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さて、話を戻しましょっか。おそらくそんなことを考えていたでしょう追着さんはお茶を啜った後、ジブンたちに向かって口を開いたっす。
「それで、えっと……。大家さんのところの人工知能さんは人型、なんですね?」
「ヒューマノイドユニットっす。言ってしまえば【アンドロイドロボ】みたいなものっすね」
「すごくすごい。この体もエツが作ったの?」
「そうっすよ~。ジブン、こういうの得意なんで」
カワイさん、どうやらんーちゃんに興味津々みたいっすね。「へぇ~」と相槌を打って、んーちゃんを凝視っす。
頭のてっぺん、爪先……。かなり遠慮なく、カワイさんはんーちゃんを見つめているっす。
ジッと見られているのはジブンじゃなくてんーちゃんっすけど、制作者としてはなんだか照れくさいかもしれないっすね。んーちゃんのボディに欠陥なんてひとつも無いっすけど、ヤッパリ凝視されるとソワソワするっす。
やがて、カワイさんは満足したのでしょうか。じっくりたっぷりと、んーちゃんのボディを観察した後──。
「──このおっぱいも、くびれも、お尻も……この、どう見ても性的でエッチな女体は全部、エツが作ったんだ?」
「──カワイ、しっ!」
えっ! なんでそんな変質者みたいな扱いを受けているんすかね、ジブン! 驚きっすよ!
なぜか追着さんはカワイさんの口を手で塞いで、発言を強制終了させたっす。
「確かにこの体は大家さんが作ったけど、だからってエッチな意味とか目的で作ったわけじゃないんだよ、カワイ」
あっ、なるほどっ? 淫行目的の体だと思われているってことっすか? で、それに対する弁明ってことっすね? なるほどなるほど──……って、それはさすがに心外っすよ!
「ちょっと! ジブンのんーちゃんをそんな破廉恥な目で見ないでほしいっす! 怒るっすよ!」
「ああっ、すみません! カワイはそういうつもりで言ったわけじゃ──」
「──んーちゃんをエロイ目で見ていいのはジブンだけっす!」
「──エッチな意味と目的じゃん!」
なぜか追着さんが「弁明を返してください!」と叫んでいるっすね。不思議っす。
「まぁでも、んーちゃんは思春期の頃に設計したボディが基礎と言いますか、ベースなんで。惜しげもなくジブンの欲望が反映されているのは否めないっすね~」
「あぁ、なるほど。……ところで、大家さんの今現在の好みの女性ってどんな方ですか?」
「──巨乳安産型だけど細身で低身長な金髪で長髪の碧眼たれ目美女っす」
「──んーちゃんじゃん! どこをどう切り取ってもんーちゃんじゃんか! 思春期云々のくだり必要だったかなっ?」
いやっすね~、人の好みなんてそうそう変わらないっすよ~。追着さんのツッコミを受けたジブンは、思わずケラケラッと笑ってしまったっす。
そんなジブンを見て、カワイさんはなにかに気付いたご様子。相変わらずのクールな表情で、スパッとこう言ったっす。
「つまり、エツはハレンチな人間?」
「あっ、ちょっと、こらっ! 本人の前でそんなこと言わないの! それに、自分の性癖に素直な人が必ずしも【破廉恥】って一括りにできるわけじゃないんだよ!」
「どういう弁明っすか、それ?」
「──ううん、絶対そうだよ。エツは絶対に、ハレンチ人間」
「──いやあのっ、そこまで確信するような要素あったっすかね?」
欲望に忠実な健全すぎる成人男性っすよ。まったくもう。
なんて思っていたら……。
[軽蔑。人間らしい言葉を遣うのなら『ドン引き』です、エツ。この体は肉欲の捌け口として製造されたものだったのですね]
[生みの親に対して遣いたくはない単語ですが、私からも一言『軽蔑』と贈らせてください。そして『失望』という熨斗を添えさせていただきます]
「あっれぇ~っ? もしかして、ここには敵しかいない感じっすかぁ~っ?」
悲しいっす! んーちゃん流に言うなら『悲哀、驚愕』っすよ! まさかの味方ゼロな状態に、ジブンはガガンとショックを受けてしまったっす。
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