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優しいの意味

朔の隣に座る 「朔…ほら、来い。冷たくして悪かった」 「~~~~っ!…大和っ…」 キモっ… けど、我慢… 「ん…よく、頑張ったな?よしよし」 「んっ…っ…知らないっ…感覚っ…」 「ん、怖かったか?」 「少し…」 「大丈夫だ。今に気持ち良くなってくからな?」 「~~~~っ…ほんとにっ…やらなきゃ…なんないのか?」 「だって朔…こんなに怯えてるだろ?ユウは、もっと色んな事知らないし、シュウは俺みたいに声掛けれないぞ?」 こいつは、こう見えてシュウを溺愛 そして、ユウの事も、シュウには及ばずとも、かなり可愛いがってるからな これ聞いたら、絶対断れない 「~~~っ…分かった」 ほらな チョロっ… 「けどっ…絶対…シュウとユウには知られたくない……やる時は、俺の家だ。俺の家のが、誰も居ない。あと……あと……」 「何だ?」 イラッとすんな 女子か? お前は、女子なのか?! 「~~~っ…痛く…しないで欲しい…」 「あ?」 「恥ずかしいのは…しょうがない…我慢する…だから…せめて……痛くしないで…」 「努力はする…が、なんせ俺も、男は初めてだからな。もしも痛い事があったとしたら、それはそれで、シュウへのアドバイスとなる。だろ?」 「ほっ…ほんとに…努力はしてくれ!」 体離して、めちゃくちゃ真剣な顔で言ってくる 必死かよ お前が、少しくらい痛かろうと、怖かろうと、ケツの穴がどうなろうと、さほど問題じゃないが… 一応、シュウに、こうあるべきを教えてもらわねばならん 「分かってる。次は、ちゃんとローションも用意しとく。ユウにシュウがして欲しい事すんだから、故意に痛くなんてしない」 「ほっ…そっか」 「少しは安心したか?」 「おお……っはぁ~~…」 やっと落ち着いたと思ったら 長いため息吐き始めた ウッザ… 「どうした?」 「するって分かってたとしても…結構なショックだと思うから…ユウ…大丈夫かなと思って…」 「だから、お前が1番どうして欲しいか、シュウに伝えれるだろ?」 「……そうだな……ってかさ、ユウの為とは言え…お前、俺のケツに挿れれんの?」 「愚問だな。ユウの為なら、俺はどんな穴でも、何の穴にだって挿れれるぞ」 「………怖っ…キモっ…ってか、俺を何だと思ってんだよ!」 「(いつき)くん、頑張ってね!」 樹くん…良かったね 僕より、手術も入院も多いけど 僕が出来ない手術出来る その手術したら…元気になれるよ 「うん…行って来るね」 樹くんのお父さんもお母さんも 僕のお母さんも泣いてる 元気になる手術しに行くのに 手術しに行くんだから 笑って、行ってらっしゃいしなきゃ 「樹くん、行ってらっしゃい!」 ぎゅっと手を握ると 樹君は、にこっと笑って、手術室に向かった あ……手… シュウの手…握ってたから あの夢見たのかな そうだ すっかり忘れてた 樹君… 5歳位…だったかな… 同い年で、結構入院一緒になって 仲良かったんだった あの手術の後…樹君に会う事はなくて 元気になったんだと思ってたけど 樹君の両親や、俺の母さんが泣いてた意味… そういうの… 分かる様になっちゃって 多分…樹君は、死んじゃったんだと思う… 樹君にとって、リスクの高い手術だったんだ 行って……来なかった… そんな子達が、何人も居た 「……ん…」 「おはよ、シュウ」 「ユウ…起きてたの?」 「俺も今起きたとこ」 シュウが、半分寝惚けながら、俺の頬っぺた触ってくる 確認する様に… 「泣いてないよ」 「……うん」 「居なくなってないし」 「うん……でも…夢…見た?」 「え?」 「ユウが…ぎゅって握って…目、覚めたから…」 え… 俺…そんな、ぎゅっと握った? 「……そうだった?」 少し視線をずらすと 「ユウ…」 「んっ…」 前髪避ける様に髪触れられて 視線戻された 心配そうな顔… 「分かった、分かった。見てた。けど、泣いてないだろ?」 「好きな人…とか?」 「え?」 「誰かと…手…繋いでる夢?」 「……ああ…違う違う……手は握ってた…友達…手術に送り出す時の夢だったから…」 「え?