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カプセルの中

ん… 俺、あのまま寝てたのか 朔のベッドか あいつの匂いがする って……は? これ… あいつの胸ん中?! なんで?! 「おい!離しやがれ!」 「……ん~~…」 「んむっ…!誰が抱き締めろと言った?!」 「……ん…いいよ…」 「何がだ!腰触んな!」 「ふっ…かわい…」 こんの…バカ朔! 動かせない腕の代わりに 足で、朔の足を蹴飛ばしてやる 起きろ!起きろ!このバカ! 「ん…痛いって……え?」 やっと腕の力緩めやがった 「バカ朔!」 「うわっ!なんでお前、俺にくっ付いてんだよ?!」 「それは、こっちの台詞だ!なんでお前も寝てて、俺をホールドしてた?!」 「此処は俺のベッドだぞ!俺が寝て何が悪い?お前が勝手にくっ付いてたんだろが!」 「ああ?俺が何故そんな事しなきゃならん?」 ったく… さっさとベッドから下りる 「じゃあな!変態!」 「ああ?!変態はお前だろが!さっさと出てけド変態!」 とっとと上着を着て部屋を出る あいつは、この2家族の中で異質だ だから、優しく接する必要がない そして…別に、どんな俺を見られたところで、どうでもいい この上なく可愛い弟と妹に恵まれ 忙しいけれど、優しい両親に恵まれ 最高の家族と暮らして 幸せでしかない ただ… 同じ時期に、同じ様に、兄ちゃんになってった 気の遣わなくていい幼馴染みと2人きりは 気が抜ける だからなのか… 朔の前では泣ける 今はもう…泣く事ないてないけど… 人前で寝たりなんかしないのに 朔の前でなら寝れる 泣き顔見られようが 寝顔見られようが ちょっと疲れたり、弱いとこ見られようが 復活したら いつも通り、俺のが上だ どんだけ何があろうと 俺達の関係が変わる事なんてないって、知ってるから 俺は、あいつの前では自由で居られる にしても、いつもと同じ位の時間に、ちゃんと目覚めて家に帰る俺、凄過ぎない? 「ただいま~」 リビングに入ると 丁度、撮影が終わって、撮った物を確認していた四葉姫が、駆け寄って来た 「大和~!大和、大和~!」 「ただいま、四葉。今日も満足か?」 「うん!……あれ?大和、シュウ君の家の匂い」 「流石だな?四葉。ちょうど朔と一緒になって、少しの間、あの馬鹿に付き合わされてた」 「えっ?!何を?!朔兄と?何を?!」 目を輝かせて聞いてくる 「四葉…俺と朔とでも、四葉が喜ぶ様な妄想が出来んのか?」 「もちろん!イケメンは、なんだって許されるんだよ?」 「イケメンね~…四葉の中では、朔もイケメンなの?」 「うん!大和は、超絶イケメンだけど、朔兄はイケメン」 「ふっ…そっか」 可愛い あいつをイケメンだなんて、視力?認識力?大丈夫かなって思ったけど ちゃんと俺に劣ってる事は、理解しているらしい 「大和、ご飯の準備するね」 「ユウ、ただいま。ありがと」 ユウ…最近シャツを着させられての撮影多いな シュウ…一体お前は、どんな気持ちで撮影してるんだ? シュウの隣に座ると、四葉も隣に来た 今日の撮影が、いかに、どんな所が素晴らしいか 何故、このポーズが今必要なのか 色々語り出す 楽しそう…幸せそう… 一通り喋り尽くすと じ~…っと、俺とシュウを見始めた 「四葉…俺とシュウでもいけるのか?」 「う~ん…ない事はないけど…やっぱり違うなぁ…」 「ちなみにシュウはイケメン?」 「シュウ君も、超絶イケメン!」 「超絶イケメン同士でも、上手くいかないんだなぁ?」 「相性大事!やっぱり大和には朔兄!」 「うぐっ…朔かぁ…」 四葉の妄想の世界だから、いいんだけど せっかくなら、あいつ以外でお願いしたい 「大和には、朔兄…イケメンに見えないの?」 「あいつがモテてんの、見た事ないしな」 「大和は、モテるって基準が、飛び抜けちゃってるから、分かんないんだよ。だってちょっと、めんどくさいなぁ…とか思う時ある位モテるでしょ?」 「四葉…俺と同じ学校だったのって、四葉が1年生、俺が6年生だった時、1年間だけだよね?」 「1年も見てたら充分だよ。1年生の四葉でも、大和がモテてるの分かったもん」 「そっか…」 小1で? 小6の俺がモテてるとか、分かんの? 凄くない? 「あと、四葉も超絶モテるから、気持ち分かる」 「ああ…四葉はモテるだろうね?めんどいの?俺、追っ払おうか?」 