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第23話
扉の前のポーチで、真嗣は隆也と向かい合うと、両手を繋いだ。そして、では、と言い、厳かな感じを出そうと、いつもより低めの声で言った。
「高倉真嗣、汝、真下隆也を生涯の友として、この者に友情と…愛情を持ち続けることを誓いますか」
続けて真嗣が言った。
「はい。誓います」
ベールの奥の隆也の顔を見つめて言うと、繋いでいた手をぎゅっと握った。そして真嗣は続けた。
「真下隆也、汝、高倉真嗣を生涯の友として、この者に友情と愛情を持ち続けることを誓いますか」
「はい。誓います」
隆也もしっかりとした口調でそう答えると、真嗣の手をぎゅっと握った。
「では、指輪の交換を」
「えっ?指輪って、お前」
真嗣はタキシードのポケットから白のベルベットの小箱を出して、隆也の前で、ジャーン、と言って開けた。中には白金のペアリングが並んでいた。
「こっちが細い方だから俺が持って、隆也はこっち持って」
二人はそれぞれの指輪を持つと、真嗣から
「誓いの証しとして、この指輪を贈ります」
そう言って、指輪にキスをして隆也の左の薬指にはめた。隆也も同様に言うと、指輪にキスをして真嗣の左の薬指にはめた。そして真嗣は一呼吸おいて言った。
「では、誓いのキスを…」
「えぇ、マジか、お前」
「一回だけ…いいだろ?なっ?」
「…もう、しゃあねぇな…一回だけだぞ」
隆也はもうここまできて抗うつもりもなかった。
真嗣は隆也に一歩近づき両腕を広げるとベールの端を持った。その手を大きく上まであげ、ゆっくり向こう側へやると、隆也の少し恥ずかしそうな顔があった。真嗣は笑顔で優しく隆也を見つめた。
「隆也…ありがとう」
「俺も…真嗣…ありがとう」
真嗣は隆也の両肩に手を添え、ほんの少し前屈みになって隆也の唇にそっと唇を重ねた。どちらからも唇を離そうとはせず、しばらく互いの唇を感じているようだった。
唇が離れると、照れ隠しなのか隆也は
「…お前なぁ、今舌入れようとしただろ」
「するわけ、ないだろ」
「いや、お前の舌、俺の唇に当たったぞ」
「お前こそ、俺のキスにうっとりしてたくせに」
「あぁ、ないない」
いつもの二人の会話になると、隆也は真嗣の肩越しに、こちらに向かってカメラを構えている人物がいるのを見つけた。
「なぁ、真嗣…お前、カメラマンも頼んでたの?」
「えぇっ⁈」
驚いた真嗣が振り向くと、二人が立っている場所から10メートルくらい離れた大きな木の幹の陰で、カメラを向けている人物がいた。黒髪を後ろで括り、黒のスエットにジーンズ姿のどうみても女子高生に見えるその女子は、二人がこちらを向いているのに気付いた。
「あの、君は誰?」
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