……あ…ごめん…」 「謝るなよ」 想像出来る訳ない こんな健康な世界にいる人が あの世界を… けど… 今だって、そういう状況の子… 居るんだろな… 「で?シュウの不安は?俺が居なくなるかもしれない事?」 ぎゅっぎゅっと手を握ると 「物理的に…じゃなくても……意識が…そっち行ってる時間…長いと……不安になる…俺…忘れられるんじゃないかって……」 「確かに、最初は訳分かんなかったから、夢なのか現実なのか、ごっちゃになってたけど…それでも、シュウを見たら思い出したよ?」 「うん……」 まあ… 寝起きにシュウ見て、びっくりしたりとか あったもんなぁ… 「あとは…夢見る度…ユウが辛い思いするのが……」 「辛い事だけじゃないんだってば」 「うん…」 「…シュウ、起きて何か食べよ?」 「うん…」 すっかり元気なくなっちゃったシュウを連れて リビングへ行く 大和、帰って来てないのか 「何食べよっか?」 「何でも…」 話さなきゃ良かったか? いや、でも…俺、絶対嘘バレるし レトルトパスタソースを発見し 2人でパスタを食べる 食べ終わって、食器洗っても… ち~~~ん… こりゃ、いかん! 「シュウ、外、散歩しに行こ?」 「え?いや…俺は…」 「行くの!天気いいし、行こ!」 「え…待って、ユウ…」 見飽きる程見てきた景色 2人で見てきた景色 「最近、ここのばあちゃん見かけなくない?」 「老人ホーム入ったって…」 「え?!そうなの?…っかぁ…」 「なぁ…いつもさ、天気いい日は、ここの庭にワンコ出てたよな?今日、居ないのかな?」 「息子さんが家出る時…連れてっちゃったって…」 「え…そうなの?」 なんでシュウ…そんな、ご近所さん情報詳しいの? …ってか! なんか、テンション下がる話ばかりなんだけど?! 明るい話題! 明るいネタはないか?! 「あ…神社……久しぶりに行こ?!」 「うん…」 全然近所なんだけど 幼い頃の俺達にとっては、ちょっと遠出で 階段登った上にある神社は 俺が調子良くないと行けなくて 俺達にとって、ちょっと特別な場所だった 「小さい頃…1段1段が高く感じたよな?」 「俺なんか、小さい頃から、シュウより小さかったから、もっと高く感じた」 「何度か、階段の途中で疲れて…座って景色見ながら話して…帰った事あったな?」 「あった、あった。でも、だからこそ、神社まで行くの、嬉しかったんだよな…」 あの頃は、ただの遊び場みたいに思ってた 「あ…お賽銭持って来なかった…」 「俺も…」 「ま、気持ちだからな?」 「うん…」 人の願いが叶うなら それはもう…無限大にあると思う パンパン 子供だから可哀想なのかって言われたら 大人の死だって悲しいし 病気だから可哀想なのかって言われたら 事故も戦争も、なんだって死は悲しいし 健康なら幸せかって言われたら 色んな悩みや苦しみ抱えてる人居るだろうし 何かを選んで願うなんて出来ないから 俺は今の俺にしてもらった事に感謝する 前回羨ましくて、やりたいと思ってた事 既に数えきれない位出来てるから 今回の人生が何歳までかは知らないけど 俺に出来る事 俺がやりたい事 生きてる間、沢山させてもらいます! それが出来る人生を与えてくれて ありがとうございます! 「ユウ…結構長かったね?何かお願い事?」 階段を下りながらシュウが聞いてくる 「ん~…決意表明と、お礼かな?」 「ユウ、何かするの?」 「さあ?何しようかなぁ」 「?」 何しようかなぁって考えれる幸せ 無限大にある可能性 奇跡みたいな人生 俺達が散歩から帰ると リビングに大和が居た 「大和、帰って来てたんだ」 「うん。2人で出掛けてたんだ?」 「ちょっと散歩」 「………神社にでも行って来た?」 「え~っ?!何で分かるの?!」 散歩って言っただけだよ? なんか、匂いとかした? いや、お寺じゃないんだから 「なんとなくね。2人の周りの空気が澄んでるって言うか…」 「…へぇ...凄いね、大和?そんなの分かるんだ」 「まあね。なんなら、他にも見える物言ってく?」 「いっ…?!言ってかない!聞きたくない!」 「俺は、ちょっと聞きたい…」 「お、シュウは聞きたいのか。