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じいちゃん
大和とお風呂から上がってくると
シュウと…
「じいちゃん!」
じいちゃんが居る
「どうしたの?」
「おお…結叶…はっはっはっ…心配して来てみれば、元気そうだな?」
「え?母さん…俺が具合悪いって、じいちゃんに知らせたの?」
「ただいま~…お…お父さん?どうしたんですか?」
ちょうどそこに帰って来た父さんも、びっくりしてる
「だって、ユウに何か取り憑いて、悪さしてるって言うから…」
「ああ…」
じいちゃんは、そこそこ立派な寺の住職さんだ
そりゃ、じいちゃん召喚するか
「えっ?!ユウ…悪霊に取り憑かれたのか?!」
1人だけタイムラグで慌て出す父さん
「大和…じじいを呼び出しておいて、自分で追っ払ったのか?」
「ごめん、じいちゃん。じいちゃん来るまで、何とか説得出来ればと思ったんだけど…ユウの事気に入って居座るなんて言い出したから、ムカついて…」
「ムカついた心で、よく追っ払う事が出来たもんだ…」
「そりゃ、その時は、ちゃんと心、無にしたさ」
大和がそう言うと
じいちゃんが、はぁ~…と、深いため息を吐く
「じぃじ!四葉も大和みたいに出来るようになりたい!」
「お?じゃあ四葉、じぃじの跡継ぎになるか?」
「なる!」
「いっ?!いや…四葉…四葉~…そういうのは、もっとじっくり考えような?」
父さんが、焦ってじいちゃんから四葉を離す
「あら四葉、そっち方面興味あったのね~?」
「あったの!」
父さんが母さんに、口パクで「おい!」と言っている
本物の住職の前だから、必死だ
「ふ~~む…結叶…お前、少し会わないうちに、随分変わったな?」
「え?そう?シュウほど大きくなってないけど?」
なんか…じいちゃんは、全てを見透かしてそうで、ちょっとドキドキする
「じいちゃん、悪いんだけど、数珠新しいの貰える?あと、結叶にお守り頂戴?」
大和が、持ってた数珠を見せると
「なっ?!お…お前…これは…」
「うん。なんか、凄く立派なお坊さんがくれた数珠だって言ってたもんね?ごめんね?」
「そ…そんな……ああ…なんと言う事だ…」
「お陰で、俺と結叶助かったよ。ありがとう、じいちゃん」
にこにこしている大和の傍で
渡された数珠を手に、愕然としているじいちゃん
大丈夫?
「それ…そんな凄い数珠だったの?ごめんね?じいちゃん…俺が、なんか変なの連れて来たばっかりに…」
「いいんだよ、ユウ。じいちゃんは、こういう時の為に、俺に凄い数珠を渡してくれてたんだから」
「そうなの?」
「そうだよ。霊にあんなにキスなんかされてたら、すっかり生気吸われちゃうだろ?ほんと、じいちゃんのお陰で、早めに引き剥がせて良かったよ」
「「「えっ?!キス?!」」」
シュウと父さんとじいちゃんが、声を揃えて驚いている
そっか
大和には見られてたんだ…
なんか、恥ずかしい
「ユウ…キス…」
「結叶…お前…霊に…」
「なんと…結叶!どれ?!」
「え?」
じいちゃんが、ぐいっと俺の体を前に向ける
「ふ~~む…何ともないか?」
「うん。凄く体だるかったけど、調子良くなったよ?」
「はぁ…なんちゅう霊に取り憑かれたんだ?」
「なんか、俺と同じ名前の子、好きだったのに言えなかったって言ってた。じいちゃん、あの子成仏出来たの?」
追い払うって、どういう事だろう
成仏ってどんなだろ?
