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インプット
ドンッ
「あ、ごめ…」
「~~っ…ごめっ…ごめっ…おこんないでっ…ふぇ~~ん!」
怒ってない
謝ろうとした
「しゅうまくん」
「なに?」
「なんでいつも、おこってるの?」
「……おこってないよ?」
「うそだ~。ずっと、おこってるよ?」
怒ってない
俺は…怒ってない
まるで…
怒ってないと、おかしいみたいな
怒ってた方が合ってるみたいな…
「シュウ!むこういこ?」
「ユウ…おれ、おこってる?」
「?…おこってないよね?おこりたいの?」
「おこりたくない」
「?…じゃあ、おこんなくていいんじゃない?」
「うん…」
そうだよね?
怒りたくたいもん
怒ってないもん
ドンッ
「あ、ごめっ…」
「ひっ!…ごめんなさい…ごめんなさい…」
ぶつかったのは、お互い様なのに…
「なぁ、なぁ、東雲。どうやったらその、クールな感じって言うの?出せんの?」
「俺も知りたい!クールでカッコイイって女子が言ってた!」
知らない…
俺は何もしてない
なんで、俺はこんなに怖い顔なんだろう
朔兄も、少し似てる
けど、全然違う
きっと…性格も違うからだ
性格…もっと…
小学何年の時だったか…
「ユウ…ユウみたいな…皆みたいな笑い方教えて?」
「皆みたいなって…皆違うじゃん?」
「でも…俺だけ全然違う…あまり笑わないし…上手く笑えない…」
「俺は、シュウがあまり笑わないとこも、シュウの笑い方も好きだよ?」
「え?……好き…?」
「うん。皆があまり見ないシュウ、俺はいっぱい見てる。皆と違う笑い方のシュウ…好きだよ?」
好き……
その言葉に、やけに反応したのを覚えている
好きなんて、色んなものに使ってきた
俺も沢山言ったし、ユウも沢山言ってきた
なのに…
その時だけ、まるで別物に聞こえた
「ユウが好きなら、このままでいい」
「うん。俺も、シュウはそのままがいいと思う」
そのままがいい
ユウがそう思うなら
他の沢山の人に怖がられようと
どうでもいいと思った
朔兄に、自分でのやり方を教わってから
頭に浮かぶのは、いつもユウ
綺麗な事じゃないから
綺麗なユウを思い浮かべるのは
悪い気がしてた
彼女が出来たら、彼女の事思い浮かべるかな…
女の人の体は綺麗で
柔らかくて、触り心地も良くて
セックスも気持ち良かった
慣れなくて、上手く出来ない俺に
優しく教えてくれる先輩
なのに…
「はぁっ…っ……っ……はぁっ……っ……」
イケない
ユウを頭から追い出して
先輩の事だけ考えてイキたいのにイケない
ごめん、ユウ…
やっぱりユウの事…考えていい?
可愛いらしかったユウが
少しずつ…それだけじゃなくなってきた
まずい…
先輩と居たら、どんどん好きになんないかな?
俺は、女の人がいいんだって、思わないかな…
四葉に言われた時
正直…別れたくないなんて気持ちになれなかった
全然好きになれてなかった
これじゃ…四葉に怒られて当然だ
先輩と別れたら
また、ユウとの時間が増えてった
ユウへの気持ちを否定したかったのに
恋人同士の色んな事を知ってしまい
ユウに…ユウと…
したいと思ってしまう
今まで通りの幼馴染みで親友
たまに言い合いになったり
何の会話もなくユウの部屋で寛いだり
けど…
俺の中では変わっていた
たまに、妙に気になる視線
気になる仕草
ユウは気にもしてないんだろう
俺の頭がおかしくなってるから
気になるんだろう
隠さなきゃと思う反面
言ってしまいたくなる
けど、絶対言えない
全てが壊れるから
そう思ってたのに
あっさりと俺の告白を受け入れ
変わらずそばに居るユウ
気持ちがないと
そんな、気にならないものなのか…
でも、どんな形でも
ユウが誰を想おうと
ユウの1番近くに居たい
けど…
ユウの意思を無視して
あんなもの付けられて
感情的になって…
俺だって変わらない
ダメだ
ユウの傍に居たら
俺がユウを傷つけてしまう
そう思ってたら…
キスされた
今までとは違う
唇に…
馬鹿みたいに呆けていると
ユウが、ゆっくりと目を潰りながら
また顔を近づけてくる
瞼の動き…
睫毛の先までも
少し傾げる顔
その動きまでも
全てが綺麗で
息を飲んで、目を瞑るのも忘れていると
もう一度唇が触れた
ただ、触れてるだけ
なのに…
体が…浮いてる様だ…
体の中の
たった小さくて薄い唇だけ
それが触れただけで
今まで感じた事のない幸福感に包まれる
どうやって自分の部屋に戻ったのか覚えてない
いつの間に寝る準備をしたのか
けど…
とにかく、何度もあの感覚が蘇る
全身が優しい何かで満たされてくみたいな
何度も何度も
繰り返す感覚に浸ってると
朝になってた
ごめん、母さん
学校だよね?
