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瀧花先輩
「東雲~」
「ん~?」
「今日の帰り、俺ん家寄ってかない?」
「おお」
あ…
ダメだ
行かない方がいい
やな事…あるから
「東雲…」
「え?何…」
何が起きてる?
「東雲…」
「いや、ふざけ過ぎだって…ちょっと…」
「ふざけてるだけなんだから…ちょっとくらい、いいだろ?」
ふざけてるだけ
ふざけてんのに
本気で怒んの、おかしいか?
「やめろって…」
「男同士なんだから、ただの遊びだって」
「こんな遊び楽しくねぇって…」
「俺は興味ある…東雲だって男なんだから、こういうの興味あるだろ?」
男なんだから…
興味ないと、おかしいのか?
「んっ…」
「気持ちいい?」
「やっ…やめろって…」
「もうちょい気持ち良くなって」
「もっ…やめろ…ほんとっ…」
ほんとに…
気持ち良くなってしまう
こんなのおかしい
友達同士でこんなの…
「~~っ…ほんとっ…もっ…」
「だいぶ気持ち良くなってきたね?」
「っ?!なっ?!」
「大丈夫。気持ち良くなってて?」
「どっ…どこ触って?!」
「いいから、ほらほら、前…もっと気持ち良くしてやるから…」
「いっ?!…痛っ!痛い!やめろ!」
「おい…」
「やだ…やめろ…」
「おい…」
「…やだ…触んな…」
「おい…朔…」
え?
朔…って呼ぶのは…
「……大和?」
大和?
なんで大和が…
「なんで大和…」
「寝惚けてんのか?俺、お前の部屋泊まったろうが」
「……あ…そうだな…そうだったな」
「…悪夢か?」
「……いや…起こしたか?悪かったな」
あんなの…忘れてた
なかった事にしたくて
すぐに考えない事にして
ほんとに…忘れてた
今でも…夢だったんじゃないかって思う
「何…夢ん中で俺とシてたの?」
「違うわ、アホ」
「じゃあ、クラスの奴らにされてる妄想?」
「んな訳あるか」
「じゃあ…いつの…誰に…何された記憶?」
「え?」
記憶?
なんで大和…
「…ただの夢だっつうの!寝るぞ!」
「お前が起こしたんだろが」
「はいはい、悪かった。おやすみ」
寝よ
考えんな
また忘れとけ
すぐ寝たら
また忘れられる
朝か…
なんか…あんまり眠れなかったな…
「おい」
「え?…うわっ!大和?!」
「何度驚けば気が済むんだ」
「そりゃ、お前…」
悪魔が、朝っぱらから居たら
心臓に悪いんだよ
「いいか?俺は、訳あって今日も明日も、じいちゃんの寺に泊まらなければならない」
「はあ?あっそ…」
「お前…俺が居ないからって、誰かん家泊まりに行ったりするなよ?」
「あ?何だ?そりゃ…」
大和が寺に泊まるのと
俺が誰かん家泊まるのと
一体、何の関係があるんだ?
「チッ…頭の悪い馬鹿は、手がかかる」
「あ?なっ…何…」
大和が、舌打ちしてベッドの上乗ってきた
とりあえず、顔ガード
ってか
ベッドの上ってか
俺の上乗ってきた
「何?なんで怒ってんの?」
「お前が馬鹿だから」
「いや…意味分かんないんですけど…」
「ちょっと見せてみろ」
「え?」
大和が、首筋ジロジロ見てくる
何?
昨日、何もしてませんけど?
「だいぶ消えたな…」
ああ…噛み痕か
「お前の周りも、馬鹿ばっかだが、無いよりマシだろ」
「はあ?もう噛むなよ?ほんっと痛かったんだからな…っ…」
普通にキスマーク付け出した
「お…おい……あんま、見えるとこ付けんな…」
「馬鹿だから、説明してやる。見えなきゃ意味がない」
「いや…そっ…かもしんないけど…」
1個ずつが…長い!
すげぇ執拗に付けてくる
「えっと…大和……今日って普通に学校だよな?」
「そうだな…お前、今日体育は?」
「あ?体育あるけど…そろそろ準備しないと…って、おい…」
大和が、俺をベッドに倒して
服、捲り上げ始めた
怒りたいけど…怒鳴りたいけど…
なんか…
こういう時の大和
怖くて、何も言えない
「おい…お前も準備しないと…」
胸にも幾つも付けていく
「なぁ…聞いてる?」
え?
脇腹から…
下着の縁に沿って…
「ちょっ…大和…」
それ以上はヤバいの、分かるよな?
中心に向かって…
「~~っ!」
大和が、下着の上から触ってきた
無理~~!
「ふっ…」
耳に息吹きかけんな!
「これ…トイレ…行かないと、ヤバいんじゃないの?」
「いっ…」
言われなくても分かっとるわ!