「ううん…今に始まった事じゃないから、ちゃんと、あしらい方も、使い方も分かってるよ」 「そっか。流石だな、四葉」 「へへっ…大和がいいお手本だったから」 「そう?良かった」 モテるという事は 不特定多数の人達から、特別な感情を向けられるという事で それには、危険な事が潜んでたりするものだが… 小6でここまで出来てりゃ、心配皆無だな 「でもね、ユウには内緒だよ?」 「内緒?」 「うん。ユウはね?いつまでも、純真無垢で、お兄ちゃん大好き四葉がいいの。だから、ユウには内緒」 「なるほどな。四葉は優しいな?おいで?」 「うん!大和~」 俺の膝の上に乗っかってくる こりゃ、中学行ったら ユウにバレちゃう位モテるんじゃないか? まあ…四葉の事だから、上手くやるか ユウとの撮影が終わった頃、大和が帰って来た ユウが、大和の食事の準備を始めて、大和と四葉が俺の隣に座ると とんでもない話を、し始めた 最初は、イケメンがどうのって いつもの四葉らしい話だった ……が、 「ううん…今に始まった事じゃないから、ちゃんと、あしらい方も、使い方も分かってるよ」 「そっか。流石だな、四葉」 あしらい方… 使い方… それは、もしかして… 四葉に好意を抱いてる人達の事を、指してるのか? 使い方… 何に使ってるのか、怖過ぎて、想像もしたくない 「ユウはね?いつまでも、純真無垢で、お兄ちゃん大好き四葉がいいの。だから、ユウには内緒」 「なるほどな。四葉は優しいな?おいで?」 「うん!大和~」 怖い… この兄と妹…怖い ユウが、この兄の弟で、この妹の兄だなんて、思えない まあ…俺も朔兄とは、全然性格違うけど 「あのね?皆子供っぽいんだ~。早く中学校行きたいなぁ」 「四葉は大人だもんな?」 「うん。大和、大和。ちゃんとしたキスの仕草、どうやるの?」 「ちゃんとしたキスの仕草?」 「頬っぺにちゅ~くらいしかしないから。漫画ではよく見るけど、実際!」 「ああ…」 頬っぺにちゅ~くらい…してるんだ 誰にされてるんだ? ユウが聞いたら倒れるぞ とか、思ってたら 「まずは、お互い見つめ合って、キスしてもいいタイミングか探る」 「うん!」 「今、キスしても大丈夫だなって思ったら、その気になる様に、甘い声で名前呼んで、腰を寄せる」 と…大和が四葉の腰を、引き寄せ 四葉が大和の肩に掴まる 「四葉も、何かした方がいい?」 「いや。四葉の歳なら、初々しい感じを期待するだろうからな。少し戸惑ったり、恥ずかしそうにしとけ」 「了解」 「顔を安心して近付けれる様に、キスしたいと思わせる様に、耳の辺りを優しく触って、ゆっくりと顔を引き寄せる。ちゃんと見つめ合ったままだ」 そう言って、四葉と見つめ合ったまま 四葉の耳の辺りを触って、顔を引き寄せる 「四葉は、いつ目を閉じるの?」 「物理的に、目の前に物が近付くと閉じる。けど、少し早めに閉じてあげると、好印象だな」 「そっか、こう?」 四葉が、大和の顔の近くで目を閉じた時 「なっ…な、な、な、何やってるの?!」 「ユウ……大和にキスの仕方聞いてたの」 「よっ…四葉は…まだ…まだまだまだ…そんなの知らなくていいだろ?」 「…そっか。へへっ…ちょっと知りたくなっちゃった」 「知らなくていいよ!四葉、おいで!」 ユウが呼ぶと 四葉は、大和の上から退けて、ユウの元へと走ってく 「四葉、お兄ちゃん、ぎゅ~~!」 「うん!ユウぎゅ~~!」 「四葉…」 「ユウ大好き!」 「うん…俺も四葉大好きだよ?」 「ユウ、頬っぺちゅ~」 「うん。いっぱいして?」 四葉が、ユウの頬っぺに、ちゅっちゅ ちゅっちゅしている ユウ…四葉は、自分に好意を寄せてる奴を使い 頬っぺに、ちゅ~されてるらしいぞ? まるで小3、4年生位から変わらない妹を演じてる妹 それを、優しく見守る兄 ユウ…… うん… 何も知らないのが1番 俺も何も見なかった…聞かなかった… 「四葉、ちゃんと必要な時が来たら、そういうの聞こうね?」 「うん!分かった!」 「他の人にも聞いちゃダメだよ?」 「分かってる!」 「よし、いい子だ」 そう言って、四葉を解放する 「ユウ、ご飯、いただきます」 「うん…」 ユウが、ご飯を食べ始めた大和の方に向かってく 大和の隣の椅子に座ると 「大和…大和にとっては、慣れてて何でもない事なのかもしんないけど、あんな事…四葉に教えるなんて早いよ!」 