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好きになりたい

トクン…トクン…トクン…トクン… 規則的な心地いい音 休む事なく…乱れる事なく… シュウの…心臓の音… 「シュウにあんな風にされたら…」 されたら… きっと彼女なら、もっと好きになっちゃう 彼女じゃなかったら、好きになっちゃう 彼女じゃないのに、あんな事しないか 彼女じゃないのに… されてる俺は? 好きって気持ち、よく分からないのに なんで、そう思ったんだろう? 好きになっちゃう…って… どんな気持ち? 俺は… シュウだから、嫌じゃないのかな シュウだから、気持ち悪いって思わないのかな でも…大和のキスでもふわふわするし… やっぱり、よく分からない 難し過ぎる もう眠い シュウの胸の中…気持ちいい シュウの撫でてくれる手…気持ちいい おやすみ…シュウ… ピコーン……ピッ…ピッ…ピッ… 時々…心臓がギュルンってなる嫌な感覚… その時、心電図には、大きなお山が見える 大きなお山は、時々1個なら大丈夫って言ってた 体の中の心臓の事なのに こんな風に機械で見れるの不思議 「蓮、大丈夫?」 「うん。苦しくなくなってきたよ」 「そう…良かった」 「風邪ひいちゃったから、苦しくなったの?」 「そうね。風邪治そう!って体が頑張ったり、咳をして疲れたりしちゃったのね」 いっぱいいっぱい気を付けてるのに 皆よりずっと家の中に居て 外出る時はマスクして 毎日ちゃんと薬飲んで なのに… 「酸素やったから、もう大丈夫だよ」 「そう?じゃあ、お母さん1回荷物取って来てもいい?」 「……僕、もう1人で大丈夫だよ」 「何言ってるの?蓮はまだ6歳になったばかりなんだから、1人で大丈夫な訳ないでしょ?」 「大丈夫だよ?慣れてるもん。お家と同じくらい、知ってるもん」 「……蓮」 僕が入院する度、お母さんは忙しい びっくりして…心配して… いつも忙しいのに、もっと忙しくなる そして、葵はお母さんに会えなくなる 「分かった。でも、せめて今日は居させて?そうじゃないと、お母さん帰ってからも心配で眠れない」 「うん。分かった」 荷物を取りに行くお母さん きっと葵は、泣いている 葵は、泣いても僕みたいに苦しくならないけど 葵に泣いて欲しくない 「蓮君。お母さん一旦帰ったけど、大丈夫?何かあったら、ナースコールね?」 「僕、お母さん居なくても大丈夫だよ?」 「蓮君強い!でも、きっとお母さんも、心配で寂しくなっちゃうからね」 「?葵が居るから大丈夫だよ?」 「そうね。でもね、お母さんは少しでも蓮君と居たいんだと思う」 その時は分からなかった もう俺だけの母さんじゃない 葵の母さんでもあるんだから 葵と居るのに寂しいって、どういう事? 俺より小さな葵が居るのに なんで、俺と居たいのか 後々…分かってくる 俺は、生まれた時から早く死ぬって分かってたから 母さんは、少しでも生きてる時間に、一緒に居たかったんだ そんな俺を生んだ母さんは… ずっとずっと、自分のせいだって思ってたんだ だから、俺の為に何か出来るのが どんなに忙しくても、俺の為に出来る事が きっと…救いだったんだ 格好つけて、大丈夫なふりして いいお兄ちゃんぶって 結局は… 母さんの大切な時間奪っちゃったんだ 「…ん…ごめん…母さん…」 あの頃は、幼すぎて分からなかったんだ 素直に甘えたら良かった けど、俺なりに皆の事考えたつもりだったんだ 「…ほんとは……寂しかったよ…」 慣れてたのは嘘じゃない けど… あそこは…知らない方がいい事… 知ってしまう場所だから 現実を… 自分の未来を… 少しずつ知ってくのは…怖い… 「ユウ…結叶…」 ? 「穂積…結叶……ユウは…穂積 結叶だよ……蓮に…戻らないで…」 あ… シュウの声… 「……シュウ?」 