大和から離れて、トイレに行き…
はぁ…
朝っぱらから、何やってんの?俺…
悪魔が居る朝は、最悪だった
けど、何となく気まずくなりそうだったから
そのまま、大和とは日曜日まで会わないんだと思うと
少し、ほっとした
学校では、相変わらず、あの話…
ウンザリするけど
なんか、昨日までの焦りを感じない
好きに楽しんでてくれ
「お~…東雲がまた、エグいの付けてんぞ?」
「お?噛み痕か?」
「いや、キスマークだけど、なんか濃厚…」
「うわ…ほんとだぁ…」
まあ…
見える場所に付けられたんだから
見付かるだろな
「いいなぁ…東雲、愛されてんなぁ」
愛されてねぇよ
「大胆なキスマーク付けて、顔色1つ変えずか…すげぇな」
そりゃ、そういう意味で付けられてねぇからな
「男同士も遊べるけど、やっぱ彼女欲しいなぁ」
そりゃそうだ
不毛な遊びはやめろ
「あ、東雲が逃亡する」
「着替えに行くだけだ」
「え~?昼休み、まだまだあんのに?」
「ゆっくり着替えたいんだよ」
ってか、お前らに色々見られたくねぇんだよ
「あっやし~!」
「あっやし~!東雲あっやし~!」
「俺も早く着替えに行こうっと♪︎」
「俺も~♪︎」
こうなったら、どうしようもない
俺が遅く行こうが付いて来る
好きにしてくれ
「………おい」
「何?」
「自分の着替えに集中しろ」
「ちゃんと着替えてるって」
「各自、自分のジャージを見て着替えろ」
上着を脱ぎ、ネクタイを外す俺への視線が多数…
「やっぱ、あっやし~♪︎」
「早く脱げよ~♪︎」
「何隠してんだ~?」
ダメだ
一度興味を持った、こいつらは、何言ってもダメだ
仕方なく、ネクタイを外し
シャツを脱いでると…
「おお…やっぱ、胸にも付いてたかぁ」
「すげぇな…東雲、ラブラブだなぁ」
「彼女、お前の事、好き過ぎん?」
彼女じゃねえし
どっちかと言えば
俺が彼女的な立場になる訳だし
「んなっ?!」
シャツを置いた、俺の両腕の間から来栖が、ひょっこり顔出した
「なんつ~とこから出て来んだよ?!」
「だって、すげぇよ!ここ、下着に沿って…」
「さっ…触んなっ…ってか、何気にズボン下げてんじゃねぇよ!」
来栖が、ズボンを緩めながら
大和の残したキスマークに指を沿わせる
「どこどこ?!」
「ほら、ここ…」
「どれ?見えない!」
「ここだって…」
「こっち向けろって」
Tシャツを取ろうとしてた俺の体は
ぐるんと逆を向けられ
「なっ?!おい!」
「お~!すっげぇ…」
「際どいとこ、攻めてくんなぁ」
「こりゃ、このままフェラしてもらったな?」
してもらうか、ボケ!
「あ、まさか…」
清水が、俺の下着に手をかける
「なっ…何すんだよ?!」
慌てて清水の手を押さえる
「いや…もしかして、この中にも付いてんのかなぁ…と」
「付いてる訳ないだろ?!」
あんなとこ、付けれるか?!
ってか、付けさせるか!
「いいなぁ…なぁ…彼女のフェラ気持ちいい?」
「何故、された前提なんだよ?」
「だって、こんだけの事やってたら、しない訳ないだろ?」
「どうだっていいだろ?着替えさせろ」
清水と、来栖の手を振り払って着替える
ったく…
「何だよ…もっと自慢すりゃいいのに」
自慢出来るか?!
幼馴染みの男に付けられてんだぞ!
「そうそ…男同士で慰め合ってる俺らに、彼女とのイチャイチャぶりを、もっと披露していいんだぞ?」
「さぞかし、俺らが惨めに見えてるだろ?ほらほら、自慢しろ?」
お前ら…
現実知ったら
きっと俺を惨めな目で見る事になるぞ
「はぁ~…」
疲れた
ようやく終わった
「お疲れ様です。お先に失礼します」
「おお、お疲れ~」
後は、帰るだけ
大和も、ああ言ってたし
今日は頑張らずに寝よ
そう思ってしばらく歩いてると
見覚えのある姿…
あれ?あれは…
「瀧花 先輩?」
「…え?…あ…東雲?」
一瞬、別人かと思った
瀧花先輩は、バイトの先輩で
優しくてイケメンで、凄い人気者で
こんな…道の端のガードレールで
俯いてる姿…
「バイト帰りか?」
「はい……先輩、具合悪いんですか?」
「具合?…悪そうに見える?」
「……いえ…でも…なんか…」
元気はない
何か…あったのかな
「何でもないよ。じゃあね」
「はい…」
そう言って歩き出した先輩が…
「おっ…」
「あ…すいません」
すぐに、ふらついて、人にぶつかった
大丈夫かな…
と、思ってたら
道の端の自転車にぶつかってって
倒れた自転車を起こしてる
あんな先輩、初めてだ
いつも、笑顔でテキパキ働いて…
「先輩、送ってきます」
「え?東雲?」
何だか知らないけど
こんな先輩1人で歩かせんの、心配だ
「いや…ごめん。大丈夫だよ。俺の家、すぐ近くなんだ。東雲は、もう帰らないと、家族も心配するよ?」
「俺の家、皆帰って来るの遅いから、連絡だけしとけば大丈夫です」
『友達の家寄るから、帰り遅くなる』
「…っと、これで大丈夫です。すぐ近くなら、行きましょ?」
「ありがとう…ははっ…情けないとこ、見られちゃったな」
「誰にも言わないので、大丈夫です」
「……東雲は…優しいな…」
「俺にも居るんですよ。優しくて、頼れる奴演じて…時々疲れ果てて来る、腐れ縁が…」
あの悪魔とは全然違うけど
きっと先輩も、何か疲れちゃってんだ
人気者って、大変なんだな
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