「ああ…悪かった。散々そういう漫画見てるからさ。免疫あるかなと思ったんだ」 「そ…そりゃ、そうかもしんないけど…実際するのは違うだろ?」 「ん…そうだな?気を付ける」 「はぁ~…びっくりした」 こそこそと、そんな話をしているユウ達 俺の横で、嬉しそうな顔で、写真チェックしている四葉 そんな四葉が、顔も上げずに話し掛けてくる 「シュウ君…」 「何…」 「シュウ君も、ユウの事…もちろん悲しませたくないよね?」 「うん…?」 「四葉と大和が話してた事、内緒ね?」 「……俺は…何も聞いてない」 「さっすがイケメン!あ~~可愛いなぁ…ユウ…せめて高校生位までは、あのままで居てくれないかなぁ~…なんちゃって。シュウ君が手を出すのは、許可するから大丈夫だよ?」 俺は…何を思えばいいのか 何を言えばいいのか…… 「ありがとう……」 「ユウ、どんどん料理の腕上がってくな?」 「まだ、大和みたいに、要領良くは出来ないよ」 「でも、切り方とか、味付けとか、すっごい上達」 「~っ…そ…そう…かな…」 可愛い~~~~! 四葉!シュウ! なんで今、こっち見てないんだよ?! 超絶可愛いぞ? 「ユウ、いつもありがとな。母さん達も言ってるけど、疲れてる時とか、調子悪い時は、無理して作んなくていいんだからな?」 「分かってる。無理してないよ」 ユウを見て… 一瞬思い出す 「…………凄いなぁ…」 「え?何が?」 「あっ……ちっちゃかったユウが、こんな大きくなって、料理とか出来ちゃってるからさ」 「ちっちゃかったって…大和と3歳しか違わないじゃん?しかも、毎日会ってる」 「そうだったな…そろそろ暑くなってくるから、気温差大きくなるよ?風邪引かない様に、気をつけるんだぞ?」 「分かった」 ユウの頭を撫でると 少し照れながらも、嬉しそう 大切で大切で… あの、小さな頃見ているせいか 体が弱いからか ユウの性格からか 普通に考えたら、1番下の妹が、1番心配で可愛がるはずなのに 何歳になっても、1番心配なのはユウ… そして、逞しく育ってる四葉も、同じ気持ちだ ユウが生まれた時、俺は3歳頃だった訳で 殆ど記憶なんて残ってない 恐らくは、弟ができるんだよとか言って ユウが生まれるまで、家族で過ごした日々なんて、全然覚えてない ただ、忘れられない光景がある 沢山のカプセルが並べられた部屋で 母さんと一緒に1つのカプセルの前へと行く その中に、小さな生き物が入っていた 赤い肌で、シワシワで、あまりにも小さくて 初めて見るその生き物に、少し怖くなってると 「大和の弟よ?」 母さんが、そう言った 弟? この生き物が? だって…僕や母さんとは全然違う そんな感じの事を思った 「結叶…お母さん会いに来たわよ。今日は、お兄ちゃんも一緒よ?」 そう言って、母さんが泣いたのを覚えている 3歳で、何も知らなかった俺は ああ… 何か違う物が生まれてしまったんだと思った だから、こんな姿で、こんなカプセルに入れられてて 母さんは泣いてるんだと思った 「ご馳走さま。ユウ…美味しかったよ」 「良かった」 「ただいま~」 「ユウ、ただいま~。ありがとね~」 両親が帰って来て ユウとシュウが部屋に向かい 四葉の弾丸トークが始まったところで、俺も部屋へと向かう 部屋着に着替えて、ベッドに横たわる 母さんは、俺達の覚えてない頃の話をよくする 何の事はない ユウは、1ヶ月ちょっと、早く生まれてきてしまったのだ そのせいで、成長が未熟で、皮膚もしっかりと出来上がってなくて、赤くてシワシワだったらしい カプセルは、保育器で カプセルが並んでた部屋は、NICUという場所だったらしい ちゃんと成長するまで、保育器の中で育てられたそうだ 子供の俺にとっては、恐怖でしなかった 他の沢山あるカプセルの中にも、未知の生物が入ってるのか ここは一体どんな場所で なんで、こんな事になってしまったのか 感染症の関係から、まだ小さかった俺が面会出来たのは、たった1回だったらしく 俺のあの記憶は、その時のものらしい だからこそ、ユウが退院する時の事も、よく覚えている 退院する話とか、退院が決まって両親が喜んでたとかは、全然覚えてない とにかく、両親と共に向かった先で 母さんが 「大和、ほら結叶よ?大和の弟よ?こんにちは~。お兄ちゃん、よろしくね?」 