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第16話
帰路の途中、真嗣はサービスエリアで休憩をした。この数日に二回も足を運んでくれた隆也に礼を言おうとスマホを手に取った。本当は隆也の声が聞きたかった。
「もしもし…隆也?真嗣だけど」
(真嗣…この度はご愁傷様でした。辛かったな…で、お前、今どこ?)
「途中のサービスエリア。隆也、色々ありがとうな。本当助かったよ」
(そんな、大したことしてないよ。お前、一人で大丈夫か?)
「あぁ、お前の声聞いたら、ちょっとホッとした」
(そうか?家帰ったら、ちゃんと食えよ)
「わかってるよ…じゃあまた『松峰』でな」
真嗣は隆也の声を聞いたら会いたくなったが、これ以上は我が儘になると思った。缶コーヒーを買って、車を出した。
真嗣は家に帰ると、家に着いたことを実家に一報を入れ、シャワーを浴びた。冷蔵庫から缶ビールを出して飲もうとした時、スマホが鳴った。隆也からだった。
(あぁ、真嗣?もう家着いた?今からそっちに行くから。晩めしまだ食ってないだろ?何か買ってくから、お前何がいい?)
「…ごめん、気遣ってもらって。お前と一緒の物にするよ」
(わかった。じゃあ30分後くらいな)
電話が切れた。真嗣は泣きそうになった。やっぱり隆也に会いたかったのだ。隆也が来てもいつものように話せるか自信がなかった。
30分もかからないうちに隆也が来た。
「真嗣、吉嗣君のことお悔やみ申し上げます。本当に残念だったな」
「ありがとうございます。隆也には本当にお世話になりました」
隆也の姿を見ると、真嗣の目には涙が溢れてきた。
「お通夜の時さ、親父さんやお袋さんは泣いてるのに、お前は涙も見せずに毅然としててさ、参列者にしっかりと挨拶してさ、お前を見てて胸が痛かったよ。お前、ちゃんと泣いてないだろ?俺でよかったら泣いていいぞ」
隆也の顔は今までにないくらい、優しかった。
「…なんだよ。調子狂うな…まったく…もう」
隆也の優しさに堪え切れず、真嗣は声を出して泣いた。隆也は真嗣が泣き止むまでそっと肩を抱いていた。
しばらくして涙がおさまると、真嗣は祖母の認知症のことや父親がパチンコに行っていたこと、父親と伯父が不仲であることなどを、隆也が買ってきたカレーライスを食べながら話した。
「そうか…そんなことがあったんだな。お前もそうだけど、親父さんもお袋さんも辛いよな。命に関わることを、たらればで話すことほど辛いことはないもんな」
隆也の言う通りだった。もし、真嗣が家を継いでいたら、もし、父親が書類を届けていたら、もし…いくら考えたところで、もう吉嗣は帰ってこない。
「親父は一生、十字架を背負って生きていくんだな…俺も半分くらいは背負ってやらないとだめだよな」
「真嗣…今は吉嗣君の冥福を祈ろう」
改めて、二人で吉嗣に献杯をした。
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