「ユウ…結叶……蓮じゃないだろ?ユウは…結叶だろ?」 「うん…大丈夫だよ…シュウ」 「ユウ…」 ぎゅ~っと、シュウが抱き締めてくる また…シュウを不安にさせる寝言言った? 「シュウ…大丈夫だから…」 「ん…」 蓮が居て…俺が居る 繋がってるんだけど 普通は覚えてないから、不安になるんだろな 「シュウ…シュウも…誰かの生まれ変わりだよ?覚えてないだけ。たまたま俺は覚えてただけ…そんな特別な事じゃないよ?」 「知ってる…けど……普通そういうの…小さな頃に覚えてて忘れてくもんだろ?ユウは…小さくもないし……今になって…あまりにも覚えてるから…」 やっぱり普通が1番 どんな事でも、他と違うって 自分だけじゃなく、周りも不安にさせるんだ 「不安にさせて、ごめん。けど…どんなに思い出しても…穂積 結叶は消えないよ?」 「頭では分かってる…けど……夢の中…蓮になってる事多いから…」 「急に思い出しちゃったからね。しばらくは、そうなっちゃうかも」 ぎゅっと、シュウが力を入れる 「シュウ…大丈夫。蓮の人生が14年と何ヶ月だったかは覚えてないけど、きっとそろそろ追い抜くよ?結叶の人生の方が長くなる。思い出も、まだまだ増えてく」 「たまたま…なんだろうけど……俺が…ユウの事好きだって言ってから…色んな事起きてる…俺にはどうする事も出来ない様な事ばかり……怖い…」 「シュウ…」 そっか だから、シュウ… 自分が言ったのがキッカケでとか思って それで益々、そんな考えになってるのか 「シュウが言った事がキッカケなんて偶然、あるのか知らないけど…これから何が起こるのかも分からないけど…それでもシュウ…隣に居てくれるんだろ?」 「ユウが…いいなら…」 「シュウが居るだけで…落ち着く…安心する…」 「ん…俺も……」 「じゃあ…とりあえず…それで……いいんじゃ…ね?」 世の中には 信じられない事も、信じたくない事も、理不尽も、ガッカリも… それはそれは沢山あって それが、何かのキッカケなのか、そうでないのかなんて、誰にも分からなくて それより そんな時、傍に誰が居てくれるのか その時、どう考えられる自分で居れるか それを作ってくのは、今日の自分だ 俺は… そんな時でも、皆が居れば何とかなる また、頑張れるって思える様な人達に囲まれてる 凄くラッキーな人生だ だから、その人達にも、そう思ってもらえる様な人で居られるように、頑張んなきゃ 「……ん」 朝? 「ユウ…おはよ」 「おはよ…シュウ起きてたの?」 「今、起きた」 だんだん頭目覚めてきて 昨日の事、思い出す 「ねぇ、シュウ…聞いていい?」 「何?」 「なんで昨日、あんなとこに指入れたんだ?」 「っ?!」 あ… シュウが、ビクッてなった 「あ…ごめん。言いたくないなら、いいけど…」 「………男…同士で…する時…」 「え?何?」 「……男同士のセックス…あそこに…入れるんだ」 「え…男同士って、指入れるもんなの?」 「え?…いや…最終的には…違うけど…」 「ふ~~ん?でも、入れてる方も入れられてる方も、いい思いしないんじゃない?」 だって、何度も言いますけど アレの出口ですよ? そんなとこ、触りたいと思う奴も、触られたいと思う奴も、居なくない? 「ごめん…気持ち悪かった?」 「いや…気持ち悪いのはシュウだろ?」 「俺は…嬉しかった」 「…えっ?!なんで?!」 「ほんの少しだけど…ユウの…中…触れる事出来たから…」 俺の…中… え? 中って…腸? 腸…触りたかったの? 「……えっと…よく分かんないけど…シュウが気持ち悪くなってなくて、良かった」 「ユウは?不快だった?痛かった?」 