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第7話

 薄い腹を温めるようにゆっくりと撫でると吸い付くような肌の質感がよくわかる。少し上に向かってなぞると皮膚の下から浮く肋骨に触れる。もっと食べさせてもいいかもしれないと思いながら胸に手を当てる。小春の心臓がどくどくと胸を叩いてる。おしゃべりな唇からは熱い吐息が漏れ出るだけだ。俺が次に何をするのか、睫毛を震わせて待っている。 「小春、まだ触っても平気?」  念のため問い掛けると潤んだ瞳が現れる。 「平気、きもちいい……」  僅かに綻ぶ表情に安堵と高まりを覚えた。自分の下着の中は既にどろどろに汚れているのに貪欲にそこに血液が集まるのを感じる。  舌や唇を使って愛したいのを堪え、ひたすら手指で可愛がった。柔らかな膨らみなど無い胸を撫でると夢の中と同じく小さな粒に触れる。指先でくりくりと撫でると硬さを増しより愛らしい形に変わった。むしゃぶりつきたくなるが、指で触れるだけで呼吸が大袈裟になる小春を見ているとそれだけで十分愛しかった。  俺はひたすら小春のすべすべな肌を堪能し、小春の様子を伺った。小春はおとなしくされるがまま身を預け、時々触れる唇に吸い付き応えた。たったそれだけのことだが俺は額に汗が滲んでいた。 「ひより、たくさん気持ちいいのにどんどんむずむずするよ……?」  いつもより甘ったるい口調に生唾を飲んだ。上半身を撫でまわしただけで小春の肌は粟立ち、呼吸が乱れている。何よりも置き所がないように腰を捩る姿が何を示しているのか、痛いほどによくわかる。 「じゃあこれからむずむず治すから、嫌だったらすぐ言うんだよ」  俺の言葉に小春が抱きつく腕の力を強めた。俺は小春の表情を観察しながらいよいよ腹の下へ手を伸ばした。 「ンッ……!」  敏感な下腹部に触れると小春はくすぐったさに身を固くした。まずは直に擦れず、寝間着の上からそっと手を当てるとそこは今までになく、他に言いようがないくらいに勃起していた。 「小春のここすごく硬くなってる」 「う、わ、あ……」  戸惑う声が聞こえると共に強く服を握られた。熱いそこを象るように触れると普段の無垢で愛らしい小春からは想像できないような雄が存在を主張している。それは俺を無性に興奮させた。 「すごいな小春、こんなに硬くして、いっぱい気持ち良くしような」 「なんで、なんで、これ何」  指先に力を込めて上下に擦るとごりごりとした感触を得る。小春は焦ったように踵でシーツを蹴り、初めての快感に抗った。 「アッ?!」  勢いに任せて下着に手を突っ込むとそこは熱い湿気で蒸れていた。目的のものを掴み緩く撫でたところで小春が悲鳴を上げた。 「怖い! 怖い! やだ!」  小春の声に冷や水を浴びせられた気持ちで手を離す。小春も俺の腕を掴まえて行為の継続を拒んだ。 「怖かった? ごめんね、もうしないよ、ごめんごめん」  すぐに小春を抱きしめて言い聞かせた。罪悪感が怒涛になって押し寄せる。やっぱりこんなことはするべきじゃなかったんだ。  するとくぐもった声で小春は言った。 「違う、日和は怖くないよ」  俺の腕からなんとか顔を抜け出し慰めるように小春が俺の頬にキスをした。 「どうして身体が硬くなるの? いつもは柔らかいのに、なんで? それに触ると変になるし、怖いよ」  小春は勃起が何かと言っている。自身に起きた生理現象を自覚して、未知の変化を恐れているのだ。  口の中がカラカラになるのを感じながら慎重に答えた。 「……これは、好きな人同士で触り合って、気持ち良くなるために硬くなるんだよ」 「じゃあ小春と日和が……?」  