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第6話 信頼の証とつながる心(8)★
「っあ、ん……あぁ」
ぐっと内臓が押し上げられる感覚に、犬飼は息が詰まりそうになる。それでも、最愛の相手をこの身で受け入れているのだと思うと、胸が多幸感で満たされてならなかった。
もっと奥まで欲しい――ねだるように下肢を絡ませれば、羽柴は応えるように体を貫いてくる。
深く、深く、より奥深くまで。そうして、ついに羽柴のすべてを収め、犬飼の体は歓喜に打ち震えるのだった。
「っ、すっごい締め付け。あんまもたないかも――」
羽柴は吐息混じりに呟くと、待ちきれないとばかりに腰を動かし始める。
まさに息をつく間もなかった。最初は労わるような動きだったのが激しさを増していき、いつしか突き上げに変わっていた。
「ふっ、あ……羽柴、ぁ……あぁっ」
肌が激しくぶつかる音に合わせて、結合部からヌチュ、グチュ……と粘着質な音が響く。
もはや自分の体がどうなっているのか、わからなかった。酩酊 して言葉にならないほど気持ちがいい。波のようにどんどん快楽が押し寄せてくる。
「気持ちよすぎて、やばい……蓮也さんも気持ちいい?」
「あ、んっ、いい……も、とけそうだ」
繋がった部分がひたすら熱くて、このまま一つに溶け合ってしまいそうだった。
犬飼はたまらず相手の背へと爪を立て、必死にしがみついては激しい律動を受け入れる。
羽柴もまた限界が近いのだろう。眉間の皺を深くさせながら、荒い呼吸を繰り返していた。
「っは、ごめ……俺、イきそ」
そう呟くや否や、犬飼の反り立った中心を握り込んでくる。そのまま性急な動きで上下に擦られ、犬飼は甘い悲鳴を上げた。
「う、あっ! だ、だめだ――そんな、されたらあっ」
前も後ろも同時に責められてはひとたまりもない。あっという間に高みへと追い立てられ、「イく、イく……」とうわごとのように繰り返す。
そして、いよいよ限界が訪れようとしたときだった――最奥を抉るように突き上げられたのは。
「あ、ああぁ……っ!」
受け止めきれない重い衝撃に、目の前がチカチカと明滅する。全身を痙攣させながら絶頂を迎え、気づけば自分の精液で腹部を濡らしていた。
それとほぼ同時に達したようで、後を追うようにして、羽柴の低い呻き声が聞こえる。
「……っく」
最奥で放たれた熱は、コンドーム越しでもわかるほどに熱い。羽柴が射精しているさまを、犬飼はありありと感じ取りながら四肢を弛緩させていった。
離れがたいというべきか、率直に離れたくないというべきか。二人して全身汗だくだったが、それ以上に肌を重ねているのが心地よくて、静かに抱き合ったまま呼吸を整える。
しばらく余韻を味わったのち、羽柴がゆっくりと身を起こす気配があった。結合を解くのかと思いきや、犬飼の頬を撫でさすりながら口を開く。
「もう一回だけシたい、って言ったら……怒りますか?」
「………………」
明日も平日で仕事があるだろう――とは言えなかった。
こちらを見つめてくる眼差しがあまりに真摯なのだ。事後ということも相まって色気を感じるし、駄目押しとばかりに首を傾げられては、ついその気にさせられてしまうものがある。
(まったく、この男は)
犬飼はフッと笑みを浮かべると、自分も羽柴の頬へと手を伸ばした。指先で輪郭をなぞりつつ、負けじと言い返してやる。
「今夜は、ずっとこうしていたい」
言葉にした瞬間、体内で果てたものがピクッと反応を示したのがわかった。
本人も飛びつくのを我慢しているのか、ソワソワとした面持ちになって、こちらの様子をうかがっている。
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