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誕生日
俺の風邪もすっかり治って
皆が揃った土曜日
ピンポ~ン
俺達は東雲家へやって来た
何故って
「ハッピバースデー!シュウ君!」
今日は、シュウのお誕生日会だから
毎年必ず、俺達5人のお誕生日会は、二家族皆が集まれる日に行われる
どちらかと言うと
既に、俺達より親達の楽しみになってたりする
昼から始まるお誕生日会は、夜遅くまで続き
親達が酔っ払って、ふらふらになって帰るか、そのまま寝始めて終了となる
「見て見て~!この、ちっちゃいシュウ!」
始まった
毎回必ず、俺達が生まれたときや、小さかった頃の思い出話で、親達は盛り上がる
酒が進む親達を横目に、親達はリビングで、テレビ見たり、ゲームしたり、適当に過ごす
「ジャンピングからの~…キ~ック!」
「うおっ!やったな?四葉!」
四葉と朔兄は、ゲームで対戦中だ
俺は1回、洗い物しちゃお
キッチンに立って、腕まくりをすると…
「あら、ユウ君。後でやるから、ほっといて?」
「ユウ~!」
「わっ!父さん、何?!」
父さんが、俺の後ろに来て、抱き付いてきた
「こんなに大きくなっちゃって…なんでも出来る様になっちゃって…あんまり急いで成長しないでくれ~~」
「父さん…だいぶ酔ってるね?ってか、今日はシュウの誕生日だけど?俺はもう14歳になってるし」
「まだ、ほんの少ししか経ってないのに、14歳だなんて…洗い物どころか、料理まで出来る様になっちゃって…もっとゆっくり、大人になってくれ~」
ああ…
それは、なんか分かるかも
俺が四葉に思う気持ちと、きっと似てる
嬉しい様な…寂しい様な…
「俺は、皆より手がかかるから…少しは家族の為に出来る事が増えてきて、嬉しいよ」
「結叶…」
「俺が1番、皆に色々してもらう事が多いから…少しでも出来る事はするよ」
「ユ…ユウ~~~~!!」
「わっ!苦しいよ…父さん」
父さんが、思いっきり抱き締めて泣き始めた
母さんも
「う~~…結叶がいい子過ぎる~~!」
と、泣き始めた
それを見て、皆が笑って…
幸せに包まれている
結局、ふらふらになりながらも、父さんと母さんは、大和に連れ帰られ
「シュウ君のお誕生日なんだから、ユウは泊まってくの!」
という、四葉の謎の説得で
俺は、シュウの部屋に泊まる事になった
「シュウ、泊まって良かったのか?」
「ユウがいいなら」
「俺は嬉しいけど」
「じゃあ、俺も嬉しい」
俺達の関係は
まだ、あまり変わらないでいてくれてるらしい
「あ、そうだ!シュウ…これ」
「何?」
「誕生日プレゼント」
「ありがと。開けていい?」
「いいけど、毎年同じ様な物だよ?」
「ユウから貰えるなら、何だって嬉しい」
それは、喜んでいいのか?
何だってってのは
センス疑われてんのか?
「わぁ…和紙?」
「うん。なんか、手触りがさ、いいかなぁ…って」
「ありがとう」
良かった
ほんとに、嬉しそう
シュウへのプレゼントは決まってる
本を読むのが好きなので
毎年ブックマークを送ってる
「ほんとだ…触り心地いいね?」
「気に入ってもらえて、良かった」
「和紙…ユウっぽい」
「え?俺っぽい?」
「うん…レザーとかじゃなく…和紙…ユウって感じで嬉しい」
「……よく分かんないけど、嬉しいならいいや」
シュウが、大切そうに机の引き出しに仕舞う
ベッドに戻ると…
「ユウ……」
「何?」
シュウが、何か言おうとして、迷ってる?
「何だよ?気になるだろ?」
「うん……今日…一緒に…寝たい」
「ベッドで一緒にって事?別にいいけど?」
「……ありがと」
それが言いたかったのか?
なんか、すっきりしない顔だな
シュウのベッドに入ると
「電気消すね?」
「うん…」
何だ?
何が気になってるんだ?
