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 ──俺は、なんて愚かなのだろう。今さら後悔したって遅すぎるのに、俺は己の愚かさ加減に打ちのめされていた。  思えば、もっと早い段階で気付くべきだったのだ。そして先日、大きな【ヒント】があったではないか。  そう、皆まで言うな。分かっている。カワイが『俺攻めのカワイ受け』とか『左右固定』とか、そんな言葉を知っていた理由だ。  まぁつまり、そんなこんなで……前略。  ──カワイに、俺が収集していた【年齢制限付きコンテンツ】がバレました。  ちなみに今は、カワイとの関係性をゼロ太郎に相談して数日後。いやもう本当に、展開が怒涛すぎる。……余談になるだろうけど、事の経緯はこうだ。  ある日──つまり、本日。俺はいつも通り、定時を過ぎて会社から帰宅した。  帰ってきた俺を出迎えてくれたのは、今日も可愛いカワイだ。ゼロ太郎と一緒に、帰ってきた俺に『おかえり』と言ってくれた。  その後で、カワイはこう言ったのだ。 『──ところで、ヒトは【男の子悪魔のちっぱいに甘えたい!】と【俺の義弟は意味深なほどに世話焼き】なら、どっちの方が好きなの?』 『──どうして俺のお気に入りエロ同人誌のタイトルをッ?』  事の経緯、以上。  ……いや、マジで。マジで本当に、本気で居た堪れない。穴があったら入りたいどころか、自分で穴を掘って埋まりたかった。誰かの手を煩わせることなく、自発的に埋まりたいのだ。それほどまでに、この状況はキツイ。  叫んだ後、俺は無垢でピュアな目を向けるカワイの前で正座をした。そのまま俯き、ダラダラと汗をかいたのだ。……ちなみに今、この状況である。  ということで俺は今、カワイの前で正座中だ。 「えっと、あの。……いつから、でしょうか」 「なにが?」 「カワイさんが、俺の、その……諸々のデータを、お知りになられたのは」 「ヒトの体調が悪い時かな」  割と前! 思ったよりも前だぞ! 俺はビクーッと体を震わせた。 「ヒトを元気にしたくて、なにかいい方法はないかなって思って。色々調べものをしていたら、見つけちゃった」  理由がいい子すぎてなにも言えない~っ! 俺は膝の上に作った拳を、ただただ強く握る。 [念のため言っておきますが、私はカワイ君を止めましたよ] 「あ、はい。ゼロ太郎さんのことは、信頼しています……」  分かっている、分かっているよ。ゼロ太郎は【俺のため】じゃなくて【カワイの教育に悪いから】って理由で、カワイを止めてくれたんでしょう?  でも、ゼロ太郎は隠しきれなかった。……どうしてかって? カワイの探求心が【圧倒的ピュアな善意】だったからだよ。  きっと、カワイは『このフォルダにヒトを元気にするなにかがあるなら、見せてほしい』みたいなことをゼロ太郎に伝えたのだろう。無垢な瞳にそう訴えられたのなら、さすがのゼロ太郎もどうにもできない。ただでさえ、ゼロ太郎はカワイに甘いのだから。  って、いやいや。今は【カワイに知られてしまった】という事実と向き合うべきだ。そうなってしまった過去を嘆いたって仕方がない。 「うぅぅ。ごめんなさい、カワイ……」  正座のまま、猛省の意を示す。  しかし、カワイからの反応はと言うと……。 「あのね、ヒト。正直に言うとボク、どうしてヒトが謝っているのかが分からないよ」  キョトン、だ。圧倒的、キョトン。  俺と目線の高さを合わせたカワイが、小首を傾げている。堪らず俺は、カワイとは逆方向に小首を傾げた。 「はえっ? だって……えっ? 怒って、ないの? 見ての通り、エッチな本だよ? エッチなゲームだよっ?」 「性的欲求は悪魔にもある。だから、理解はある」 「いや性欲の有無じゃなくて! 内容! 俺が好んで買ってるジャンルと言うかキャラクターと言うかっ!」 「小さくてカワイイ男の子が多いね」  分かっているのに、なぜ? 続けて訊ねようとした、その前に──。 「──でも、ヒトにとっての【一番カワイイ】はボクでしょ?」 「──っ!」  ……かっ。  ──格好いい~っ!  自信満々。それでいて『当然でしょう?』という、大いなる意思。小首を傾げるカワイはまさに、まさに……!  まさに、カッコ可愛い、というやつだ!

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