でも、なんか…
頭が働かない
「じゃあ、今日はゆっくり休んでなさい?」
ゆっくり…
休んでいいんだ
「大丈夫か?シュウ…こんな呆けちまって…ま、ゆっくり寝てろ」
ありがと…朔兄…
え?この声……
ユウ!
ユウの声に、一気に動揺しまくって
どうもしなくていいのに
どうしたらいいのか分からず
勢い良くベッドの上に立ち上がり
何してるんだとベッドから下りようとして
ベッドから落ちた
驚いてユウが部屋に入って来た
一生懸命心配してくれてるけど
ユウに下から見られると…
思い出してしまう
ユウの唇を見てしまう
「大丈夫……行って」
「行くけど……学校から帰ったら、また見に来る。ゆっくり休んでろ」
学校…
キスマーク…
「………気を付けて」
「ん。シュウもな?」
「………友達……」
「分かってる。昨日、大和に少し教えてもらった。友達の前で寝たりしない」
大和に…教えてもらったんだ…
少しは警戒してくれる?
けど…
ユウが嫌じゃないなら
俺が心配する事じゃない…
「大丈夫だ。心配すんな」
ユウが俺の頭を撫でてくる
カッコ悪い
けど…
嬉しい…
「……~~っ……鞄…」
「もう背負える。痛かったら、抱けばいい」
「……ごめん」
「シュウが謝る事なんかない。俺が…シュウの気持ち知ってて…動揺させる様な事した…ごめん」
ユウが謝る事なんてない
自分勝手な事したのに
ユウは許して
優しいユウは
俺を落ち着かせる為に
俺を安心させる為に
キスしてくれたんだ
「行って来るな?ちゃんとベッドで寝ろ」
行かないで…
って…言いそうになる
馬鹿げてる
けど…何か…ユウの……
「………ハンカチ…」
「?…ハンカチ?」
俺のハンカチを渡して
ユウのと取り替えてもらう
「俺が…これ持ってけばいいの?」
頷くと
「分かった。行って来るな?」
もう一度、ユウが頭を撫でてくれる
「……~~っ!」
なんで…
ただ頭撫でられてるだけなのに
ユウの手から
何か出て
俺の体の中に入ってくるみたいだ
穂積の家の匂い
そこに、ほんの少し混ざってる
ユウだけの匂い
安心する…
ユウが傍に居る様で
いつの間にか、ぐっすり眠ってた
寝ても寝ても眠くて
適当に朝だか昼だか分からないご飯食べて
また眠ってた
「はあっ!…シュウ…首っ…やっ…!」
俺の痕…いっぱい残さなきゃ…
「ん~~っ!…なっ…舐め…ない…でっ…」
俺と同じ男で、同い年
けど…
全然違う
ボタンを1つずつ外してく
「シュ…シュウ…?」
「見ても…いい?」
「いっ…けど……見て…ど…すんの?」
「触れて…キスして…いい?」
「?……シュウが…したいなら…いいけど?」
いいんだ
俺がしたいならいいんだ
ずっと触れたかった…
ユウ…
ここ…触れるね?
「?!」
「大丈夫?」
「大丈夫…だけど…変な感覚…」
「キス…するね?」
ああ…
ずっと触れてキスしたかった
可愛い
「なんっ…かっ……シュウっ……」
「ん…?」
「なんか…はぁっ…変っ……ぁっ…変っ…」
「気持ちいい?」
「きっ…もち?……ゃっ…分かんなっ…ぁあっ!」
「今度…こっちね?」
「え?…んやっ!…シュウっ…~っ…変っ…変なのっ…!…体っ…変っ…だからっ…!」
「もっと…変にしてあげる…」
「んやあ~~っ!」
はっ…
夢…
俺……なんて夢……
……勃ってる
だって…
ユウの…あんなの見ちゃったら…
「はぁっ…はぁっ…んっ…」
ユウ…
ユウ…
コンコン
!!!
「シュウ…具合どう?」
ユ…ユウ?!
そっか…
もう、学校終わる時間…
ど、ど、ど、どうしよう…
こんな状態で、今入られたら…
「また、後で来るな~」
小さな声が聞こえて
ユウの足音が離れた
あ…
ユウの声聞いたら…
「……っ!…っ!」
ダメだって
ユウがそこに居るのに…
?
階段…下りる音聞こえない?
