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鍵谷

「お待たせ、シュウ」 「ん…行こ」 今日… 朝、来てくれないんじゃないかって思った 来てくれたけど… ちょっと元気ない 「シュウ…昨日…ごめん」 「え?」 「俺は…よく分かんないんだけど、大和に聞いたら…大和が同じシチュエーションでも泣くかもなって言ってたんだ」 「え…大和に……」 「あ…ごめん。俺、やっぱりシュウの事が心配で…大和に相談しちゃったんだ」 「そっか……ユウ…俺の事、気持ち悪いとか…思わない?」 気持ち悪い? 泣いたから? 「シュウが泣いて、ちょっとビックリしたけど、気持ち悪いなんて思わないよ」 「そう…」 「それより俺…おかしいんだと思う。普通…中学生になったら、ああいうの、分かってる事なんだろ?大和も、少し心配してた。俺も……病気なのかと思って…少し怖かった…」 「ユウ…」 命に関わる病気じゃないとしても 入院しなくていいとしても 病気は、周りの人達を不安にさせる 「シュウは、いつ、どうやって知ったの?」 「俺も、6年の時に朔兄に教えてもらった」 「そうなんだ…クラスの皆も、知ってるんだろな」 「知らないからって、そんな悩まなくてもいいと思う…」 「でも、大和も言ってたけど、知らないせいで、シュウ泣かせたから…やっぱり皆が知ってる事、知っておきたい」 「俺が泣いたのは…あまり気にしないで…」 気にするよ! シュウが泣くなんて 「でも…正直、まだよく分かんない。なんか、大変そう。凄く苦しそうだし…なんで、あんなのしなきゃなんないのか…」 「……そっか…なんか…少し安心した」 「えっ?俺が分かんないのに、安心したの?」 「ユウは、分かんないから、何とも思わなかったんだな?」 「分かんなくても…分かんないから、心配したんだってば」 「うん…ありがと」 分かんない… 益々分かんなくなった でも、シュウが少し元気になった なら、いっか 教室で、改めて周りを見る う~~ん… 皆…あれを知ってるのか あれを…やってるのか… 「え?穂積?何?そんな見て…」 あれを… 「え?穂積?なんか…どこ見てんの?」 あんな風に… あいつも… あいつも… あいつもか… 「気を付けろ!穂積が、なんかエライとこ見てくんぞ!」 「え?なっ…?!なんで、そんな怖い顔して見てくんだよ?」 「ちょっと!穂積、こっち見んな!」 まさか、そんな事になってたとは… 大和は、大丈夫だよって言ってたけど ここまでって事は、続きがあるって事で 俺が、ほんとに大丈夫なのかは、まだ分からない けど… あれを、ちゃんと覚えたとして 俺が自分でやるのか? やらなきゃやらなくてもいいのか? 「はぁ~~…」 蓮は、しょうがない 結叶… そんな、ぽやっと生きてたか? 皆と同じ様に、順調に過ごしてきたはずなのに… 「…マジで?!」 あ… 郁人兄ちゃんの声… 「マジマジ。ほんと、ヤバかった」 「うわぁ~…調子良くなってくるとなぁ…」 「そう、それ。弱ってる時は、問題なかったけど…」 「郁人兄ちゃん?」 と…誰? 「蓮。今日は、調子いいのか?」 「うん。郁人兄ちゃん…お友達?」 「そ。(さとる)は、怪我して入院してるの。智、こっちは蓮。俺と同じく入退院繰り返してて、もう長い付き合いなんだ」 「そうなんだ…こんにちは」 「こんにちは…」 おっきい… ここ、中学生までしか居ないはずなのに ほんとに中学生? 郁人兄ちゃんの後ろに隠れる 「お?警戒されてんな~」 「智は、デカイからな。ちょっと怖かったか?」 「郁人兄ちゃんと、同い年?」 「そうだよ?怖くないよ?」 郁人兄ちゃんが、頭撫でてくれる 「智…兄ちゃん…足怪我したの?」 智兄ちゃんが、松葉杖を置いて 傍の椅子に座ってくれた 「足の骨、折って、手術した。もう、だいぶ動けるけど」 「手術…出来たなら、大丈夫だね?」 「え?…ああ」 俺は… ほんとは、もう1回した方がいい手術 出来ないんだって言ってた 郁人兄ちゃんも 「でも、いてぇぞ?