29 / 68

じいちゃん

大和とお風呂から上がってくると シュウと… 「じいちゃん!」 じいちゃんが居る 「どうしたの?」 「おお…結叶…はっはっはっ…心配して来てみれば、元気そうだな?」 「え?母さん…俺が具合悪いって、じいちゃんに知らせたの?」 「ただいま~…お…お父さん?どうしたんですか?」 ちょうどそこに帰って来た父さんも、びっくりしてる 「だって、ユウに何か取り憑いて、悪さしてるって言うから…」 「ああ…」 じいちゃんは、そこそこ立派な寺の住職さんだ そりゃ、じいちゃん召喚するか 「えっ?!ユウ…悪霊に取り憑かれたのか?!」 1人だけタイムラグで慌て出す父さん 「大和…じじいを呼び出しておいて、自分で追っ払ったのか?」 「ごめん、じいちゃん。じいちゃん来るまで、何とか説得出来ればと思ったんだけど…ユウの事気に入って居座るなんて言い出したから、ムカついて…」 「ムカついた心で、よく追っ払う事が出来たもんだ…」 「そりゃ、その時は、ちゃんと心、無にしたさ」 大和がそう言うと じいちゃんが、はぁ~…と、深いため息を吐く 「じぃじ!四葉も大和みたいに出来るようになりたい!」 「お?じゃあ四葉、じぃじの跡継ぎになるか?」 「なる!」 「いっ?!いや…四葉…四葉~…そういうのは、もっとじっくり考えような?」 父さんが、焦ってじいちゃんから四葉を離す 「あら四葉、そっち方面興味あったのね~?」 「あったの!」 父さんが母さんに、口パクで「おい!」と言っている 本物の住職の前だから、必死だ 「ふ~~む…結叶…お前、少し会わないうちに、随分変わったな?」 「え?そう?シュウほど大きくなってないけど?」 なんか…じいちゃんは、全てを見透かしてそうで、ちょっとドキドキする 「じいちゃん、悪いんだけど、数珠新しいの貰える?あと、結叶にお守り頂戴?」 大和が、持ってた数珠を見せると 「なっ?!お…お前…これは…」 「うん。なんか、凄く立派なお坊さんがくれた数珠だって言ってたもんね?ごめんね?」 「そ…そんな……ああ…なんと言う事だ…」 「お陰で、俺と結叶助かったよ。ありがとう、じいちゃん」 にこにこしている大和の傍で 渡された数珠を手に、愕然としているじいちゃん 大丈夫? 「それ…そんな凄い数珠だったの?ごめんね?じいちゃん…俺が、なんか変なの連れて来たばっかりに…」 「いいんだよ、ユウ。じいちゃんは、こういう時の為に、俺に凄い数珠を渡してくれてたんだから」 「そうなの?」 「そうだよ。霊にあんなにキスなんかされてたら、すっかり生気吸われちゃうだろ?ほんと、じいちゃんのお陰で、早めに引き剥がせて良かったよ」 「「「えっ?!キス?!」」」 シュウと父さんとじいちゃんが、声を揃えて驚いている そっか 大和には見られてたんだ… なんか、恥ずかしい 「ユウ…キス…」 「結叶…お前…霊に…」 「なんと…結叶!どれ?!」 「え?」 じいちゃんが、ぐいっと俺の体を前に向ける 「ふ~~む…何ともないか?」 「うん。凄く体だるかったけど、調子良くなったよ?」 「はぁ…なんちゅう霊に取り憑かれたんだ?」 「なんか、俺と同じ名前の子、好きだったのに言えなかったって言ってた。じいちゃん、あの子成仏出来たの?」 追い払うって、どういう事だろう 成仏ってどんなだろ? 蓮は死んだんだけど 全然分かんないや 「素人が追っ払っただけだ。成仏などしとらんだろ」 「……そっか。旅館のおばちゃんがね?7~8年前に、俺達と同じ様に修学旅行で、滝を見に行って亡くなった子が居て、それから時々、あの旅館に泊まって、俺と同じく布団がビショビショになって、その子を見たって人が居るんだって、教えてくれたんだ。その子…ずっとビショビショで冷たいんだ」 指も…唇も…舌まで たった1人ぼっちになって そんなに長い間… 「じいちゃん…」 「いや…じいちゃんは、この辺の寺の坊主であって…」 「場所教えるから、近くのお寺のお坊さんに頼めない?」 「結叶は優しいな?厳しい修行を経て、阿闍梨(あじゃり)なる高僧になったじいちゃんは、きっと成仏する手助けをしてくれるさ」 大和が隣に来て、ぽんと、俺の肩に手を置く 「ほんと?」 「大和……はぁ…分かった、分かった。