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第6話 信頼の証とつながる心(5)★

「っ!」  途端、体を貫くような衝撃が走る。  こちらを見下ろしてくる瞳は、今や卑しい雄のそれでしかない。獲物を前にした肉食獣のように爛々と輝いていて、犬飼は全身をゾクゾクと震えあがらせた。 (支配され、屈服させられて――)  羽柴のDom性に当てられたのか、考えるよりも先に体が動き出す。 「Present(恥ずかしい所を見せて)」のコマンドを言いつけられたときと、何ら変わりなかった。自ら膝裏を抱え、はしたなくも後孔を晒すと、本能のままに言葉を紡ぐ。 「羽柴……抱いて、ほし……」  掠れた声でねだれば、羽柴は一瞬にして固まった。しばらく沈黙したのち、深いため息をついて頭を抱える。 「それ反則。我慢できなくなるでしょうが」 「わ、悪い。でも……」  それ以上は言葉にならず、犬飼はただ羽柴の顔を見上げた。  尊敬していた上司がこんな体たらくでは、呆れられてしまうだろうか――もう何度目かもわからぬ懸念に、胸がちくりと痛む。  しかし、羽柴はいつだって、犬飼の不安を一蹴してくれるのだった。がばっと覆い被さってくるなり、辛抱ならないといったふうに身を寄せてくる。 「なんか、濡らすもんとかって」  肩口に顔を埋め、切羽詰まった声色で問いかけられた。犬飼は内心ドキリとしつつも、努めて冷静に答える。 「……そこのサイドボードの二段目。ローションとコンドームが入っている」  こちらの返事を受け、羽柴はベッド脇にあるサイドボードへ手を伸ばした。  言われたとおりに、引き出しの中から目的のものを取り出すのだが、何故だか眉根が不服そうに寄っている。 「どうした?」 「ええっと……その、用意周到っつーか」  何かと思えば、ローションとコンドームが、あらかじめ用意されていたのが気に食わなかったらしい。嫉妬のようなものを覚えているのか、拗ねた顔になっているのが面白くて参ってしまう。 「腹を探るような言い方をするな。ここまで体を許したのは、羽柴が初めてだ」  勘違いしてもらっては困る、と犬飼は相手をなだめるように言った。  なんせ、どちらも新品だ。あくまで備えとして用意してあっただけだし、そもそも好きでもない輩に体をまさぐられるなど、プレイを絡めたって真っ平ごめんに決まっている。  そう教えてやったら、羽柴は「ううっ」と小さく唸ったのちに、頭をガシガシとかいてみせたのだった。 「蓮也さんさあ。さり気なく俺の忍耐力、試してないっすか?」 「馬鹿。……余裕がないのはお互い様だろう?」  言葉を交わす間にも、ローションのキャップを開ける音がして、羽柴が中に入っていた液体を手のひらで温めていた。  こちらの膝を上げ直すと、それを塗り込むようにして後孔の縁をなぞっていく。やわやわと指圧されたのちに、羽柴の指が押し入ってくる感覚があった。 「ふっ、ぁ……」  第一関節まで入り込んできて、浅い所でゆっくりと抜き挿しされる。  次第に根元まで埋められていったが、思っていたような痛みはなかった。ただ、異物感がひどく、犬飼は知らずのうちに顔をしかめてしまう。 「蓮也さん、大丈夫? あんま気持ちよくない?」 「わ、わからな――」  わからない、と正直に答えようとしたときだった。腹側のある一点を指先が掠め、犬飼はビクンッと腰を震わせる。 「あっ!?」  予期せぬ衝撃に、思わず裏返った声を上げてしまった。  今のは本当に自分が出した声なのか。理解が追いつかずに目を瞬かせていると、羽柴はにんまりとして、そのしこりのようなものを再び探ってきた。 「ここ?」

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