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幼馴染みで腐れ縁

ん? なんだ?この髪… ユウのじゃない ちょっと硬めな… この匂いは… 「……そうだった」 こいつと寝たんだった 俺の胸の中で、すやすや寝てやがる 「はぁ…」 結局、お前は昨日何して来たんだ? もう、泣いてないならいいやと思ったら 夜中、なんか知らないけど ベッドの下座って、手握って泣いてるし ほんとに小さい頃の夢? それとも昨日の事とか? だいぶ前の事とか? 「ガキじゃねぇんだから…言いたくねぇか…」 朔の頭撫でると 「ん~?」 ずっと同じって訳にはいかないよな ずっと朔の近くに居られる訳じゃない お前が…1人で闘ったり、泣いたりするのに 慣れなきゃな 「……馬鹿だから…心配なんだよ」 「ん~~?…馬鹿じゃねぇ…よ…お?」 「朝から馬鹿面だな」 「んなっ?!」 「待て。急に動くな」 起きた途端、俺から物凄い勢いで離れようとする朔を押さえる 「なっ…離せよ!」 「朝から大声出すな。そして、聞こえなかったのか?急に動くなと言ったんだ」 「何でだよ?!」 「お前に潰されてた右腕が死んでるからだ」 「みぎう……あ…」 ようやく状況を飲み込めた馬鹿が、大人しくなった 「わ…悪い…どうすればいい?」 「出来るだけ、ゆっくりと離れろ。少しずつだ」 「わ…分かった」 朔の体が僅かに動く度 右腕だけ、電流流されてるみたいだ 「大丈夫か?」 大丈夫じゃねぇよ デカイ体で、押し潰しやがって 「大和?1回ストップ?離れる?」 「~~っ…さっさと…離れろ…」 「分かった」 朔が離れても しばらく、感覚が麻痺してる 「大丈夫か?マッサージする?」 「…絶対…触んな…」 馬鹿か? 今、触るとか…馬鹿か? 馬鹿だった 「はぁ…」 「回復した?」 「ああ」 「悪い…下敷きにしてたの、気付かなかった」 ベッドの下に座って、心配そうに見ている なんで夜中… そこに座ってたんだろ いつの間にベッドから抜け出してたんだ? 「お前…1回布団で寝てたのか?」 「寝てないけど?」 「なんで、夜中そこに座ってたんだ?」 「目が覚めたから、スマホ取りに行って、そのまま布団で寝ようとしたんだけど……」 てっきり、布団で寝てて 夢見て泣いて、俺んとこ来たのかと思った 寝ようとしたんだけど…何だ? 「だけど?」 「……だから…目覚める前に見てた夢…思い出して…なんか…泣けてきたから、お前んとこ行ったんだよ」 「お前、よく夢見て泣いてんのか?」 「は?!んな訳あるか!ガキじゃねえんだよ!たまたまだわ!」 「あっそ…」 俺と寝てたから、昔の事思い出した的な? 別に、シュウの事で泣くならいいんだけどさ 「お前こそ!なんか…あったんじゃねぇの?」 「は?なんかって?」 「いや……別に…何もないならいいんだけど…」 昨日…すっかり弱ってたからなぁ そりゃ、そう思うか 「なんか、弱ってた。けど…もう大丈夫だ」 「あっそ…あのさ……別に、俺にどんなん見られたっていいじゃん?いっぱいになる前に、俺んとこ来るなり、呼び出すなりしろよ」 「いっぱいになってんの、気付かねぇんだよ。ってか、お前もだからな?今までみたいに、傍に居ないんだから、何かあったら…連絡しねぇと、分かってやれねぇんだからな…」 分かって欲しくもないんだろうけど ほんとのほんとに困った時とか あるかもしんないし… 「分かった。今んとこねぇよ。昨日は、ほんとに…先輩がお前みたいに、弱ってたんだよ。だから、少し慰めただけだ。俺は何もされてない。心配かけて悪かった」 「別に…お前が必要じゃないなら、呼ばなくていい。たまたま、間違えて俺んとこ連絡きたから…俺が勝手に心配しただけで…」 ほんとに気にしなくていい事だったんだ ちょっと遅くなったけど おばさんに、ちゃんと連絡しなくて悪かったって言えば、それで済んでた事だったんだ 「なんか…大袈裟に騒いで…悪かったな…」 「……ぶっ!…お前…どうしたんだよ?何謝ってんの?」 「何って…お前こそ、何笑ってんだよ?」 「お前は、自分が悪かろうが、間違ってようが、謝ったりしないだろが。何、謝っちゃってんだよ?まだ弱ってんのか?」 「よ…弱ってない!俺はお前と違って、色々考えんだよ!」 馬鹿に気遣って損した 馬鹿は…馬鹿だから… 俺が悪くても、間違ってても、謝ったらおかしいって思ってるらしい そんな事したら…心配されるらしい 「考え過ぎなんだっつ~の。