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第3話 熱い夜

 康太はベッドの上で天井を見上げ、胸を大きく上下させながら荒い呼吸を繰り返した。  亮はその右側で頰杖をついて康太の顔を見降ろしていた。僅かに上気した康太の薄いピンク色に染まった頬を見つめながら、人差し指でそっと唇に触れた。 「康太、こうしてお前がそばにいてくれて嬉しいよ」  康太は亮の言葉を心に刻みつけようとするかのようにそっと目を閉じた。  心地良い疲労感が漂い、甘く気怠いこの時間ーー。  康太は全身の感覚が、まるで自分のものではないように思えた。だが瞼を閉じると、脱力したままの下半身に残る僅かな痛みが、紛れもない現実であると主張してくる。  康太は亮の最後の喘ぎを聞きながら、身体の中心を強く突き上げられ、同時に果てたのだ。 (これがトコロテン⁉︎)  康太はペニスに手も触れないまま射精したのだ。  頭の芯を突き上げるような快感に、全身を強張らせ、短い痙攣を繰り返した。まるで自分の身体全部がペニスになってしまったのかと思えるほど衝撃的な出来事だった。 「もう一度、康太を抱きたい」  甘い言葉を囁く亮の声は、耳から直接心に手を触れられたような奇妙な感覚にさせられる。耳元に語りかけられることが、こんなにも心地よく、いやむしろ官能的な悦びを感じるものだということを、康太は初めて知った。  康太は僅かに瞳を潤ませながら亮を見つめた。  亮の瞳は淫らなほどキラキラと輝き、思わず身震いするほど鋭い眼差しは、康太の感情まで射抜いてしまった。  聴覚と視覚の両方から伝わる淫靡さの伝播は、康太の下半身に電流を走らせた。  亮の唇が再び康太に触れるのと同時に、亮の右腕が康太の腹に触れ、さらには太腿をさすり、康太の中心にあるアナルに触れた。 「うああっ……!」  思わず漏れた喘ぎに、康太自身が驚きを隠せなかった。 「康太のココ、凄くいい。よく締まるし、中で蠢いているみたいで驚いたよ」  康太は顔に身体中の体温が押し寄せてくるような錯覚を覚えた。 (恥ずかしい。でも褒めてもらえた。嬉しい)  康太のアナルは再び亮を迎え入れようとするかのように、しっとりと湿り気を帯びていた。 (男だって濡れるんだぜ。粘膜が働いて粘液を分泌するんだからさ)  康太は誰かが言った言葉を思い出した。 「ちゅぷっ くちゅ」  康太はあまりの恥ずかしさに青ざめる思いだった。だが亮の受け止め方は少し違っていた。 「康太もまだ欲しいみたいだな。ココは正直だ」  康太はまた顔を赤らめた。亮はいきなり起き上がり、康太の両脚の間に自分の身体を滑り込ませた。 (まだ返事もしていないのに)  康太はそう思いながらも、亮の積極的な動きに胸を高鳴らせた。 「もう充分に準備が出来ているみたいだな」  恥ずかしさに思わず両手で顔を覆った。だが康太の昂りはその股間の中心がはっきりと示していた。  亮は自分の硬くなったペニスの先を康太の秘部に当てがいながら、康太の天井を仰ぐほどに屹立したペニスを掴んだ。 「ああっ!」  康太の口元から淫らな悦びが漏れる。慌てて自分の左手で口元を覆った。  だが康太の左手は、亮によって剥ぎ取られ、熱いキスがそこに落とされた。  チュプっと音を立てて、亮のペニスが鋭敏になったアナルにゆっくりと、ゆっくりと埋め込まれていく。 「うわあああぁっ!」  不意に叫び声を上げた康太に驚き、亮は康太の肩口に手を置いた。 「康太、どうした? あっ!」  胸を激しく上下させて呼吸を繰り返す康太のみぞおちのあたりには、白濁した液体が飛び散っていた。 「康太、まさかイッたのか?」  亮は本気で驚いている様子だった。  康太は全身を震わせながら、亀頭の先から断続的にだらだらと精液を吐き出し続けていた。 「そうか、そういうことか」  亮は再びゆっくりと康太の直腸を自分のペニスで擦り上げてみる。康太の背中がベッドから浮き上がり、僅かに持ち上げられた左手は、切なげに何かを掴もうとして彷徨った。 「ここか? 違うな」  亮は明らかに何かを探している様子だった。腰を浮かし、康太のアナルの中心を軸に、前後左右にゆっくりとずらしながら、深く浅く抜き挿ししていく。   康太は下半身を亮の強い腕に押さえつけられたまま、僅かに自由の許されている上半身をくねらせ、喘いだ。  だがその健気な姿とは裏腹に、僅かな灯りに浮かび上がるきめの細かい肌、ピンと先を尖らせた乳首、亮のすぐ下で跳ねる硬く張りのあるペニス。そのどれもが亮の欲望の炎に、甘い香りのする油を注いだ。 「康太、お前は最高に可愛いい。そして最高に淫らだ」  亮の言葉に呼応するかのように、康太は腰をきゅっと持ち上げたかと思うと、断続的な吐息とともに、再び白濁を噴き上げた。 「わかったぞ。ココだな」  征服欲を満たされた男は、一様に勝ち誇ったような言葉を吐く。だが康太はそれが嫌いではなかった。むしろ口では言えない秘密を探り当ててくれた亮に、康太は感謝したい思いだった。    そこから亮は、堰を切ったように激しく腰を使い始めた。 (壊れちゃうよ、僕壊れちゃう)  だがそんな康太の不安も、目の前の快楽を否定するだけの力を持てなかった。  だが快楽の裏側には少なからず恐怖も存在する。  底のない沼に引きずり込まれるような不安と、抗えないほどの渇きは相対し、いずれかに軍配は上がるものだ。  だが今の康太は、亮とならばどこまでも沈んでしまいたいと願っていた。 「康太、俺もイキそうだ!」  亮は荒い息を吐きながら叫んだ。 「いいよ、亮!」 「お前の中に出していいか?」 「うん、出して……!」 「康太、コータ!」  亮の腰から伝わる最後の強い衝撃を受けて、康太はまた違う世界を垣間見た。それは今夜初めて、亮が手を引いて連れてきてくれた楽園の、何度目かの快楽だった。 「コータ、イクッ、イクぞ!」  亮は吐精の勢いのままに、何度も何度も康太の尻に腰を強く打ちつけた。その度に浅く、深く亮の爆発寸前まで膨らみ切ったペニスを抜き挿しされる。その衝撃は康太の秘密の中心を刺激し、白濁した汁を亀頭の先から流した。  康太は口元から唾液が垂れることも忘れ、長い長い喘ぎ声を部屋中に漏らし続けた。

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