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少々思考が寄り道しちゃいましたけど、なんとかゼロ太郎さんの点検が終了っす。
「よしっ。今回も異常ナシっすね。あとは、ちょっとクリーニングをして終わりっす」
「クリーニング?」
ジブンの作業が終わった頃に、家事に一区切りを付けたカワイさんが近付いてきました。ですが、カワイさんに返事をしたのはジブンではなくゼロ太郎さんっす。
[この部屋には、オーナーの部屋にあるデータやプログラミング情報を繋いで引っ張ってきている小型の機械があるのですよ]
「そっすそっす。埃とか溜まっていると怖いんで、こまめに掃除しないと駄目なんすよね~」
補足説明をジブンがしつつ、移動を開始。そうするとパタパタとスリッパの音を鳴らしながら、カワイさんがジブンを追いかけてきたっす。
「それって、ボクとヒトにもできる?」
「できなくはないっすけど、ちょっと色々細かくて扱いが難しい機械なんで、ジブンか……若しくは、んーちゃん以外には任せたくない部分っすね」
するとなぜか、ジブンとカワイさんの会話を聴いていた追着さんが、小首を傾げたっすね。
「んーちゃん? って、誰ですか? 大家さんのお友達さん、とか?」
言われてみれば、自分以外の部屋にある人工知能のお名前を知らないのは当然っすか。リビングの隅っこにある大事な機械を隠すカバーを外しながら、追着さんに返事をするっす。
「あぁ、申し遅れたっすね。んーちゃんはジブンの部屋の人工知能っすよ」
と言うことで、ご紹介。んーちゃんはジブンの部屋にいる愛しの人工知能ちゃんっすよ。
「なるほど──……んっ? でも、人工知能が掃除ですか? ……んんっ?」
追着さんに続いて、カワイさんも小首を傾げているっすね。こう見ると、よく似た方々っすねぇ。
でも、そうっす。追着さんとカワイさんの反応はごもっともっすよ。だって、ゼロ太郎さんは【掃除】ができないんすから。
つまり、ジブンと追着さんの部屋の人工知能は確実に違う部分があるという話になるっすよね。
「じゃあ、ちょこっと来てみますか? ジブンの部屋」
「「──えっ、いいのっ?」」
ちょっとした、思い付き。それに対して、まさかの間髪容れずのハモリっす。そこまで食いつかれると、ちょろっと緊張しちゃうっすよ~。
まぁでも、確かに軽い気持ちで提案したっすけど、見られて困ることはないっすからね。
「それじゃあ、クリーニングを終えたらジブンの部屋に行きましょっか」
「分かった。ンーチャンがすごく気になるから、ボクはエツの口に抹茶チーズケーキを突っ込むね」
「あっ、あっ、ズルい! 俺だってカワイから『あーん』されたい!」
「たぶんっすけど、そんな可愛らしい『あーん』じゃないと思うっすよ?」
ジブン、無事に帰れるんすかね? ちょっぴり、不安になってしまったっす。
[オーナー、諦めてください。彼らはそういう方々なのです]
「身に染みて痛感っすよ。これからもジャンジャン支えてあげてほしいっす」
[無論です。私はそのための存在ですから]
ちょっぴり、ゼロ太郎さんと絆なんか感じちゃったりしちゃったりっすよ。クリーニングを進めながら、ジブンは思わずジンと感動しちゃったっす。
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