邪を引いて?」 「──なんて可愛い我が儘なんだ。いいだろう」 [──全裸になろうとしないでください]  沢山の情けない姿や、嫌な部分を見せてしまったこの一件。だけど俺にとって──ううん。【俺たちにとって】今回の一件は、とても大きな意味のあることだったと思う。  ワイシャツのボタンを外しながらカワイの期待に応えようとしつつ、通報一歩手前になったしまった俺は、漠然とそんなことを考えた。  ……なんかこう、いい雰囲気で幕を閉じたかったんです。だから、すみませんでした。通報は本当に、やめてください。 7章【未熟な悪魔は伝えました】 了

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