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 カワイの可愛さを文字通り目の当たりにし、俺の肌はツヤツヤだ。心だってツヤツヤだぞ。 「あぁ~っ、幸せだなぁ~っ」  寝間着から着替えながら、俺は幸福に浸りきる。浸りすぎて本音が零れてしまうくらい、浸りきっていた。 「カワイと正式にお付き合いを始めたし、同棲もしてるし、おはようからおやすみまでずーっと一緒だし……。なんて言うかさ、俺たちは【交際】って言うより【結婚】って感じだよねぇ~っ」 [──今の発言が冗談なのか、本気なのか。それによって、私の返答は変わりますが?] 「──本気一択のつもりで喋ってたんだけど?」  そんなに俺って信用ないの? いや、そもそもこれって信用云々の問題かな? とにもかくにも、ゼロ太郎は相変わらずだ。  カワイと付き合い始めたのは現実だけど、だからと言って俺たちの生活はさほど変わっていない。なぜなら俺たちは、付き合う前から一緒に暮らしていたからだ。  それに、ゼロ太郎だって変わらない。俺の惚気が増えたから必然的にゼロ太郎の辛辣発言も増えているだけで、ゼロ太郎はゼロ太郎だ。  俺も、カワイも、ゼロ太郎も。三人共、色々あったと思う。思うことはあっただろうし、考えたこともあった。その上で今、俺たちは今在る幸福の上に立っているのだ。  などと、ちょっぴりシリアス空気。よろしくない、これは俺の良くないところだ。これから出勤してバリバリ働くのに、こんな気分じゃいけない。  ……ということで。 「ねぇねぇゼロ太郎、カワイの話をしようよ。俺と【カワイの愛おしさと素晴らしさと尊さの話】をしようよゼロ太郎~っ? あぁでも、カワイのことを恋愛的な意味で好きになっちゃ駄目だよ? カワイは俺の──」 [──なるほど、今日はニラが安いのですね。是非とも購入したいです] 「──全然俺の話聞いてくれてないぃ~っ!」  気分を上げるためにカワイの話をしたのに、この仕打ち~っ! 想定通りだけどもぉ~っ!  こうなったら、仕方ない。俺は着替えを終わらせてからすぐさま、カワイが待つキッチンに向かった。  目的? 勿論、泣きつくためだよ! 「うわぁ~んっ! カワイ~っ! ゼロ太郎が冷たいよぉ~っ!」 「そんなことない。今日のお弁当のおにぎり、ゼロタローが『ただのおにぎりじゃつまらないかも』って言って、とろろコンブとシャケのおにぎりにしたんだから」 「──なんだようゼロ太郎のツンデレさんめっ! ありがとうーッ!」 [──忙しない情緒ですね]  カワイが少しムッとした顔で反論してきた~! しかも、内容が内容なだけにカワイの反応も納得だよ~! まさに【親の心子知らず】ってこういうことなんだね、ゼロ太郎ごめんよーっ!  ちなみに、おにぎりだけじゃないぞ。オカズには唐揚げと、お野菜の塩漬けだって入っているらしいんだからな。  俺は両腕を広げて、その姿勢を天井に向ける。ゼロ太郎に実体は無いので、これが対ゼロ太郎にできる俺なりのハグだ。  まぁ言わずもがな、ゼロ太郎はすごく嫌そうな声を俺に浴びせてきたけどね。まったく、ツンデレだなぁ!  ……泣いてなんかないんだからね!

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