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悪霊退散
家族に迎えに来てもらおうかと、先生に言われたけど
別に歩けない程じゃないし、あとは帰って寝るだけだし
「ユウ…大丈夫?」
「お、東雲…ご近所さんだったか?」
「はい」
「家族呼ばなくていいって言うんだが、調子はあまり良くないんだ。一緒に帰ってくれれば安心だ……いや、それで何かあったら…生徒に任せた無責任な教師として……」
なんだか、先生がぶつぶつ考え出した
「先生、大丈夫だってば。1人でも帰れます」
「ほんとだな?一応、調子悪そうだっての、母さんには連絡しておいたから」
え…
連絡しちゃったのか
「穂積…明日、校長先生から呼び出しとか、ほんと先生…寿命縮むからな?」
「大丈夫です。さようなら」
先生って大変だ
ちょっとした事に、びくびくして
「ユウ…ほとんど楽しめなかったんじゃない?」
「いや、旅館行くまでは結構楽しめたし、旅館でも、一応お風呂入って、ご飯食べれたから、行った意味はあるよ」
「まだ、結構具合悪い?」
「ん~…ちょっと」
確かに、具合も悪いんだけど
すでに、それだけではない
あの、おばちゃんの話を聞いたせいで
なんか…更に具合悪くなった…
気分的に…
家に帰ると
「お帰り、結叶」
「母さん、ただいま。全然大丈夫なのに、帰って来ちゃったの?」
先生から連絡をもらって、仕事早めに終わらせてきたらしい
荷物を置いたシュウが、すぐに来たけど
母さんに
「ありがとね、シュウ君。おばさん居るから大丈夫。シュウ君も疲れたでしょ?ゆっくり休んで」
と、言われて
「後で、また見に来る」
そう言って帰ってった
荷物を下ろして、ぐったり
疲れた…
ソファーに横になると
母さんが、荷物の整理を始めた
「あら?あらあら…」
「…どうかした?」
だるい体を少し起こして見ると
「随分、びしょびしょになったのね?川遊びでもしたの?」
あ…忘れてた
先生が、ビニール袋に入れてくれた、俺が今朝着てた部屋着
「えっと…違うんだけど…」
話すと長くなる
「ごめん…1回寝て起きたら、ちゃんと説明するね。雨漏りみたいなもんだから」
「そう…随分古い旅館だったのね~」
違うんだけどね
ごめんね、母さん
とにかく…もう……眠い
いつもの様に、バイトを終えて家に帰る
今日は、可愛い可愛い弟が、1日ぶりに帰って来てる
思いっきりハグしてやろうと思ったら
途中で具合悪くなったらしく
家に帰って来てからも、死んだ様に、ソファーで寝続けていると言う
そりゃそうだ
結叶は、皆より体力ない上に
バス移動ってだけで、体力消耗する
なのに…こんなもん付けてるんだから
「君…誰?なんで、ユウに付いて来たの?」
寝ているユウの顔を
見つめたり、触ったり、キスしたり
俺が声掛けると、ぎょっとした様に、こっちを向いた
「大和?何か見えるの?」
「大和!お化け?!」
「うん…ユウが、男の幽霊に誘惑されてる」
「「え~~っ!」」
2人の声に、幽霊もびっくり
けど…ユウは、唸ったり、顔をしかめたりするだけで、全然起きない
「ユウから離れて」
「ゆう…好きって…言えなかった…」
「君の知ってる、ゆうじゃないだろ?ユウは、こっちの世界の、俺の弟だ」
「ゆう…そっくり…ゆう…」
「そっくりでも、違うよ?君は、ちゃんと行くべき所に行きな?」
そう言ってんのに、ユウの事触りまくるし、キスするし
「ん…んんっ…」
生気…吸われてんじゃない?