手術」 「俺、痛いの我慢出来るよ?」 「おお…偉いな?」 「蓮は、ほんとに我慢強くて、頑張り屋さんなんだ。な?」 「そ…そうかな…」 郁人兄ちゃんに褒められると嬉しい ちっちゃい頃から、何度も何度も入院、一緒になって 沢山知ってるから 3つ下の俺の事 ほんとの弟みたいに可愛いがってくれて ほんとに俺の事、いっぱい見てくれてるから 「なんか、ほんとの兄ちゃんみたいだな?」 「そうだな…家族と同じ位、ここには一緒に居るかもな?」 「うん」 「……そっか…蓮、兄ちゃんできて、良かったな?」 「うん」 智兄ちゃんとも仲良くしたいけど 怪我の人達は、出て行ったら戻って来ないから 「郁人兄ちゃん、さっき、何ビックリしてたの?」 「え?ビックリしてたか?」 「うん。マジで?!って、ビックリしてた」 「あ~~…えっと…蓮は今、小4か…分かるかな…」 大人の話… 郁人兄ちゃん、中学生になったら、凄く大人になった そして… 入院も多くなった 「大人の話だね?」 「うん…蓮さ、朝勃ちって分かる?」 「あさだち?」 「そうそう。朝起きた時、ここ、ヤバい事になってね?」 智兄ちゃんが、自分の股間の辺りを指差す 「智…ヤバい事が、分かんないから」 「あ…そっか。えっと…ここが…こ~~なってる事ないか?」 智兄ちゃんが、自分の指を 下から上向きにする 「ある」 「マジか!」 「それ、ヤバいの?」 どうするの? 郁人兄ちゃんを見ると 「智…教えるなら、ちゃんと教えてくれ。蓮…朝勃ちは生理現象だから、誰でも、なったり、ならなかったりするんだよ?ヤバくない」 「あ…そっか。悪い悪い。ヤバくない」 「ほんと?」 「ほんと。さっき、智がヤバいって言ってたのは、そうじゃなくて、そういう状態になっちゃうって話」 ? そうじゃなくて、そういう状態に… どういう事? 「蓮、マスターベーションって、聞いた事ある?」 「マスター…?ない」 「そっか。蓮も、中学生くらいになったら分かるかもな?自分でね、気持ち良くしたいって、思う様になるんだ」 「?…ふ~~ん」 自分で気持ち良くしたい? さっきまでの話と関係あるの? 「いや、ほんと…看護師さんに、直接じゃなくても触られたり、見られたりしたら、マジ!ヤベェからな?知らない方がいいぞ?」 「知らない方がいいの?」 「ここに入院してるうちは、絶対知らない方がいいぞ」 「分かった」 「智…お前の考えを押し付けるな」 知らない方がいいなら、いいや だって… マジ、ヤベェなんでしょ? じゃあ、知らないままでいいや 「あっ!!」 もしかして、俺…あれが記憶に残ってた? いやいや、前世の記憶なんて、思い出したの、つい最近で… 「でも…」 思い出せる物が、どっかにあったなら 無意識のうちに… 俺、そういうの知らないままでいようとか、思ってたのか?! 「お~~い!穂積~?この前、階段から落ちた後遺症か~?保健室行くか~?」 え? あ…授業中だった 「先生~。なんか、穂積おかしかったで~す」 「授業始まる前も…なんか…色々ヤバかったで~す」 え? 「何?穂積、ヤバいのか?保健室行くか~?」 保健室! 行かない! 色々と…行きたくない! 「いっ…行かないです!大丈夫です!」 「ほんとか~?何がヤバかったんだ?」 「…言えませ~ん」 「は?言えないって何だ?」 「ちょっと俺の口からは言えませ~ん」 「は?穂積…お前…何したんだ?」 「別に…何も…」 皆を観察してただけ 俺が知らない事を知ってるであろう皆を… 「あ~~…とにかく、何でもないなら、ちゃんと授業聞いとけ」 「はい。すいません」 前世の事、思い出しちゃうと 時々…向こうの世界に意識が、持ってかれる こっちの世界を忘れてしまう 思えば、あの時の郁人兄ちゃんと、智兄ちゃんは、中1だった 郁人兄ちゃんだって、小さな頃から、ずっと入退院繰り返して、全然健康な方じゃなかったのに、知ってたんだ 郁人兄ちゃんは… 中3の終わりに亡くなった 俺も、おんなじ病気で 一緒に頑張ろうね?