耳を澄ませてると
階段を下り始め、玄関のドアが閉まった
はぁ~~っ…
シャワー…浴びよ…
シャワー浴びたら浴びたで
また思い出して
そもそも全然収まってなかった訳で…
「…はっ…」
ユウ…
ユウの…胸…
キスしたい
「……はぁっ……はぁっ…」
ユウの…
辛そうで気持ち良さそうな顔…
見たい
「…はっ…あっ…!」
ユウの…
辛そうで気持ち良さそうな声…
聞きたい
「……んっ…~~っ!……ユウ!…あっ…!」
イク!イクイク…
ガチャ
…………………え?
「シュウ!どうした?具合悪いのか?」
ユウ……
え?
何で…
え?
「…………え」
「どうした?苦しいのか?どっか痛い?」
なっ…
なんでユウがここに?!
ってか…
俺…イク寸前で…
こんなの…
絶対見せられない!!
「~~~~っ!…違っ…来るな!」
「なんだよ!苦しそうな声出して、俺に助け求めてたろうが!」
苦しそうな声?
助け?
違う!
ユウでイキそうだったんだ!
そんなのお構い無しで
ユウが靴下を脱いで、風呂場に入って来る
「怪我したのか?見せてみろ!」
「やっ…やめろ!来るな!」
「何でだよ!そんな大怪我なのか?!だったら、さっさと病院行くから!」
「違う!違うから!見るな!」
「何カッコつけてんだよ!!」
本気だ!
ユウは、本気で心配してる!
こんなん見せられるか!
なのに…
俺の腕の間をすり抜けて来た!
終わった
全て終わった
こんな姿…
今度こそ終わりだ
「?……どこ怪我したんだ?」
「~~っ…だから…どこもっ……怪我してないっ…」
「え?…なっ…なんで…じゃあ、なんで泣くんだよ?!…って…ん?」
「~~~~っ…!」
気付かれた
びっくりして
軽蔑される
でも…優しいユウは…
きっと頑張って笑顔で、大丈夫だとか言うんだろな
でも…それで終わりだ
「シュウ…ほんとに、正直に言って。どこが具合い悪いんだ?なんで苦しそうな声出した?俺に助け求めたんじゃないのか?」
「…………え?」
あれ?
なんか…反応が……
思ってたのと違う
「ユウ……何にも…思わないのか?」
「何にもって何だよ?さっきから一生懸命心配してんだろが!」
「や…そうじゃなくて…」
「?…そうじゃなくて?」
あれ?
ユウには…これ…見えてない?
この…気持ち悪い位になってる
俺の股間の辺りだけ
何かモヤでもかかってる?
「えっと…シュウ…とりあえず、何でもないなら、ちょっとタオルと服借りてっていい?四葉、家で待ってるから」
「あ…ああ」
「ほんとに、何でもないなら、四葉待ってるから、俺ん家来てよ」
「……後で…行く」
あ…あれ?
なんか…
気を遣ってるとか
優しいとかじゃ…なくない?
さっさと着替えて
俺の着替え持って来たユウが
出て行った
あれ?
でも…とりあえずこれ…
なんとかしよう
せっかくユウが普通にしてくれたのに
俺が気にするのも、逆に気まずくて
ユウの家に行くと
四葉が、喜んで出迎えた
俺の服をユウに貸したのが
大変お気に召された様子
「悪いシュウ…ちょっと着替えて来るから、代わってもらっていい?」
「ええ~~~~っ!!やだ!」
珍しく四葉がして欲しいと言うのに負けずに、着替えたがってるユウ…
ちょっとした兄妹喧嘩?を見守ってると
ほんとに大きかった
「悪い…」
そう言ってユウを見た時
気付いた
俺の付けたモノじゃない
気を付けてって…
言ったのに
「いや…シュウが悪い訳じゃないけど…」
でも…
俺が文句言える立場の人間じゃない
ユウは…
そこまで嫌がってないのかもしれない
今日は、どんな状況で?
今日は、ユウも許したの?
