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 言うまでもなく、季節は冬だ。十二月の北海道なんて、それはもう完全なる冬。  駐車場からマンションの中に入るまでの道中で、ピュウッと一度でも風が吹けばどうなる? そう。車内で温まっていた体の熱なんて、あっという間に攫われてしまうのだ。 「ただいま~。うぅ~っ、寒い~っ」  部屋に戻るまでの間に、俺の体は冷えてしまう。これはもう、道民としては仕方のないことだけども……かと言って、慣れはしない。  ブルッと体を震わせながら、俺は部屋に到着。帰宅の挨拶をしつつ、リビングに向かった。  冬は、寒くて困る。このマンションに越してくる前は、今以上に困っていたっけ。  なぜなら俺は、ズボラだ。ストーブとかエアコンで予約タイマー設定をしておけば良いものを、日々の多忙さを言い訳に全くそういった寒さ対策をしていなかった。だから、部屋に戻っても数分以上はブルブル震えていたっけ。  だけど、今は違う。 「おかえり、ヒト」 [おかえりなさいませ、主様。お部屋と炬燵は温まっていますよ] 「わ~いっ」  ゼロ太郎と二人で暮らしていた頃は、俺の帰宅時間から逆算してゼロ太郎が部屋を暖めてくれていた。そして今は、カワイが温かいご飯を用意して待っていてくれているのだ。  一先ず、あったかぁ~いカワイをムギュッと抱擁。 「わ~っ。想像以上にあったかいぞ~っ」 「ヒト、冷たい。体が冷えちゃう」  と言いながら、カワイは俺に腕を回してくれた。なんて優しい子なのだろう、抱擁が止められないぞ。 「俺の彼氏、ホンットに最高すぎるよぉ~っ! 冬の寒さも悪くないねっ!」  なんて、浮かれた発言がポロッと出てしまうほどに。俺はカワイへの愛おしさやら感謝やらを全身全霊で伝えてしまった。  きっとカワイは、少し誇らしそうに『モチロン』と言うのだろう。そして『ボクとゼロタローに不可能は無いよ』って言うんだろうなぁ~。  ……って、思っていたのに。 「カレシ……」  ポツリとそう呟いて、カワイは俯いていた。 「実感が、まだない。ヒトはボクの、カレシ……」 「うん、そうだよ。そして、カワイは俺の彼氏」 「そうだよね。……うん。嬉しい」  可愛い。そう思うと同時に、カワイを抱き締める腕の力が増してしまう。 「あっ。いきなり強く抱き締めちゃって、ごめんね?」 「ううん、平気。驚いたけど、でも、嬉しい」 「っ。……可愛いこと、言ってくれるんだね」  胸が、締め付けられる。その痛みは不思議なことに、全く不快じゃなかった。  俺はどこか浮ついた気持ちが湧き起こすどうにもできない愛おしさを、カワイの額にキスをすることで伝えてしまう。 「ごめん、キスもしちゃった」 「イヤじゃない、けど。でも、珍しいね。いきなりどうしたの?」 「理由は特にないよ。強いて挙げるとすれば『好きだな』って再認識したから、かもね」 「そうなんだ」  頬を赤らめたカワイが、俺を見上げる。 「──『かも』じゃなくて、断定してくれたら嬉しかったのに……」  そんな、可愛い言葉を伝えるために。  いじらしくて、素直で、可愛い。俺はカワイのツノにキスをしてから、尻尾を撫でた。。 「ひあっ。……ヒ、ヒト?」  堪らなく、愛おしい。小さく身じろいだカワイを見て、強く思う。  だって、カワイは俺の腕から逃げようとしていないのだから。

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