だから、あんな弱るんだよ。馬鹿な奴…」 「お前に馬鹿って言われたくない」 今までとは、少し違う気持ち 関わり方も、少しずつ変わってく そうだな… 色々考えなきゃ そのうち、あんまり気にしなくなる 「お前さ…寝言言うって、知ってる?」 「…は?ユウでもあるまいし、言わねぇよ」 「まあ…自分じゃ覚えてねぇし、誰かと寝る事ねぇもんな…」 え? 俺…なんか言った? 「……何…言った?」 「…いや…別に、たいした事は言ってねぇけど…」 「嘘吐くなよ?」 「たいした事は言ってねぇけど…会話成立してたから」 「…はあ?!嘘つけ!そんなん目覚めるわ!」 「いや、だからさ…一応、今後の為にも教えとこうと思って…」 マジで? 俺… 寝言言ってて、寝てんの? そんなん、他の人になんか 絶対絶対見せらんない 「俺…寝言の時…どんな感じ?」 「どんな感じって?」 「なんか…話し方とか…いつも通りな感じ?」 「ああ…そうだな…話し方は、いつも通りだ」 良かった なんか、別の人格とか出てたら、あり得ない 「今日、じいちゃんとこ行くのか?昨日、悪かったな」 「ああ…じいちゃんから貰った数珠、壊しちゃって…1ヶ月間、土日の朝のお勤め来いって言われたんだよ」 「数珠壊すって…どうやったら壊れんだよ?」 「ユウに取り憑いてた、変態幽霊を追っ払った」 「………は?」 ああ… 今思い出しても、ムカつくな 旅館でも、散々ユウにキスして、触ってたんだろな 「ユウにキスするわ、居心地いいから居座るとか言い出しやがって…マジでムカついたから、追っ払うのに数珠使ったら、壊れた」 「……お前…じいちゃんの跡でも継ぐの?」 「さあ?今んとこ、そんな気は全くないけど」 「そんなん見えて…怖くねぇの?ってか…キスする幽霊とか居んのか…」 「幽霊だって、少し前まで人間だからな。幽霊見えるのより、ユウがあんな事されてんのに、見えない方が恐ろしいわ」 だってユウ、全然気付いてなかったし ユウが調子悪いのなんて、珍しくないから 他の人達も気付いてなかったし それをいい事に、あいつ…調子に乗りやがって… 「大和から見て…ユウがシュウを好きになるって事…あると思うか?」 「本気かどうかは分からなくても…シュウの情には流されんじゃねぇの?キスしても、嫌じゃなさそうだったし、望みがない訳ではないだろ」 「それで…ユウは…後から泣く事になんない?」 「なんないだろ。シュウなんだから」 何をしても、しなくても 何が起こっても起こらなくても 多分、あの2人が 泣いて後悔する様な事はないだろう 「そっか…大和がそう思ってんなら…」 「なんだよ?シュウに諦めろとか、言うつもりだったのか?」 「いや…シュウが、どれだけユウの事好きなのか…見てれば分かるからさ…けど、ユウが泣く事になったら…それは、シュウが泣く事だから…」 「ま、泣きながらでも、2人で決めてくさ。後から泣いて、後悔する前に、俺達に相談してくんだろ?」 「そっか…そうだな」 2人共、素直で優しくて真っ直ぐで どちらかを傷つけるかもしれないなんて思ったら 迷わず相談してくるだろう 「それで…その…ほんとに明日は、やらなくていいのか?」 「朔がやりたいってんなら、やってもいいけど?」 「やりたくねぇわ!」 「じゃあ…あのグッズは、好きに使っていいぞ」 「使わねぇよ!なんか、形エグくて、怖ぇんだよ!」 「ピンクで可愛いのにしてあげたじゃん。使わないなら、いつか使うかもしんない、ユウの為に取っとけ」 ほんとは聞きたい お前…なんであんなに痛くするなって言うんだ? 誰かに…ああいう事で、痛くされた記憶あんの? あの時? 別の時? けど… そんなの知ったところで こいつが、助け求めないなら 俺に出来る事なんてない 「大和?」 「何?」 「……いや…その……一応…男同士の…自分なりに調べとくから……その…シュウには…そういう事する前には…色々準備とかあんだぞって…伝えとくから…」 「ああ…そうしてくれ」 余計な事を考える…悪い癖だ 考えない 考えても意味がない… 迷惑でしかないんだから… 「さ、そろそろ起きねぇと、四葉が突撃して来るぞ」 「そうだな…さてっ…起きるか!」 幼馴染みで腐れ縁のこいつの事は 会う時以外、頭ん中から消そう そしたら… これからも幼馴染みで腐れ縁やってけるだろ? 朔…

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