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 チーズの甘さなら、きっとヒトは平気なんだ。ヒトの誕生日を終えた翌日、ボクはそう予測を立てた。  ということは、チーズケーキならヒトも喜んで食べてくれるはず。つまり、チーズケーキならボクもヒトもハッピー。つまりつまり、チーズケーキなら作ってもヒトを困らせない。 「──と言うことで、今日はバナナのチーズケーキを作ったよ」 「──ごめんね、カワイ。俺には『と言うことで』って接続詞がなにを繋いでいるのかが分からないんだ」  そこは、ヒミツ。だって言ったら、ヒトはきっと『カワイが作ってくれるならなんでも嬉しいよ』って言うから。それだと、ヒトの本心からズレちゃうもん。  とにもかくにも、今日のデザートはバナナのチーズケーキ。ヒト、喜んでくれるかな。 「今日のインゲンと豚肉の……トマト煮って言うのかな? それもおいしかったし、カワイとゼロ太郎が手作りしてくれたパンと合わせるともっとおいしかったよ。それに加えてデザートなんて、なんだか贅沢だなぁ~」  食べる前から、大喜びみたい。ヒトは軽率にボクを嬉しくさせるから、ホントにズルい。しかも、無自覚。  ヒトの真っ直ぐな言葉に顔を少し熱くさせながら、ボクは冷蔵庫からバナナのチーズケーキを持って来る。それを、嬉しそうに待っているヒトの前に用意した。 「いつも思うけど、二人が作るケーキって見た目もすごく綺麗だよね。お店に並ぶケーキみたい」 [主様と違い、カワイ君は手先が器用ですからね、主様と違って] 「なんで最初と最後に俺との比較を入れたのかな?」  照れ隠し、かな? ゼロタローはいつも、ヒトと話す時は絶好調な気がする。きっと、ヒトが大好きなんだね。言ったら絶対に否定されるから、言わないけど。  ヒトは今日も元気よく、挨拶をする。「いただきます!」って言ってから、ヒトはバナナのチーズケーキをパクッと食べてくれた。 「ん~っ! 知らなかったけど、バナナとチーズって合うんだねっ? 昨日のウーロン茶チーズケーキもおいしかったけど、これもすっごくおいしいよ、カワイ! ゼロ太郎も、天才だね!」 「……うん。ありがとう」 [恐縮です]  尻尾が揺れちゃっている気がするけど、止められない。だって、ヒトに褒められたら嬉しいから。  ヒトが喜んでくれたし、ボクもケーキを食べよう。フォークを持って、ボクもヒトと一緒にデザートを食べ始める。  すると気付けば、ヒトが瞳を細めてボクを見ていた。なんだか、嬉しそうな感じかも。 「どうしたの、ヒト?」 「カワイって本当に、甘い物が好きなんだなぁ~って思ってね」 「えっ? ……うん。好き、だけど……どうして急に、そう思ったの?」 「だって……」  ボクが甘い物好きなんて、ヒトは知っているはず。それなのに今さら、なんでわざわざそんなことを考えているんだろう。ヒトの優しい眼差しの理由が分からなくて、思わず小首を傾げてしまった。  ボクが戸惑っていると、突然。ヒトの手が、ボクの方に伸びてきた。  それからヒトは、優しく笑って。 「カワイ、すごく嬉しそうだから」  そう言って、ボクの口元を指先でそっと撫でた。そのままヒトは、ヒトの指をペロッて舐めて……。  ボクの口元に、チーズケーキの食べカスが付いていたんだ。ボクが慌てて食べていてそそっかしかったから、そんなボクを見てヒトは『カワイは甘い物がホントに好きなんだね』って思ったんだね。  言動は、理解できた。理解できた、けど……。 「──胸いっぱい、かも」 「──『お腹』じゃなくてっ?」  ヒトが取った一連の行動に、ボクは顔がもっともっと熱くなっちゃった。

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