これも、何かのご縁だと思って、頼んでやろう」 「ありがとう、じいちゃん」 「ただし!大和…1ヶ月間、土日の朝、お勤めに参加せい」 「え~?…まあ、いいや。結構あの空気好きだし」 前にも大和は、何度かじいちゃんの寺の、お勤めとかいうやつに、参加している なんか、そんなに見えるなら、ある程度身を守れる様にとかなんとか… 「ほんとに、ほんっと~に!この数珠は、大切な物だったんだからな…はぁ…」 「まあまあ、じいちゃん。お陰でユウは、この通り元気だから」 「はぁ……結叶…お前も、いつでもいいから、一度大和に連れて来てもらいなさい」 「え?俺も?俺は、見えたの今回限りだよ?」 「どうも、お前さん…何か前とは変わってきてる様に見える」 うわ… 流石、じいちゃん 「そのせいで、これからも今回みたいな事が、またあるかもしれん。ただお守りを渡すより、ちゃんと寺に来て、一度でもお勤めに参加した方がいい」 「……分かったよ」 「はい!はい!おつとめ、四葉も行く~~!」 四葉が、元気いっぱいに手を挙げている 「はっはっはっ…四葉、お勤めは、朝物凄く早起きだぞ?起きられるかな?」 「起きる!四葉、頑張る!」 「まあ、好きにせい。とりあえず、大和は…ほれ、この数珠でも持っとれ」 「ありがと、じいちゃん」 「なんだか、すっかり疲れたから、じじぃは退散するぞ」 そう言って、じいちゃんが去ろうとして 「あ、お父さん送ります」 「いらん、いらん。早く晩ご飯いただきなされ。どれ、タクシーでも呼ぶか」 「じいちゃん、俺呼んであげるよ」 大和がタクシーを呼んで じいちゃんは、なんだか疲れた様子で帰って行った すっかり忘れてた夕食 大和も、シュウも一緒に食べる 「しっかし、結叶…せっかくの研修旅行が、散々だったなぁ」 「でも、1日目は旅館に着くまで、皆と一緒に行動出来たよ?あと、皆と違う時間だけど、旅館のお風呂も入れたし、朝ごはんも食べれた」 「ユウ…幽霊にキスされるって、どんな感じ?ちゃんと分かるの?」 「ぶほっ…げほっ…げほげほっ…」 「父さん、大丈夫?」 四葉の質問に 俺じゃなく、父さんがむせた 「ちゃんと分かるよ?普通にキスされてた。すっごく唇も舌も冷たかった」 「ふ~ん?ちゃんと分かるんだぁ」 「しっ…し、し、舌…?!」 「あら、結叶…凄いキスしてるのね~」 「ユウ……」 あ…シュウが… 物凄く悲しそうな顔をしている 「えっと…少し……少しだけだから」 そう… キスは、そんなに長くなかったよ 「そう…ユウの傍で眠らせてもらえば良かった」 「いや、でもさ…なんか、幽霊の力なの?俺が唸ってても、先生達誰も起きてくんなかったよ?」 「そうなんだ…」 「ゆ…結叶は…そういうキス…初めてだったのかな?もしかして…幽霊が、ファーストキスとか…」 あ、なるほど 父さん、俺のファーストキスの心配してくれてたんだ 「違うよ、父さん。安心して」 「ち、ち…違うのか?!結叶…ファーストキス…キス……もう…誰かとしてたのか…」 「うん…」 あれ? それなら、良かったじゃないのか? なんで、そんな泣きそうなの?父さん… 「大和は…そうだろうなと思ってたが…結叶まで……皆…大人になって……俺から離れてくんだっ…」 「あらあら…お父さんったら、モテる息子で良かったじゃない?高校卒業しても、ファーストキスもまだなんて、そっちの方が心配よ」 「け…けどっ…せめて高校までは……結叶は、そんな事ないって信じてたのに~」 そんな…ショックな事だったのかな? 大丈夫だよ…相手は、シュウと、大和と、クラスメイト(男子)だから なんか、ちゃんとしたファーストキスじゃないよって、言ってあげたいけど それはそれで、びっくりさせるかもしれない 「じゃあ、四葉がお父さんにキスしてあげる~」 「四葉~!してくれるのか~?」 「うん!お父さん、ちゅ~」 「四葉~!」 四葉って凄い なんて言うか 時々、誰より凄いのでは…と思う なんだかんだで、今日の撮影会はなし 明日は、振替休日で学校が休みという事で 「じゃあ、ユウが心配だから、シュウ君泊まってくよね?」 という、またしてもNoと言わせない四葉の一言で シュウは泊まってく事となった

ともだちにシェアしよう!