「ユウ…手…繋いでいい?」
「いいよ。ほら…」
シュウが、両手で俺の手を包んでくる
「シュウ…何か不安?」
「……よく…分からないけど…」
「うん?」
「俺達が…ユウが…14歳になったのが…」
俺の誕生日の時は、何も言わなかったけど
気になってたのかな…
「シュウ…蓮の事…言ってる?」
「……うん」
「俺は結叶だよ?14歳で終わらないよ?」
「うん…」
シュウが、ぎゅっと手に力を入れる
「まあ…絶対とは言えないけど…」
「え?」
「だって、それは分かんないよ。シュウだって、大和だって、皆そうだろ?俺も同じ。シュウと同じだよ」
「うん…ユウ……ユウが居ないと…」
「居なくなるつもりないよ」
シュウが、俺のこめかみ辺りを触ってくる
俺は、すっかり忘れてた
シュウは残ってるっていう傷がある辺り
「痛くないよ?暗くて見えないじゃん」
「見えなくても分かる…」
「どんだけ覚えて見てたんだよ」
「ずっと…ほんとは毎日謝りたいくらい…」
「どんだけだよ。忘れてたっての」
「忘れたくない…」
「え?」
忘れたくない?
そう言って、シュウが頬を撫でてくる
「謝っても、傷も、ユウが痛かったのも消えないけど…ほんとに悪いって思ってるけど……けど…」
「けど?」
「俺の為についた傷が、ユウに残ってるのが…嬉しい」
「え?」
「俺だけの…為の……ユウに残ってる傷だから」
「シュウ…」
嬉しい…
謝りたいは、分かるけど
嬉しいってのは、よく分からない
「ごめん…幻滅した?怖くなった?」
「いや…俺には、よく分かんないなって。けど、俺がすっかり忘れてたのに、シュウがずっと罪悪感覚えてたのかと思うと、すっごく重いから…少しでも嬉しいがあった方がいいや」
「ユウ…なんで、そんなに優しいの?」
「そうかぁ?シュウだって、同じ様なもんだろ」
しばらく、片手で俺の手を握り
片手で俺の頬を触ってると
「……ユウ」
「ん?眠れない?」
「……キス…したい」
「いいよ」
「もっと…考えてから答えた方がいい」
「考えたって同じだよ。シュウがいいなら、いいよ」
「ユウ…」
電気消えてるのに
見えないのに
シュウは、ちゃんと唇重ねてきた
シュウは、彼女が居た事ある
彼女と…沢山こういう事したのかな
こういう事するくらい好きな人と
どうして別れたのかな
多分、学校から帰って、俺の家に来るのが、また早くなって
休みの日も、あまり出掛けなくなった頃
彼女と別れたんだろう
それは…去年の事で
シュウが言ってた、ずっと俺とこういう事したかったってのは
それからの事なんだろうか…
だって、そうじゃなかったら
彼女と、こんな事しないよね
やっぱりこれは…
俺が慣れる日は、来ないと思う
堪えられなくなって
シュウの手と服を、ぎゅ~っと握ると
シュウが離してくれた
「ごめん…大丈夫?」
「~~~っ」
ちょっと大丈夫じゃない
そのまま、ぎゅ~ってしてて欲しい
「ユウ……」
ぎゅ~ってしたまま、シュウが俺名前呼んで
頭にキスしてくる
なんか分かんないけど
もっとシュウに、しがみ付きたくなる
これは、どういう感情なんだろ?
今…離さないで欲しい
「シュウ…」
「ん…」
「~っ…も少し…ぎゅってしてて…」
「うん…ユウ……」
シュウの彼女も、こうしてたのかな
キスされると、こうなるのかな
シュウは、彼女をぎゅっとしてたのかな
多分、大和も、朔兄も、皆…
誰かを、こんな風に
大丈夫だよって…
凄く大切そうに
抱き締めて………
なんか…寂しいな
俺以外の
俺達以外のそういう人達が、どんどんできてって
そのうち、そっちの方が大切になってって…
シュウの胸に、ぐりぐりぐり~~っと頭を擦り付ける
「ユウ?」
「シュウは今、俺が大切?」
何聞いてんの?俺…
「うん。ユウが誰より1番大切」
「うん」
俺もだよって
言ったら、シュウと同じ気持ちだって、思わせちゃう
シュウと同じだよって言えないくせに
俺が1番だと嬉しいなんて
我が儘だ
「シュウ…このまま寝ていい?」
「うん…おやすみ…ユウ」
14×2の人生なのに
俺は皆より知らない事がいっぱい
知らないは、気付かないがいっぱいで
気付かないうちに、嫌な思いさせたり、傷つけたりしてるんだと思う
それでも優しい人達に囲まれて
2回目の人生も
俺は人に恵まれている
蓮は弱くて弱くて
そりゃ、優しくしなきゃって思わせたかもしれないけど
結叶は、そこまで弱くない
そんなすぐ壊れないのに
俺の周りは、優しさで包まれている
実は次の日、シュウが寝不足だったとか
そんなのも全然気付かないで
俺は、シュウのベッドで、シュウの中で
ぐっすりと眠った
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