だんだん腹立ってきたな
「母さん…酒と塩」
「はいはい」
母さんが、すぐに、酒と塩を持って来てくれる
「これね…沖縄の岩塩だから、効くわよ~」
流石、母さん
「おじいちゃん呼ぶ?」
「ん~…そうだね。一応来れそうなら、呼んどいて」
「分かったわ」
「おじいちゃん!久しぶり!」
母さんの父さんは、お寺の住職だ
「ここは、君が居るべき所じゃないよ。ちゃんと行くべき場所に行きな?」
そいつの上から、塩を振りかけてやる
「や…やめろ!」
明らかに嫌がってるな
ちゃんと効くもんだ
「似てるってだけで、本物でもないのに、ユウに手を出したところで、君は満たされないだろ?意味のない事をして時間費やすより、さっさと次の人生に移れよ」
「この子…好き……心地いい……ここに居る」
「はあ?!調子に乗んなよ?…ったく…せっかく静かに成仏させてやろうってのに…」
仕方なく、制服の内ポケットから、数珠を出す
「ひっ…!」
「だよな?これ、結構ちゃんとした数珠だからな?」
「ひ~~っ!」
逃げ出すんじゃなく、ユウの体ん中隠れやがった
ほんと…ムカつく
そいつが隠れたあたりに、酒をぶっかけて
数珠を握って、意識集中
「オン アビラウンケン ソワカ」
ユウの体ん中から、ずずず…と出かかってる
「オン アビラウンケン ソワカ」
「やだ……ここに居る…」
めちゃくちゃムカつくけど
冷静に…
無だ…無…
「オン アビラウンケン ソワカ!」
「~~~~~~っ!!」
ピシッと数珠に亀裂が入ると
なんとも表現のしようがない断末魔を残して
そいつは消えた
「はい、終了」
「ユウに幽霊くっ付いてたの?」
「そっ…それで、調子悪かったんだろな」
「お化け居なくなった?」
「ん…居なくなったから、大丈夫だよ」
ユウの頭を撫でながら
「ユウ…もう大丈夫だろ?…起きてごらん?」
声を掛けると
「ん……大和?お帰り」
「ただいま。ユウもお帰り」
「…ただいま」
俺の世界一可愛い弟は
幽霊にまで、手を出され始めた
「ん?……えっ?!何?!」
起き上がったユウが
自分の体の上の異変に気付いて、焦り始めた
「なんで俺の制服…びしょびしょで…何?この粉?…え?」
「結叶、良かったわね~?元気になったわ~」
「ユウ!お化けね、大和が追い出した!」
「え?お化け……えっ?マジか…」
あいつ…
ユウが何も出来ないのをいい事に
散々、手出しやがって
「ユウ、体の調子どう?」
「なんか…凄い調子良くなった」
「良かった…何処で、あんなん付けて来たんだ?」
「そっか…付いて来てたのか……なんか…滝覗き込んでた…」
「ああ…なるほど」
母さんが、着替えやら、タオルやら持って来て
「お風呂、入っちゃう?」
「うん」
まさかとは思うけど
一応、確かめるか
「じゃあ、俺も入ろうっと」
「え?」
「え~~?じゃあ、四葉も入る!」
「えっ?」
「四葉は、ユウを支えられないだろ?それに…お化け戻って来たら、困るだろ?」
「う~~…分かった」
寝起きで、あまり状況も把握出来てないまま
ユウは、俺と風呂に入る事になった
「……なるほどな」
風呂に入り、一連の話を聞く
結叶の胸には、幾つものキスマークが残されていた
腹立たしい
「こんなに付けられて…」
「幽霊でも、付けれるんだね?」
「そうみたいだな?ユウ…ここは、触られてない?」
ユウの股間に手を伸ばすと
「え…わっ!どこ触るんだよ?!触られてないよ!」
慌てて、ユウが俺の手をどける
そのまま、後ろに手を回し
「じゃあ、こっちは?」
「なっ?!さ、さ、触られてない!」
「ほんとに?」
「ほんとに!腹とか胸とか、やたら触ってた!」
「そっか…」
触られてる記憶残ってんなら
まあ…そうなのかな
「あいつ、散々触って満足して消えたのか?」
「え?」
「それとも、途中でユウが意識失ったの?」
「……えっと…そう…」
目…逸らした
「?…ほんとに?」
「……なんか…途中からあいつ…乳首ばっか…触ったり…舐めたり……してきて…」
「うん…」
「なんか…変な感じ…するけど、体動かせないし、声出ないし…どんどん頭も、おかしくなってって…気…失ってた」
「なるほど…」
それじゃ、何処まで触られたか分かんないよ?
けどまあ…
起きて違和感ないくらいで済んだんだな
それよりも…
「ユウ…ここ、そんな感じるの?」
「えわっ!」
「気を失う程、感じるの?」
「ちっ…違う!」
「ほんとに?」
「ほんとだから、触んないで!」
可愛い…
今度、ちゃんと確かめよう
「ユウさ、じいちゃんにお守り貰おうな?」
「……これからも、見えちゃうの?俺」
「分かんないな。今回は、たまたま同じ名前の子に未練があったからだけど、それをキッカケに見えるようになるかもしんない」
「い~~…やだな…俺、見えたら、大和みたいに、冷静ではいられないよ」
ユウが見えようが、見えまいが、そこはあまり問題ではない
すでに、手を出した幽霊が居るという事実が問題だ
何とかしなければ
「あいつさ、居心地いいから、ユウのとこ居るって言ってたんだよ」
「えっ?!怖っ…」
「だからさ、お守りでも持って、幽霊にとって居心地悪い環境作らなきゃ」
ちょっと不貞腐れた様な顔で
渋々
「……分かった」
と、納得してくれた
「ユウ…少しは研修旅行楽しめた?」
「うん…少しは楽しめた」
「そっか…ユウ…」
湯船の中で、ユウを抱き締める
「や…大和…恥ずかしいよ」
「1泊でも寂しかった…心配だった」
「…俺、いつも皆に心配かけるから」
「幽霊じゃなく、人間には、手出されなかった?」
「だっ…出されないよ!何言ってんの?!」
「そう?ユウは無防備だから、心配…」
俺達が風呂から上がると
じいちゃんと、シュウが来ていた
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