65 / 66
小ネタ 遅ればせながら、姫始め(2)★
「こら、なんだこれは? いくらなんでも盛 りすぎだろ」
犬飼が足先を使って、羽柴の股間に触れてくる。
羽柴は思いきり動揺した。はだけた浴衣の合間から、すっかり窮屈になっていた下着が覗く。
「っ、ちょっと」
居たたまれなさに声をかけるも、相手はお構いなしだ。
なおも犬飼は足を動かし、その形をなぞるように触れてくる。足指で器用に先端を揉まれれば、否応なしに反応を見せてしまう羽柴がいた。
「……蓮也さん、酔ってるでしょ」
「かもしれないな」
「かもしれない、って」
「俺だって、体が火照って仕方ないんだ。君ならどうにかしてくれるだろう、羽柴」
吐息交じりに言って、犬飼がこちらを試すように見つめてくる。
……まさに一瞬だった。
辛うじて保っていた、最後の理性が焼け切れる感覚とともに――気がつけば羽柴は、本能に突き動かされるまま飛びついていた。
「わかってるよね、蓮也? そうやって自分から誘ったんだから……もう嫌だって泣きついても、許さないよ?」
答えなんて聞くまでもない。組み敷いた男の表情は、悦びを露わにするかのように蕩けきっている。
乱れた浴衣はもはや何の意味を成さず、素肌に点々と散りばめられた赤い痕が、羽柴の情欲をさらに煽った。
「ほら、俺だけを見て――全部、委ねて」
首輪 の縁をなぞりながら、甘ったるい声で囁きかける。
犬飼は恍惚とした顔で頷いた。そして、静まり返った客室に、衣擦れの音がやけに生々しく響いたのだった。
◇
翌朝。目を覚ました犬飼の目に飛び込んできたのは、羽柴の無防備な寝顔だった。
「――……」
どうやら同じ布団に入って、腕枕をされた状態で寝てしまっていたらしい。
視線を落とせば、羽柴の浴衣はすっかりはだけている。たくましい胸板、そして腹筋までもが晒されており、犬飼は不覚にもドキリとしてしまった。
(ああ、そうだった。昨夜はあのまま――)
状況を把握するにつれ、ゆっくりと記憶が蘇ってくる。
らしくもなく気分が浮かれてしまったせいで、昨夜はつい飲み過ぎてしまった。
いや、酒の勢いを言い訳にするには、いささか度が過ぎていたかもしれない。犬飼はそっと首輪 を撫でて、小さく息をついた。
「まったく、過剰なサービス精神だな。よりにもよって慰安旅行で来たはずなのに、こんなことでどうする……起きたら説教か?」
ぼやきながらも、声にはまるで厳しさがこもらない。
犬飼は身を乗り出し、羽柴の唇に自分のそれを重ねた。
「君といると退屈しないな、本当に」
まだまだ手のかかる部下。それでいて自分だけのDomで、恋人で――心の底から信頼している相手。
新年早々、振り回されている気がしないでもないが、この男となら今年も悪くない一年になりそうだと思えた。
ともだちにシェアしよう!

