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第6話 ヤキモチとか嫉妬とかジェラシーとか

「あおさん」  ソファの上、俺の横で組んだ足の上に雑誌を置いてそこに視線を落としている彼を呼ぶ。呼んだそれに返事はなく、鼻梁が際立つ横顔に、怒りを滲ませていた。  柔らかな見た目ほど柔和でも温和でもないあおさんの導火線の短かさと着火されやすさが起因して小競り合いは日常茶飯事ではあるものの、今回の件は完全に俺に非がある。 「あおさん」  再度呼んだ名前に一瞬視線だけをこちらによこす。それにそっと安堵する。どうやら溜飲を下げる余地はあるらしい。気性は中々に激しいけれど、その怒りが長く持続しないのはあおさんの長所だと思う。  それなら、と腰を上げあおさんの前にひざまずく。 「あおさん、ごめん」  雑誌の上の両手を取る。その指先に唇でそっと触れる。 「俺が悪かったから許して」  上目遣いに見上げた彼はブスッとしたまま。だけどその表情にいくらかの機嫌が戻りつつある。もうひと押しを確信して今度は手の甲に口づける。 「俺にはあおさんだけだよ」  知ってるだろ。 「……家に持ち込むなって言った」 「うん、ごめん。興味無さすぎてポケットに突っ込んだ事も忘れてた」 「……次やったら殴る」 「うん、しない」  許してくれる? 首を傾げた俺にあおさんが小さく頷いた。 「客から渡された連絡先は職場で捨ててくるって約束忘れるなよ」  彼はわざと唇を尖らせる。床に膝を着いていた体をあおさんに寄せ下から掬うようにそこに口づける。 「受け取った事を忘れてた。忙しかったし本当に興味なくて」  あおさんの細い指が俺の頬を撫でた。そのままムニーと頬を引っ張られ、眉毛を下げてみせるとあおさんが笑った。 「受け取らざるを得ない状況はあるだろうから受け取るなとは言わないけど、俺にそれを見せない配慮はして」 「うん、ごめん」 「今回は許す」  ふふ、機嫌よく笑ったあおさんの指が離れていく。  それを掴んで手のひらに口づけてから、彼の細い腰を自分に引き寄せる。あおさんは大きな目を更に大きくした。それに構わずそのまま彼の体を少し持ち上げて、ソファに押し倒す。そこに乗り上げて彼を見下ろせば、あおさんの両手が俺の首に回される。 「何するつもりだよ」 「なにって」  仲直りでしょ。言った俺をあおさんが睨む。この体制でよくもそんな顔が出来るなと関心しながら鼻の頭にキスをする。 「あおさん」 「なに」 「しよう」 したくない? 聞いた俺の耳元であおさんが小さく「する」と囁いた。

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