こっち来い」 俺は、その手の話が苦手だ 1人でお風呂入れなくなり そういう日に限って、夜中トイレ行きたくなり 大和を起こす羽目になる 晩ごはん…今日はどうすんのかなぁ… 冷蔵庫、もう食材ないから、今日買って来るんだろうけど 近くに居たら、怖い話聞こえそうなので 離れて、風呂掃除を始めた 「ユウ行ったか…よし。シュウ…今日、ユウの部屋で何してた?」 「っ!!」 シュウが、ばつ悪そうに、視線を逸らす 「別に、責めてる訳じゃない。俺はただ、お前達2人が泣く結果になんなきゃいいんだ」 「……うん…ユウに…教えるって言って……俺だけ…イッた…」 「そうか。ユウも一応やってみたのか?」 「……やったうちに入らない」 「うっ…そうか…」 ズバッと言われたぞ? ユウ…一体どんなだったんだ? 「ユウ…~~っ…精液見て…びっくりして…俺が病気かと思って…心配してた…」 「………え」 「俺も…すぐに見なかったから、ユウに…触らせてしまった…ごめん…」 「え?ユウ…触ったの?」 「気付いたら触ってて…何してんの!って怒鳴っちゃったから…大変な病気だと思ったみたい…」 「……ユウ…想像の遥か上を行くな」 でも、そうか 自分で出すのも知らなきゃ 精液も知らないか… 知らないか? あれ? 俺、どうやって知ったんだっけ? いやいや、俺の事はどうでもいい 手強過ぎるなユウ… 「で…シュウがイッたの見て…何か態度に変化等は…」 「全然…病気じゃないの知って安心して…どうやって、オシッコと切り替えんの?とか、色々聞かれた…」 「………マジか…ユウ……で、シュウは、そんなのユウに見られて大丈夫なのか?」 「恥ずかしかったけど…ユウを見ながら……~っ気持ち良かった…」 「ふっ…そっか。シュウがいいなら、いいんだ」 可愛い奴らめ そんなの、俺に正直に答えるなんて 可愛い過ぎ 頭をポンポンとしてやる 「けど…あんま、そういう事した後、風呂も入らずに、神社とか行くもんじゃないぞ?」 「あ…そっか。分かった」 「シュウ…ユウと居て…辛くないか?」 「……辛い時も…あると思うけど…やっぱりユウと居たい…」 「そっか…」 じっとシュウが俺の顔見てくる 「どうした?」 「大和は…俺がユウの事…こんな風に思ってて…嫌じゃないの?」 感情表すのが得意じゃないシュウの困り顔 かわ… 「シュウだからな?嫌じゃないよ」 「…ありがとう」  ほっとした後 めちゃくちゃ可愛い笑顔見せた 写真撮りてぇ~~~! 四葉~~~! シャッターチャンスだったぞ~~~! その日の夜 コンコン 「は~い」 ガチャ 「ユウ、ちょっといい?」 「うん。俺も、大和と話したいと思ってた」 今日の事を? かわ… 「座っていい?」 「うん。あのね、今日シュウが来て…」 俺がベッドに座るなり、ユウが隣に座って、今日の出来事を報告しだした なんて可愛いんだ ちゅ~したい 「もうさ、ほんと俺びっくりして、シュウがとんでもない病気なのかと思ってさ」 「知らなきゃ、びっくりするよな?で、シュウがイッたとこ見て、ユウはどう思った?」 「精液出すの、行くって言うの?」 「そう。イクね」 かわ… 「シュウが、俺にイッていい?って聞いてきてたんだ。どういう事?」 「ん~…ユウと一緒に気持ち良くなってたから、自分だけイッていい?って事かな…」 あと、ユウをオカズにしてたから… 「そっか……なんか、シュウが俺の名前呼ぶのが、なんとなく分かった感じ。あの液体は、衝撃的だったけど、見ておいて良かった。俺からあんなの出たら、すぐ母さんに言ってたかも…」 「そっか。それで、シュウの事嫌になったりしてないんだね?」 「嫌に?ならないよ?」 「そっか。良かった」 良かった… 母さんに報告前に知れて 「で?結叶は、気持ち良くなれなかったの?」 「それどころじゃなかったよ」 「シュウは気持ち良さそうだったろ?」 「気持ち…いいなんだよね?うん…気持ち良かったんだと思う」 「あんまり、いいイメージない?」 「やっぱり苦しそうに見えるし…俺にとっては謎の液体だし…」 「ん…それを知れただけでも、成長だろ?」 こんな子が精通する日が来たら 盛大にお祝いしよう 赤飯炊いてもらおう 「クラスの奴らも、皆知ってるんだろな…大和は、どうやって知ったの?」 「ん~…どうだっかなぁ…多分、周りでそんな話聞く機会増えてって…なんとなくかな…」 「俺、そういう話聞いた事ないよ?」 