って言って ずっと一緒に頑張ってきた郁人兄ちゃんが死んで だいたいの、自分の寿命が分かった 今日の体育は、外でサッカー だけど… 「先生、俺もう大丈夫です」 「まあ…普通に動けてるしなぁ…走ったりする位なら、参加させてやりたいが、球技はちょっとなぁ…先生もヒヤヒヤして寿命縮む」 「……分かりました。見学してます」 もう、痛みもだいぶ無くなったのに 仕方なく、座って見学してると 「穂積…」 「…鍵谷(かぎや)!入院して、手術したって聞いた。大丈夫なの?」 鍵谷は、小学校と去年、同じクラスになって、今は隣のクラス 「盲腸だから全然大丈夫。まあ、一応体育は見学だけど」 「お帰り。退院おめでとう」 「ありがと…ってそれより!」 急に鍵谷が、身を乗り出して話し出す 「穂積に、入院生活の注意点、ちゃんと聞いとくんだった~!」 「注意点?静かにするとか?」 「じゃなくて!もう俺、入院とか初めてだから、あんな事されるとか…全然知らなくて…ほんと…マジでヤバかった」 出た! マジでヤバかった 「えっと…?」 「手術行く前にさ、この辺の毛剃られて…それがさ、すっごく若い訳じゃないけど、結構綺麗な看護師さんでさ……俺…ほんともうヤバくて…やめてってお願いしようかと思ったけど…それも恥ずかしくて……ヤバい状態になってんのに、看護師さん、特に何も言わずに剃ってるし…ずっと半泣き状態で堪えてた」 智兄ちゃんが言ってたやつだ 看護師さんに触られたり、見られたりで マジでヤベェ…のやつだ 「でも俺、大きくなってから手術とかしてないから、そういうのは分かんないかな」 「あ、そっか……って、穂積、小さい頃に手術した事あんのか?」 「え?!あ……すっごく昔…小さい手術ね…」 「へぇ…大変だったな…」 「もう…昔の話だから」 すっごく昔ってか…前世でね 俺達にとっては、小さい傷の手術ね 「んでさ、聞いてくれよ!手術から帰って来たら、オシッコの管なんて物、勝手に入れられてたんだよ!」 「ああ…動けない間ね…楽だよね?」 「楽なもんか!ずっと、すっげぇ違和感で、オシッコしたくてオシッコしたくて、頭おかしくなるかと思った」 「へぇ…そうなんだ」 蓮の時は、何度も入れられたけど そんな風に思った事なかったけどな… 個人差があるのかな 「穂積、入れられた事あんなら、分かんない?あの違和感!」 「俺は…あんまり感じなかった」 結叶じゃなくて蓮だけど 「マジで?!もう…狂いそうになって、なんとか頼みこんだら、ベッドの上で、尿瓶(しびん)でするなら、管抜いてやるって言われて……何?その究極の選択…イジメでしかない…」 「でも…まだ動くの大変だったろ?そっちのが楽じゃん」 どっちも、物凄くお世話になりました 「楽じゃなくても!どんなに痛くても!自分でトイレでしたいの!なのに…~~っ…仕方なく、尿瓶でいいって言ったら……目の前で、下着下ろされて、モロ出しされて……絶対俺が我が儘言ったから、こんな仕打ちを…とか思ってたら、管抜かれるの、痛いのなんのって!」 「ああ…結構痛いよね?でも、入れられる時よりマシだよ?」 「えっ?!そうなの?!」 「うん」 だって、抜く時なんか一瞬だもん 入れられる時は、ゆっくり異物が入ってくるんだもん 「……流石だぜ、穂積…俺が騒いでる事なんて、とっくに乗り越えてたんだな?すげぇよ」 「え?いや…俺は全然…」 そういうの分かんないから 全然ヤバくないんだよ 「でも、ちょっと入院してただけで、だいぶ体力落ちるもんだな?」 「うん…そうだね?」 「穂積?……大丈夫か?なんか、顔色悪いぞ?」 「ちょっと…暑いだけ……」 「たしかに、この天気はヤバい。今日、見学でラッキーだわ」 ジリジリ照らされて だんだん、ぼ~…っとしてくる これは…そろそろヤバいかも 「俺…ちょっと……日陰行く…」 「おお。俺も避難しよ」 クラッ… 「おい!穂積、大丈夫か?」 「ん…日陰行って…休めば大丈夫…」 「ほんとか?ほら、掴まれ」 「大丈夫…鍵谷…退院したばっかだから…」 もうちょっと… あの木の下まで… 「大丈夫だから、ほら!掴まれ!」 