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 その日の、食後。俺はカワイにベッタリとくっついていた。 「カワイ~。……カワイ、カワイ~」  後ろからカワイに抱き着きつつ、ツノを握る。  この前、家にまで仕事を持ち帰った時のことだ。その時、カワイは俺へのご褒美としてツノを触らせてくれた。  ツルツルしていて、だけどどこか無機物的な冷たさ。しっかりした材質……材質? とにかく、カワイのツノは不思議とクセになる触り心地なのだ。  尻尾と違って、ツノは触られても平気らしい。カワイは苦言を呈することなく、だけど作業の手は止めずに、俺がツノを触ることを拒否はしなかった。  カワイが動きたそうにしたらツノから手を離し、だけどカワイにくっついたまま、同じ歩幅で歩く。  そんなことを繰り返して、数分後。さすがに思うことがあったらしい。カワイは動きを止めて、俺を見上げた。 「なに、ヒト」  俺を見上げるカワイは、相変わらずの無表情。つまり、怒ってはいないってことだ。 「用事はないんだけど、こっちを向いてほしくてさ~」 「それなら、最初からそう言ってくれたら良かったのに」  まぁ、カワイと触れ合うことが本当の目的だからね。振り返ってもらえたらラッキーって感じだったのが、本心だし。  しかし、カワイは俺の本心を知らない。なので、ジーッと俺を見上げてくれている。 「ボク、ヒトの方を見たよ。この後は、どうしたらいい?」 「このまま見つめ合っていたいなぁ~っ」 「それはムリ。洗い物が終わってないから」 「しっかり者な彼氏に頭が上がらない……」  と言うことで、カワイのツノを触る時間は終了だ。そろりと手を離し、カワイと頷き合う。  だけど、このまま解散するのは名残惜しい。なので、俺はキッチンへと向かうカワイについて歩いた。  そこで、不意に。カワイの揺れる尻尾に意識が向かってしまった。……と同時に生まれる、好奇心。 「カワイって、悪魔の中では尻尾が長いタイプなの? それとも、短いタイプ?」 「尻尾の長さ? 気にしたことがないから分からない、かな」  まぁ、それもそうか。……いや、そういうものなのかな?  人間は、周りと自分に違いを探しがちだ。それが身体的な部分なら、なおのこと。そういう積み重ねがあって【コンプレックス】というものが生まれるのだから。  ちなみに言うまでもなく、ソースは俺だ。子供の頃からつい最近まで、俺は【周りと違って、左右で色の違う瞳】が大嫌いだったのだから。  だが、悪魔は──若しくは、カワイは自分と周りの身体的違いは気にしていないのかもしれない。カワイのそういう部分は、俺からすると堪らなく格好良く見え──。 「──そう言えば、尻尾が長い悪魔はエッチなんだって」 「──待ってその捨て台詞は嫌だよ気になるじゃん! カワイの尻尾はどうなのッ?」  聞き捨てならない言葉を置いて、カワイが日常に戻ろうとしている! 彼氏としては放置できない発言だよ、今のは!  と言うか、悪魔の世界にもそんなヘンテコ迷信があるのか。前髪が早く伸びる人はスケベ、みたいな迷信だな。衝撃を受けると同時に、ちょっぴり感心してしまった。

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