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場所は移って、ジブンの部屋に到着っす。
「散らかってはいませんし、んーちゃんがいるのでつまらない部屋でもないですが、どうぞどうぞ~」
「すごい。こんなに謙遜の無い招かれ方、初めて見たよ」
ジブンに続いて部屋に入った追着さんがなにごとか言っていますが、ジブンは事実しか言ってないっすからね。謙遜をする理由がないんすよ。
と、そこで。早速っすけど、んーちゃんの登場っす。
[帰宅、確認。おかえりなさい、エツ]
リビングから姿を現し、淡々と挨拶をしてくれたっすね。
──そう。んーちゃんは【姿を現した】んすよ。
「この子が、ジブンのお世話をしてくれている人工知能──んーちゃんですよ~」
紹介をすると、んーちゃんは【ペコリとお辞儀をした】っす。
[歓迎。初めまして、追着様、カワイ様。エツのお世話をしております、んーと申します。呼び捨てでも、エツと同じ呼称でも、お好きなようにお呼びください]
頭を下げたんーちゃんを見て、玄関で靴を脱いでいた追着さんとカワイさんはピタッと動きを止めてしまったご様子。それから、分かり易く絶句したっす。
「「……」」
「お二人さん? どうしたっすか?」
なぜかお二人はジブンを見て、それからんーちゃんを見て……。それを、三回ほど繰り返し。
その後、ようやく言葉を発したかと思えば。
「「──人型?」」
「──っすね~」
まさに、見たままの現実を口にしたっすね。
すっかり固まってしまったお二人を見て、んーちゃんは眉を寄せたっす。
[説明、不足。エツは事前にわたしのことをお二方にお伝えしなかったのですか]
「いや、ちゃんと『んーちゃんは掃除ができる』って話はしたので、自ずと【んーちゃんは人型】って伝わると思ったんすけど……」
「いやいやいや! 俺たちが思う人工知能のベースってゼロ太郎なんですよ! 前提がゼロ太郎なんですよ! 基盤なんです! そこを揺らがすって相当ヤバいことなんですよ大家さん!」
「うおっ、ビックリ! 追着さん、そんな感じのキャラなんすねっ?」
まさかここまでビックリされるとは。嬉しいような、心外なような……。
でも、これでお二人の疑問は解消されたはずっす。ジブンは「まぁまぁ、立ち話もなんですから」と言い、お二人をリビングにお通しするっすよ。
勿論すぐに、んーちゃんはお二人をお招きする姿勢を見せるっす。
[来客、対応。粗茶ですが、どうぞ]
「ソチャ? 緑茶とは違うの?」
「あっ、そっか。カワイはこうして誰かにお招きされるのは初めて? だもんね。……えっとね。今んーちゃんに出してもらったのは緑茶だけど、こういう時はお茶のことをそう言うんだよ」
「ふーん?」
ふふっ。なんだか微笑ましいやり取りっすね。思わずニコニコしちゃうっす。
「ソチャの意味は分からないけど、こんなに美人な人間……人間? に、お茶を出されるのは……なんだろう。不思議と、イヤじゃない。少し、ソワソワしちゃう」
「カワイとゼロ太郎の手前でなんだけど、それは分かるかも。しかも、おあつらえ向きにメイド服だしね」
「……? 服装とお茶出しになんの因果関係が?」
「ごめんなんでもない忘れてっ」
しかも、んーちゃんの容姿が高評価。これは鼻が高いっすね。んーちゃんが出してくれたお茶を啜りながら、ジブンはご満悦っす。
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