「大丈夫…」 手術するって、体力いるんだ 体力使って… 病気は良くなっても、動くの大変なんだ… もうちょっと… 着いた… ドサッ… 「っ…!」 思いっきり、背中から寄りかかっちゃった 「大丈夫か?!先生呼ぶ?」 「大丈夫…ちょっと…休も?」 「ほんとか?ほんと、大丈夫?なんか出来る事は?」 「ちょっと…肩…借りていい?」 「肩でも何でも貸す!」 「ありがと…」 大丈夫 だって、今回の俺…健康だから 少し休んだら良くなる 「お母さん、1回家帰るわね?」 「ゲホゲホッ…やだ!」 「じゃないと、お父さんも、実奈も困るでしょ?」 「やだやだっ…ゲホゲホッ…やだ~~!ゲホゲホッ…」 あっくん… 入院慣れてないから寂しいんだ 「あっくん、お母さん戻って来るまで、お話してよう?」 「うっ…ゲホゲホッ…お話っ…て?」 「優しい看護師さんと、怖い看護師さん、教えてあげる」 「えっ?!…怖い..ゲホゲホッ….聞く!教えて!」 「いいよ」 「じゃあ、お母さん行って来るね?」 「うん。バイバイ」 「もう!蓮君、ありがとう」 「そっか…じゃあ…ゲホゲホッ…クルクルの奴が1番怖いんだな?」 「朝起きたら、すぐにお熱計っておくんだよ?」 「分かった」 怖いって言うか… なんか…早くしなきゃダメな感じなんだけど… あっくんと、色んな話をしてると… 「え?あっくんも、心臓の手術した事あるの?」 「うん。今回は…ゲホゲホッ…喘息だけど…」 「どんなの?どんなの?」 「なんか…ゲホゲホッ…心臓のお部屋が1つ、足りないって言ってた」 「え?!おんなじだ!ほら!」 パジャマを捲って、傷を見せる 「ほんと?!おんなじ~……ゲホゲホッ…れん君の傷、綺麗だね?」 「だって、生まれてすぐだもん」 「生まれてすぐと…2歳位の時、しなかった?」 「2歳?……したのかな…?」 「きっとしてるよ?それから僕…ゲホゲホッ…元気になったって言ってたもん!」 そうなんだ 確かに、あっくんの傷は 僕のより大きくて、僕のより綺麗になってない 「あっくん…入院してなさそうだもんね?」 「うん。あんまりしてないよ?」 「……そうなんだ」 僕も、もう少ししたら あっくんみたいに元気になるのかな? 「お母さん」 「何~?蓮」 「僕、2歳位に手術した事ある?」 「え?…ないよ?」 「あっくんね、僕とおんなじで、心臓のお部屋足りないんだって。2歳位に手術してから、元気になったんだって。僕もそれ、出来るかな?」 「……蓮……蓮……」 あ… なんか…聞いちゃダメな事だった お母さん、泣きそう 「お母さん…眠くなってきちゃった…」 「え?…眠い?ちょっと…休もっか」 「うん…お母さん、帰っても大丈夫だよ?」 「蓮が眠るまで居るよ?」 「うん…」 こういう時… 甘えると、お母さんは、少し安心する 「郁人兄ちゃん…」 「蓮…来てたんだ…久しぶり」 「久しぶり。今回はね、風邪引いたら、苦しくなっちゃって、紫になった。郁人兄ちゃん、まだ苦しい?」 「酸素してもらったから…だいぶいいかな」 郁人兄ちゃんのお鼻には、酸素のチューブが付いてる 俺も郁人兄ちゃんも、何度も付けてきたから、もうお友達みたいなものだ 「郁人兄ちゃん…2歳頃に手術した?」 「え?」 「あっくんね?2歳頃手術してから、元気になって…あんまり入院しないんだって。僕はしてなくて……多分僕は…それ……出来ないんだと思う」 「蓮……お母さんに…聞いたの?」 「お母さんに聞いたら…泣きそうになったから…」 泣きそうって事は お母さんが悲しむって事は 俺が元気で居られないって事 元気になる手術出来ないんだ 「蓮…俺も…手術してないよ?」 「そうなんだ…」 「蓮…でも俺…もう小学4年生だよ?」 「え?」 「蓮と同じ…元気になる手術…出来てなくて…こんなに入院してても……小学4年生にはなれるよ?」 「……うん」 「まだまだ…生きれるよ?俺…まだまだ生きるから…蓮は…もっと小さいんだから…もっと…生きれるよ?」 「…~~っ…うんっ…」 郁人兄ちゃんも、思ってるんだ その手術出来ないから 早く死ぬんだって思ってるんだ だから僕も…… 早く死ぬんだ… 「…っ……っ……」 「穂積…穂積…」 「…っ…え?