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第24話
「あっ、あの、わたしは、その、この地元の高校に通う者でして、決して怪しい者ではございません。今は写真部に在籍しておりまして、あの、あまりの美しさについ我を忘れて、本当に失礼いたしました。お声かけもせず撮ってしまいました。写真のデータはすぐに消去いたしますので、どうか、どうか、その、えっと…」
その女子高生は夢中でシャッターを押していたのだろう。急に声をかけられたことで現実に引き戻され、しゃべればしゃべるほどしどろもどろになっていた。
「あぁ、待って待って、一旦落ち着こうか」
真嗣が言うと隆也も続けて言った。
「そう、そう。別に俺達は咎めているわけじゃないって」
美しい花嫁が、男の声で俺達と言ったことに、その女子高生は、固まってしまった。
「ねぇ、その写真のデータ、俺達にくれるなら、撮ってもいいよ」
隆也は楽しそうにその女子高生に笑顔を向けた。
「隆也、お前」
「だって、お前はこの姿を見てるからいいけどよ、俺はどんな風になってるのかわからん。だから俺も見たいんだよ」
女子高生の強張った顔はすぐに安堵した表情になった。同性のカップルが人知れずひなびた教会で、二人っきりの結婚式を挙げているのだと理解した様子だった。そしてこれ以上ない美しい被写体を得られたことで、すぐに満面の笑顔で二人に近づいてきた。
「うわっ、彼女のカメラ、ガチでいいやつじゃん」
隆也はスタジオ撮影も立ち会うことがあり、普段からカメラをよく見ていた。
「ありがとうございます。撮らせていただけるなんて本当に嬉しいです。申し遅れました、わたしは竜泉寺美香といいます。次、高三になります。この先にある高校で写真部の部長を務めさせていただいています」
「あぁ、ご丁寧にありがとう。俺は隆也でこっちは真嗣。じゃあ、撮ったらデータよろしくね」
「はい。もちろんです。じゃあ撮らせてもらいますね」
美香の顔はキリッと引き締まったものになった。ファインダーを覗きながら、光の具合を確認し、画角を決めているようだ。
「じゃあ、すいません。横並びじゃなく、花嫁さんが前で少し重なるように密着して立ってもらって、私の頭の上の方を見てもらっていいですか」
真嗣と隆也は、その女子高生の美香はカメラだけではなく撮影もガチだと、目を合わせた。
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