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第6話
クロさんに小春との関係についてお墨付きをもらったその夜。俺はわかりやすく影響を受けた。
風呂場において小春は身悶えはっきりと情欲を示していた。俺は既にスポンジを手放し、山のように手のひらに盛った泡で触れたいすべてに手を滑らせた。後ろから抱き止め、脇から胸に手を滑らせて薄い胸板を執拗に撫でた。ぷっくりと立ち上がった粒を指先で何度も何度も弾き、淡く喘ぐ声に股間を硬くした。快感に戸惑う小春は胸が痛くなるほど可愛くて、これもすべて許されるのかと思うとこの上ない幸福を感じた。
これまでは決して触れないようにしていた自身の勃起を遠慮なく小春のすべらかな丸い尻に擦り付け、明確な意思を持って小春の兆した陰茎を扱いた。初めての刺激に小春は大袈裟に喘いだ。俺は決定的な刺激が足りず小春の身体を向かい合わせにしてふたりの陰茎をまとめて扱いた。これほど手だけで興奮することはあっただろうか。泡で滑る身体を押さえ込み、腰を振りながらがむしゃらに勃起を虐め抜く。
「あぁあぁ……ッ!」
「えっえっなになに!?」
圧倒的な開放感と共に押し寄せたのは同じくらい圧倒的な後悔だった。
「日和どうしたの? 怖い夢みた?」
布団の中でぎゅうぎゅうに抱き締められた小春は健気にも俺の唸り声を勘違いして慰めてくれている。息を整えながら身を捩ると案の定下着の中に不快なぬめりを感じた。
「起こしてごめんね……ちょっと離れて……」
恐らくは寝ながら小春の身体に股間を擦り付けて完遂してしまったのだろう。ただならぬ快感の記憶を引き摺り罪悪感が伸し掛かる。あまりにも即物的すぎる己の脳に我慢の限界を感じた。
それでも夢の中のできごとで済んで良かった。夢精は情けないが、これで溜まっていたものが放出されたのだからしばらくの間は治まってくれるだろう。
そう思っていた。
「あれ、なんかまた……? 日和行かないで!」
いち早くベッドを出ようと動くと今度は小春が俺にしがみついた。
「すぐ戻るからちょっと離して……!」
「待って、行かないで、小春また変なの! むずむずして変なの!」
むずむず、という言葉にまずいと思った。以前にも小春は昂った欲を言い知れない異変として俺に訴えた。切迫した様子はあの時と同じだ。どうしてよりによってこんな時に……
行き場のない欲が募った小春の顔は切なかった。それはつい先ほど夢に見た小春と似ている。それに気付けば一瞬で、欲情しきった小春の姿が脳裏に蘇り、夢精が嘘だったかのように腹の底が熱を帯びていく。
「日和どうしたらいいの? またお散歩連れて行ってくれる……?」
ああ、可哀想な小春。頼る相手が俺しかいなくて必死に縋っているんだ。可愛い小春。
俺がいて良かった。
「小春、今日はちょっと大人になろうな」
混乱する小春をベッドに寝かせて覆い被さり、身体が冷えないように布団を被せた。
「嫌だったり怖いと思ったら教えて」
俺の名前を呼ぶ唇に優しく吸い付くと小春はそれに応えるように俺の首に両手を回した。なるべく驚かせないように身体に触れて指先を寝巻きの下に滑らせる。
「あっ……?」
身体をぴくんと震わせて小春が視線で俺に問い掛けた。
「嫌? 怖い?」
小春は小さく首を振った。
「何するの……?」
純粋な疑問に言葉が思わず言葉が詰まる。どこまでなら許されるのだろう。組み敷いて、唇も奪って、身体に触れても何を意味するのかわかっていない相手に対してどこまでなら許されるのだろう。
「今から小春の身体にたくさん触るよ。それで小春が気持ちよくなれたらむずむずが治まる」
「怖いの?」
小春に触れていない方の手で硬く拳を握った。
「絶対、怖くないようにする」
「……うん」
小春が目を伏せて自ら俺の唇に唇を重ねた。俺はより強く拳を握りしめた。
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