蓮は死んだんだけど
全然分かんないや
「素人が追っ払っただけだ。成仏などしとらんだろ」
「……そっか。旅館のおばちゃんがね?7~8年前に、俺達と同じ様に修学旅行で、滝を見に行って亡くなった子が居て、それから時々、あの旅館に泊まって、俺と同じく布団がビショビショになって、その子を見たって人が居るんだって、教えてくれたんだ。その子…ずっとビショビショで冷たいんだ」
指も…唇も…舌まで
たった1人ぼっちになって
そんなに長い間…
「じいちゃん…」
「いや…じいちゃんは、この辺の寺の坊主であって…」
「場所教えるから、近くのお寺のお坊さんに頼めない?」
「結叶は優しいな?厳しい修行を経て、阿闍梨 なる高僧になったじいちゃんは、きっと成仏する手助けをしてくれるさ」
大和が隣に来て、ぽんと、俺の肩に手を置く
「ほんと?」
「大和……はぁ…分かった、分かった。これも、何かのご縁だと思って、頼んでやろう」
「ありがとう、じいちゃん」
「ただし!大和…1ヶ月間、土日の朝、お勤めに参加せい」
「え~?…まあ、いいや。結構あの空気好きだし」
前にも大和は、何度かじいちゃんの寺の、お勤めとかいうやつに、参加している
なんか、そんなに見えるなら、ある程度身を守れる様にとかなんとか…
「ほんとに、ほんっと~に!この数珠は、大切な物だったんだからな…はぁ…」
「まあまあ、じいちゃん。お陰でユウは、この通り元気だから」
「はぁ……結叶…お前も、いつでもいいから、一度大和に連れて来てもらいなさい」
「え?俺も?俺は、見えたの今回限りだよ?」
「どうも、お前さん…何か前とは変わってきてる様に見える」
うわ…
流石、じいちゃん
「そのせいで、これからも今回みたいな事が、またあるかもしれん。ただお守りを渡すより、ちゃんと寺に来て、一度でもお勤めに参加した方がいい」
「……分かったよ」
「はい!はい!おつとめ、四葉も行く~~!」
四葉が、元気いっぱいに手を挙げている
「はっはっはっ…四葉、お勤めは、朝物凄く早起きだぞ?起きられるかな?」
「起きる!四葉、頑張る!」
「まあ、好きにせい。とりあえず、大和は…ほれ、この数珠でも持っとれ」
「ありがと、じいちゃん」
「なんだか、すっかり疲れたから、じじぃは退散するぞ」
そう言って、じいちゃんが去ろうとして
「あ、お父さん送ります」
「いらん、いらん。早く晩ご飯いただきなされ。どれ、タクシーでも呼ぶか」
「じいちゃん、俺呼んであげるよ」
大和がタクシーを呼んで
じいちゃんは、なんだか疲れた様子で帰って行った
すっかり忘れてた夕食
大和も、シュウも一緒に食べる
「しっかし、結叶…せっかくの研修旅行が、散々だったなぁ」
「でも、1日目は旅館に着くまで、皆と一緒に行動出来たよ?あと、皆と違う時間だけど、旅館のお風呂も入れたし、朝ごはんも食べれた」
「ユウ…幽霊にキスされるって、どんな感じ?ちゃんと分かるの?」
「ぶほっ…げほっ…げほげほっ…」
「父さん、大丈夫?」
四葉の質問に
俺じゃなく、父さんがむせた
「ちゃんと分かるよ?普通にキスされてた。すっごく唇も舌も冷たかった」
「ふ~ん?ちゃんと分かるんだぁ」
「しっ…し、し、舌…?!」
「あら、結叶…凄いキスしてるのね~」
「ユウ……」
あ…シュウが…
物凄く悲しそうな顔をしている
「えっと…少し……少しだけだから」
そう…
キスは、そんなに長くなかったよ
「そう…ユウの傍で眠らせてもらえば良かった」
「いや、でもさ…なんか、幽霊の力なの?俺が唸ってても、先生達誰も起きてくんなかったよ?」
「そうなんだ…」
「ゆ…結叶は…そういうキス…初めてだったのかな?もしかして…幽霊が、ファーストキスとか…」
あ、なるほど
父さん、俺のファーストキスの心配してくれてたんだ
「違うよ、父さん。安心して」
「ち、ち…違うのか?!結叶…ファーストキス…キス……もう…誰かとしてたのか…」
「うん…」
あれ?
それなら、良かったじゃないのか?
なんで、そんな泣きそうなの?父さん…
「大和は…そうだろうなと思ってたが…結叶まで……皆…大人になって……俺から離れてくんだっ…」
「あらあら…お父さんったら、モテる息子で良かったじゃない?高校卒業しても、ファーストキスもまだなんて、そっちの方が心配よ」
「け…けどっ…せめて高校までは……結叶は、そんな事ないって信じてたのに~」
そんな…ショックな事だったのかな?
大丈夫だよ…相手は、シュウと、大和と、クラスメイト(男子)だから
なんか、ちゃんとしたファーストキスじゃないよって、言ってあげたいけど
それはそれで、びっくりさせるかもしれない
「じゃあ、四葉がお父さんにキスしてあげる~」
「四葉~!してくれるのか~?」
「うん!お父さん、ちゅ~」
「四葉~!」
四葉って凄い
なんて言うか
時々、誰より凄いのでは…と思う
なんだかんだで、今日の撮影会はなし
明日は、振替休日で学校が休みという事で
「じゃあ、ユウが心配だから、シュウ君泊まってくよね?」
という、またしてもNoと言わせない四葉の一言で
シュウは泊まってく事となった
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