「正直…汚ないとこ触られてるってのしか…あとは、もう…そっちに集中出来なかった」 「そっか…ユウが嫌な思いしてなくて、良かった」 好きになるって、そういう事なの? まあ… 男女でも…セックスって… アソコにアソコ…入れるんだもんな 女の人のアソコが、どんな風になってるのか知らないけど 言わば、腸みたいなもんか 内臓の一部か でもさ、あんな汚ない物出て来るとこではないよな? 「ねぇ、胸さ…なんかキスされてる時みたいな、堪えられない感じだったんだけど…皆そうなの?」 「女の人は…そうだと思うけど…男の人だと珍しいと思う」 「えっ?!男だと…普通、あんな感じにならないもんなの?!」 「多分…俺も詳しくないけど…」 なんと… 俺…変なのか? 「ちょっと…シュウの触っていい?」 「いいけど…」 シュウの乳首を触ってみる ふにふに…さわさわ… あと、何だっけ? そうだ…摘まんでみる 「ん…」 え…それだけ? 「シュウ…舐めていい?」 「いいけど…ユウはいいの?」 「いいのって?」 「俺のなんて舐めて…気持ち悪くないの?」 「?ないけど?」 気持ち悪い、気持ち悪いって何なんだ? シュウの乳首をペロッとしてみる ペロペロ…ペロペロ… 「ふっ…ユウ、可愛い」 なんと?! 余裕で笑ってる! 「なんで?!なんでなんで?俺、弱いから?」 「弱いって言うか…ユウは、元々感じやすい体質だから…」 「感じやすい?…体質?」 「ん…ユウ…俺の腰の辺り触って?」 「腰?」 言われた通りに腰の辺りを触る 「少しは、くすぐったいかなって思うけど…俺は、そこまでじゃない。けど、ユウは…」 す~っと、シュウが服の中に手を入れて、腰の辺りを触ってくる 「んっ…やっ…くすぐったい…」 「ん。同じ事しても、ユウは感じやすいんだ」 「くすぐったいのが…感じるって事?」 そう言えば、大和も… くすぐったいが大事とか言ってた様な… 「ユウはね…多分、相当感じやすい体質だと思う」 「やっぱ…弱いからかな…」 「それは関係ないと思うけどな」 元通り、シュウの隣に戻ると 「んっ…シュウ?」 シュウが耳を触ってきた 「ユウは…耳も…首も…」 「んっ…くすぐったいって…」 俺の体質もあるんだろうけど… シュウの触り方…なんか… 俺とは違う気がする シュウの顔見て…そんな風に触られると… 益々… 「ぁっ!…シュ…胸…無理…」 シュウの腕を掴むと… 「ん…ごめん。ユウが可愛いくて…すぐ調子に乗る……もう、一緒に寝るのやめる…ユウが寝てる傍には近付かない」 服ん中から手を出して ぎゅっと俺を抱き締めながら、シュウが言ってきた もう…シュウと一緒に寝れないの? こうやって一緒に寝るの…終わり? 「ユウが優しいのいい事に、ごめんな?ほんとは離れた方がいいんだろうけど…」 離れ… 「やだ!」 シュウにしがみ付く 「ユウ…」 「やだ!離れない!シュウとずっと居る!」 シュウが…離れちゃう 俺じゃない誰かの傍に… 「離れないよ。でも、もう一緒には寝ない」 「~~っ…少しの間…じゃなくて…もう、ずっと?」 「ずっと。ずっとユウの事好きだから、すぐに、さっきみたいな事したくなる。俺は、そういう事していい人間じゃない」 していい人間じゃないって何? 「していい人間って?」 「ユウの彼女。ユウの好きな人。ユウの恋人でもないのに、ほんとはあんな事…許されないんだ」 俺の彼女… 俺の好きな人… 「好きって?どんな気持ち?」 「言葉じゃ…難しいな。きっと好きな人できたら分かるよ」 「~~っ…俺もっ…シュウの事好きになりたい」 「……ありがと…でも、そう思ってなるもんでないから…」 「シュウと…ずっと一緒がいいっ…」 「ん…ごめん…関係壊して…」 好きになったシュウが悪いの? 好きになれない俺が悪いの? シュウと…だんだん離れてくしか…ないの?

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