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第5話 ヤキモチとか嫉妬とかジェラシーとか@あおさん 前
事の発端はりょうのスキニーのポケットから出てきた一枚のカードにある。
事前に用意されたのであろう小さなそれはゴールドの小花に縁取られた上質紙で、そこに可愛らしい字体で書かれた連絡先のIDと名前があった。
多分、だ。
カードの状態から受け取らざるを得なくて致し方無しにその場でポケットに突っ込んで、そのまま忘れたのだろう。
それは、わかる。
無造作に入れたからかシワだらけのカードは大事にされていない事をわかりやすく物語っている。
わかる。
普段、無愛想を装ってはいるが、その下のあの端正な顔立ちはゆるくウェーブのかかった明るめの髪が雰囲気を柔らかく見せて、随分と魅力的に見えるだろう。プラス美容師という職業も相まって本人の意思とは関係なくさぞモテるだろう。
わかっている。
いくらモテたところで、りょうは一切の興味がないだろうことも。
出会ってからこれまで熱心に注がれる愛情を疑った事などただの一度もない。
けれど。
「それとこれとは話が別だ」
ふつふつと腹から湧いてくるこの感情は、嫉妬だ。それを飲み込む術は生憎と持ち合わせていない。上に今これを本人にぶつけなければ気がすまない。
グシャリ、手の中のカードを握りつぶす。
「クソガキがっ」
バタンと洗濯機の扉を閉めて踵を返す。背後で開戦のゴングが聞こえた。
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