俺の上に付ける事……
ユウが着替えて来て
休んでろと言われてソファーに座ると
「シュウ君…」
「何?」
四葉先生の話が始まった
ユウに俺がキスマーク付けたのバレてた
しかも、カマかけられて
アッサリ白状してしまった
ってか、俺とユウが付き合う前提で話してる
「落ち込んでる場合じゃな~~い!犯人特定して、さっさと排除する!」
「いや…四葉…ユウは、どう思ってんのか分かんないだろ?」
「四葉より大切な用事じゃないって言ってたもん!」
「え?」
「シュウ君は、四葉より大切だもん!シュウ君の方が勝ってるから!」
「四葉……」
これは…
ちょっと…
結構…嬉しかった
どういう意味だとしても
1番大切な兄妹より大切だって
四葉の目から見て
そう見えるなら
それは凄く嬉しい
「大丈夫!何があってもシュウ君は特別だから。シュウ君との違いに気付いた時、ユウはシュウ君のものだよ!」
四葉の言葉は嬉しい
けど…
ユウが今まで可愛いね…
って言ってた子達は
ユウより小柄な…
勿論、全員女の子達だ
ユウより大柄な男の俺を
そういう対象として見る日は
来ないと思う
「四葉としてはね?撮影を通して、シュウ君の気持ち…伝えて欲しいのと…ユウに、ああいう事するのは、シュウ君だけだよって、インプットさせたい」
そんな作戦まるで意味ないだろう
俺が辛くなるだけだろう
そう思うのに
ユウと…少しでも触れ合えるという欲望に
敵わない
「シュウ君は、ユウの左手握りながら、ユウの顔のそっち側で、首にちゅ~してね?」
「分かった」
ユウの…手…
この手にも…キスしたい…
「シュウ君、手の握ってる感じね、色々撮りたいから、適当に動かしてくれる?」
「分かった」
この手…握り合ったまま…
ユウを気持ち良くさせてあげたい
ユウの首に…
キスをする
「…んっ…はあっ…!」
「ユウ…頑張ってね~。なるべく、こっちね~」
ユウが、もっとキスしてとでも言う様に
首を反らせる
「シュウ君、そっちの位置のままで、何ヵ所かキスしてくれる?そんなに大きく位置変えなくていいから」
「分かった」
「んぁっ…!」
吐息に反応した?
「ユウ…大丈夫?」
「まだ…だいじょぶ……早く…終わらせよ…?」
「…分かった」
ああ…
夢の中みたいに
ユウを…
気持ち良くさせてあげたい
俺が気持ち良くさせてあげたい
撮影を通して
俺の気持ち…伝える…
こういう事するの…
俺だけだよ…
「…ん~~っ…!…ぁっ…!…~~っ…!」
「ユウ…時々こっち見てね~」
「あっ…ごめっ…」
「いいよ~…そのまま、そのまま~」
ユウ…
インプットしてくれる?
こういうの…俺だけって…
インプット…してくれる?
首筋のキスの上を舌で伝いながら
握ってた手の平を、つ~~っと指先でなぞると
「はうっ…!…あっ…~~っ!」
もっと…もっと…
聞かせて…
「いい!それ!オッケー!いいの撮れました!」
「はっ…はぁ~っ…」
終わっちゃった
「ユウ…大丈夫?」
滲んできた涙を指で拭う
「大丈夫。もう限界だったけど」
ユウを起き上がらせると
襟元から、新しい印が見える
「ありが…んっ…!」
思わず…
触れてしまった
「………大和の準備…しなきゃな…」
「……うん」
現実は…
そう…上手くはいかない
ユウの部屋に行き…
すっかり疲れてベッドに横になったユウに
話し掛ける
「……ユウ…また…付けられたんだ…」
「~~っ…ごめん…その…」
「別に…ユウが俺に謝らなきゃならない事はない」
「そうかもだけど…」
普通の幼馴染みで親友は
こんな時
何て言うだろう…
「ユウが…嫌じゃないなら…問題ない」
「いや…嫌も何も…」
「でも…ユウが嫌だったり…困ったりしてる時は言って」
「シュウ……ありがと」
これで…
合ってる?
「ユウ…」
「何?」
「そういう事…してくるの、その人だけ?」
「そうだな」
「その人…それ付ける以外…ユウが怖くなる様な事してこない?」
「こない」
「そっか…」
ユウが気にしてないなら
ユウが怖い思いしてないなら
いいんだろう…
俺のモノ…付け足したいけど…
触れようとして、手を戻す
「俺…帰る」
「…そっか」
「じゃあ…」
立ち上がったところで
ユウが聞いてきた
「シュウ…そう言えば…シャワー浴びてた時のは、何だったの?明らかに苦しいとか…痛いとかって感じにしか聞こえなかったけど…」
ほんとにユウは気にしてないんだ
たまたま…なんでか…見えなかった?
それとも…
俺のなんか、ああなってても興味ない?
「………何でもない」
「俺…来てるの知らなかったろ?なんで俺の名前呼んでたの?」
ユウで…イキそうだったから
いつも、ユウでイッてるから
「………ユウ…は……誰かの事…考えるのかな…」
不思議そうな顔で見ているユウを置いて
俺は家に戻った
辛い…
ユウの傍に居て嬉しい気持ちと
ユウの傍に居て辛い気持ちと
交互にやってきて
おかしくなりそう
朔兄が、心配して見に来てくれた
朔兄…
俺…
どうしたらいい?
ユウの傍に居るのと
ユウの傍から離れるの
どっちも選べないよ……
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