「なんとなく、そういう話しそうな人とか、しても大丈夫そうな人、選んでするからね?そういう話が苦手とか、不快に思う人もいるから…」 「へぇ...…」 高校生位まで、このままで居て欲しい気持ちと 色んな事教えたい気持ちと あ~~~... なんで俺の弟、こんな可愛いんだろ… 「ユウ…誰かにキスしたいって思った事ある?家族にじゃないよ?」 「シュウにしたよ?」 「シュウ以外に、そういう気持ちになった事ない?」 「ない」 即答か 「もし、結構タイプの子に告白されたらどうする?」 「こっ…告白?!どっ…どうしよう?!」 「ふっ…ユウは、どうしたい?」 「どう…そりゃ…凄く嬉しいけど……だからって、どうしたらいいか分かんないし……大和は?大和は、告白された事ある?」 「あるよ」 「そっ…だよね?大和はあるよね?どうしたの?」「付き合う事もあるし、お断りする事もある」 「あ……」 ん? なんで、そんな悲しそうな顔してんだ? 「お断り……したら…泣く?」 って… ユウが泣きそうじゃん 「ユウ…おいで」 少し後ろに下がって、前を開けると 少しの躊躇もなく、俺の前に座る 後ろからユウの体を抱き締める 「泣く人も、泣かない人も居る」 「……そうなんだ」 「うん……結叶、覚えておいて?優しいの意味」 「優しいの…意味?」 ユウは優しいじゃなく 優し過ぎるから 「そう。告白されて、皆と付き合えたら、皆嬉しいし、幸せだよね?」 「うん」 「でも、気持ちがなきゃ、それは、凄く失礼な事だよ?」 「気持ち…」 「結叶がその時、ちゃんと好きじゃなくても、好きになれるかもとか、付き合ってみたいなと思ったなら、それはいいと思う。その子の気持ちに対して、ちゃんと向き合ってるから」 「うん…?」 ユウが、ちょっと首を傾げる 難しいかな… 「けどね、多分自分と全然合わないだろなと思ったり、他に好きな人居るのに、その子が可哀想だからって付き合うのは、その子の気持ち…大切にしてないって思う」 「うん…」 「その子が泣いたとしても、ユウのほんとの気持ち伝えるのが、1番大切。今はよく分からなくても、頭の片隅に入れといて?」 「………大和」 ユウが、クルッと振り返り 俺の上に乗っかって、抱き付いてきた 「ユウ?」 「大和…お断りして…泣かせちゃったら……大和も…悲しかったでしょ?」 「ユウ…」 「そういう時くらい…理由なんて言わなくても、俺に甘えていいよ…」 この子は…どこまで… 俺は、ユウみたいに優しくないから そんなに落ち込んだりしないんだよ? 俺が告白断わる度に甘えたら 結構な頻度だよ? 甘えたんじゃなくて 俺を甘やかす為に、抱き付いてきたのか 「ありがと。じゃあ…今までの分、まとめて甘えとこ」 「うん…大和…モテるから、何回もあるでしょ?人の好意…断わるって……頑張んないと出来ないよね?大和…沢山頑張ってきたね?」 そう言って、俺の背中撫でてくる 頑張ってんのかな あんま…気にしてないけど… その後…笑ってる顔見る位までは 気になって…見てたりするかな… そうなるまでは あんまり馬鹿みたいに 笑ったり出来ないかな 慣れ過ぎて 当たり前になってて そんなの考えた事なかった なんだ俺… 結構、頑張ってたのかな 「結叶…ありがとう」 「大和は優しくて、頑張り屋で…1番上の兄ちゃんだから、1人で頑張っちゃうから…」 「ん…ありがとう」 ユウに教えてやってんのに 逆にユウに教えられた 危うくユウを抱き締めながら 泣きそうだよ 「俺はきっと…動揺して…パニックになって…大和みたいに、格好良く出来ないと思うけど……うん。大和に言われた事覚えとく。ちゃんと…気持ち大切にして、自分のほんとの気持ち…伝えるって、覚えとくよ」 「うん。ユウなら出来るよ。で…甘えたくなったら、いつでもおいで?」 「うん…大和…大和が兄ちゃんで良かった」 「俺も、ユウが弟で…幸せだよ…」 ユウが綺麗だから 時々、一緒に綺麗な物を見せてもらう ユウが綺麗だから 時々、気付かない事を気付かせてくれる ユウが…弟で、良かった

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