……あ…?」 「大丈夫か?」 「あ…あれ?鍵谷…」 何で俺、鍵谷の胸にしがみ付いてんだ? 「大丈夫か?穂積…」 鍵谷が俺の涙拭いてくれる 泣いてた… あ…そうだ… 郁人兄ちゃんの事……結構思い出して…… 「~~~~っ…」 「え?!穂積?なんで泣くの?」 「~~っ…ごめっ…」 ヤバいヤバい… 思い出すな あの記憶は…ヤバいんだって 「ちょっと…どうした?」 「んっ…ごめっ…」 鍵谷が、胸に抱き締めてくれる 鍵谷、退院したばっかりなのに 「もっ…泣き止むからっ…ごめっ…」 「夢?悲しい夢だった?」 「んっ…~~っ…ごめんっ…鍵谷っ…」 「そっか。夢なら、いいや。具合悪くなったりしたのかと思った」 「違っ……ごめんっ…」 あの時は…よく分かってなかった ただ…早く死ぬんだって思って 泣きそうになってただけ 俺より年下の子達が増えてって 後から気付いた 郁人兄ちゃんの優しさと覚悟 多分郁人兄ちゃん… 勿論、自分と家族の為だけど 俺の為にも…最後まで頑張ってくれた… 「~~っ…ごめんっ…」 郁人兄ちゃんだって 苦しくて 怖くて まだ…小4だったのに… 「え…なんで2人抱き合ってんの?」 ? 「お前ら…そういう関係だったのか…」 「違う!」 あれ? 皆の声… 振り返ると 「うえっ?!穂積?!」 「なんで泣いてんの?!」 「うっ…何でもない…」 「いや!何でもない訳ないだろ?!」 「ちょっと…鍵谷何した?!」 「はっ?!俺は、慰めてただけだ!」 あ… 鍵谷が責められてる 離れなきゃ… 「鍵谷は関係ない…慰めてくれただけ…」 「お~~い!お前ら、どうした~?」 「先生~~!ここで不純同性行為が行われてま~す!」 「ああ?何言って……んなっ…?!なんで穂積泣いてんだ?!え?…鍵谷…なんで、そんなくっ付いてんだ?」 「いや、だから…」 先生まで鍵谷… 「俺が…っ…具合悪くなって…木陰に来て…っ……鍵谷の肩借りて…寝たら…~~っ…夢っ……見ちゃって…うっ……泣いて……鍵谷っ…慰めてくれただけっ……」 「あ?具合?大丈夫か?」 「大丈夫っ…ですっ…」 「まあ、天気いいからな。木陰で休んだのは偉いが…そんな泣く位の夢見る程…ガッツリ寝てたのか…一応…授業中なんだがな…」 「ごめっ…さいっ…」 郁人兄ちゃんは、俺より先に死んだ 今度は、健康な体で、何処かで生きてるかな 「まあ、いい。鍵谷も、病み上がり大丈夫か?」 「俺も、木陰に避難出来たから大丈夫です」 「そうか。よし、そろそろ終わりだ。教室戻れ~」 凄く細かい事まで思い出したりするのに 場所の名前や、時代?どれくらい前かを知る様な事は、全然思い出せない あんなに入院してた病院の名前すら… 立ち上がり、鍵谷と歩き出す 「鍵谷…ごめん。俺のせいで鍵谷、嫌な思いした」 「全然。俺が入院の話なんかしたから、小さい頃の入院とか手術とか…思い出させた?ごめん」 「鍵谷……入院してた時の事ね…今の事じゃないのにな?」 「けど…夢の中では、その時起きてる事だろ?やな事思い出させたな?」 「ううん…やな事じゃないよ。悲しかったり…寂しかったり……色々あるけど……全部大切な事なんだ」 郁人兄ちゃんの事、思い出せて嬉しかったから 忘れてたのが、寂しかったから 「穂積は、体弱いけど、強いな?」 「えっ?……強い?俺が?」 「うん…昔から思ってた。よく、体調崩したり、入院したり、さっきみたいに、体育見学したり…俺だったら、なんで俺だけ?とか、もうやだ!とか思っちゃいそうなのに…穂積、いつも楽しそうで、皆に優しいから…凄く強いんだなって思ってた」 それは…… 凄く嬉しい 強いだなんて無縁だから 体じゃなくたって、強いは嬉しい 「ありがとう。でも、鍵谷の方が、ずっと優しくて強いよ?」 「そ…そっかぁ?」 「俺…小3の時の事…忘れてないよ?」 「……え?」

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