そう言って見せたのは 可愛いくて、可愛いくて、可愛いものだった 母さんも父さんも、嬉しそうに泣いてる中 俺は混乱してた事を覚えている だって、あの未知の生き物が弟って言われた なのに…今度は、この可愛い子が弟だと言う こんな可愛い子が弟になってくれた嬉しさと あの可哀想な子はどうしてしまったのか まだ、死ぬとか、生まれるとか分からなかったけれど とにかく、あの建物の中で弟は作られ 俺達と同じじゃないものは、ああやってカプセルに入れられ 俺達と同じだと、こうして皆に喜んで貰えるという様な事を 漠然と感じた ある程度の年齢になるまで ユウを可愛いと思う度、たまにあのカプセルの子を思い出した けれども、それを上手く親に聞く事も出来なかった あのカプセルの中の生き物が、成長してユウになったのだと気付いた時の衝撃と言ったら… 驚きと 安心? 嬉しさ? とにかく、色んな物が入り交じり 小学校に上がる位だったろうか 俺は、訳も分からず号泣した 家族の前で泣いたのは あれが最後だったろうか… 俺は、小学校入学前に、人間の進化なるものを、目の当たりにしていた そして、あんなカプセルに入れられ たった1人で頑張って こんなに可愛い弟になって来てくれた結叶が 愛おしくて愛おしくて 誇らしかった 早く生まれてきたのが関係あるのかないのか ユウは、しょっちゅう風邪を引いてた その度に、熱や咳に苦しめられて 薬飲まされて、酷いと入院して けれども、ユウが嫌だと言って泣いたりするのを見た記憶がない あまりにも小さな頃から、それが普通になってしまったのか 一緒に病院に行くと、診察も、点滴も、薬も、嫌だと言って泣いてる子が沢山居る 俺だって、薬は嫌いだ 小さな頃の予防接種だって、苦手だった でも、もっと小さなユウが、涙浮かべながらも頑張ってんの見たら いくらでも頑張れた だんだん、入院する回数は減り 小さかったユウも、ちゃんと周りと同じ位に成長してきた それでもやっぱり、皆より体調は崩し易くて 学校休んで寝込む事もある 本人としては ちょっと体が弱い程度に捉えてるらしく 自分の弱い体を嘆くより そのせいで、周りに迷惑がかかる事が気になるらしい 体が弱いなんて感じさせない 普段は元気なユウ 本人としては、そんなに優しくもなければ なんなら、ずるい事考えたりしていると思ってる様だが… そんなん、皆考えてる事だぞ? という程度の事で、ちょっと悪い人間になった気がする様で 俺に懺悔の様な告白してくるんだから、可愛い 周りより風邪引くわ 人混みで具合悪くなるわ 乗り物酔いするわ 絶対生き辛いし 羨ましいも、なんで?も、沢山あるはずなのに 自分のそんな体気にするより 周りの俺達に気を遣うユウ いつだって一生懸命、ひたむきに… 周りを気遣いながら生きてる結叶が 愛おしくて仕方がない ちなみに、念願の妹も、もちろん可愛いかった 元気いっぱいに生まれてきた四葉は 数える位しか風邪すら引かず 上に兄2人居るせいか、早くから喋り出し 2歳の予防接種では、四葉がお気に入りの先生に会えると、朝から喜び 予防接種に行くと、看護師さんに チックン頑張ったら、あの先生にちゅ~して欲しいと伝えたそうで あっという間に、有名人になったそうだ 四葉は大丈夫だ なんか、そう思った そんな訳で 中学を前に、言い寄って来る男共を、既に手懐けていた四葉 もはや、そういう意味では、とっくに結叶の成長を追い抜いている訳で どうやらユウが1番幸せになれるのは、シュウと付き合う事だと信じきってるらしい だいぶ私情が挟まれてる感じは、物凄くあるが 2人が傷つかないのなら、俺は、いくらでも協力しよう あんな可愛い子、男女問わず いつ、どんな奴に襲われるか分かんないからな ユウがシュウを受け入れられるのなら 俺としても、万々歳だ シュウに攻められるユウなんて、想像しただけで、四葉じゃなくても可愛いでしかない まあ… 普通に彼女と付き合って、慣れない中、必死にエッチするユウも、可愛いっちゃ可愛いが… あ~~… シュウに攻められるユウ…見た過ぎる 可愛いなぁ 可愛いでしかないなぁ 体弱いのと、感じやすいのって関係あんのかな? なんで、あんな感じやすいのかな? 逐一、シュウからユウの様子を聞こうっと 可愛いくて可愛いユウ… 結叶のお兄ちゃんで ほんと、良かった…

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