間近に見る澄んだ瞳が眩しかった。嘘は言っていないはずだ。 「日和もこうなるの?」  言いながら小春は右手で布団の中を探った。俺は覚悟を決めてその手を受け入れた。 「えっ……これ……?」  小春に触れられた陰茎はこれ以上ないほどに膨らみ、早くも二度目の解放を強く訴えた。俺は被せていた布団を剥ぎ取り小春の身体を跨いだ。そのまま寝巻きと下着を下ろし、閉じ込められていた濡れた性器を露出させた。籠った熱気が外に逃げ、一瞬ぶるっと身震いをする。 「ほら、ね……?」  小春の大きな瞳がさらに大きく見開かれ俺のそこに釘付けになっている。傍から見ればなんとも滑稽な風景だろう。しかしお互いの興奮が伝わり、先端からは涎が伝った。 「これ、小春も触っていいの?」  その一言にも反応し、勃起が僅かに震えた。 「っ、もちろん」  小春は瞬きを忘れてしまったようにそこを見つめ人差し指で竿をなぞった。些細な刺激も小春から与えられたかのだと思うと堪らない。何度か指先で往復したあとは俺を真似て指の輪で上下に扱いた。 「なんで濡れてる?」  瞳だけがこちらを向き、小春は不思議そうに手淫を施す。クチクチと鳴る卑猥な音が小春の手によって生み出されている。 「、きもちいいと、濡れちゃうんだ、は、あ」 「きもちいいの……」  小さな声で呟くと小春は膝を擦り合わせ、今度は物欲しげな顔で俺を見つめた。 「ねえ日和、もう怖くないから小春に触って?」  小春はするりと両腕を俺の肩に絡ませて得意のおねだりをした。さらに股間が熱くのなるのを感じ、そのまま小春の下半身から衣服を取り去った。自身の下げた物もベッドの下に放り投げお互いに素肌を曝け出した。 「じゃあ一緒に触ろっか、こうやって……」 「あっ……」  お互い向かい合って膝立ちになり、腰を反らせる。相手の勃起と自分の勃起を触れ合わせ夢で見たようにふたつまとめて握り込む。小春は信じられない物を見る目で握られた陰茎を見つめてる。口元に手を当て耳を真っ赤にさせている。興奮も絶頂に達しているのかほっそりしていた尻尾は毛を逆立てて太く膨らんでいる。 「動かすと、気持ちよくなるよ、ッ」 「あ、あ、アッ、あぁ」  陰茎を握った手を動かすと小春は上擦った声を上げた。はあはあと一生懸命息を吸い、ピンク色に染まった亀頭の先には間もなくぷっくりと露が溜まる。 「ああ小春も濡れてきた。きもちいいの?」 「すごい、きもち、きもちいい、すき、ひより、だいすきぃ、だいすきだよお」 「あー……、可愛い……ッ」  初々しく健気な反応に思わず手に力を込める。指の間から漏れる白く泡立つ体液が伝い俺は早くも限界が迫っていた。すると小春が突然俺に抱きつきガクガクと震え出した。 「なんかきちゃう、おしっこ出ちゃうよぉ!」  切羽詰まった声で叫ぶと小春は本能に任せて腰を振った。きつい指の輪に圧迫された勃起に小春の陰茎が擦られてゴリゴリと摩擦される。やばい、と思った次の瞬間には手にも腹にも熱い飛沫が迸った。 「アッ……~~!!!」 「ッン、こ、はる……ッ!」  全身を大きく痙攣させ声も出せずに激しく絶頂した小春は呼吸の再開と同時に倒れ込んだ。 「これ、すご、好きで、いっぱい、きもちぃ……」  うわごとのように繰り返し、精通の余韻で身体を震わせながら小春はそのまま眠りについた。  俺は射精後特有の虚脱感を味わいながらも確かに幸せを噛み締めて、大惨事となっているあたりを片付けた。

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