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ウザいお兄ちゃん?
お風呂から上がって、階段上ってくと
「うおっ!」
あれ?
朔兄の声?
今日って大和、じいちゃんとこ泊まりに行くんじゃなかったっけ?
朔兄が来てるって事はやめたのかな
パタン
朔兄、泊まってくのかな
中学までは、たまに泊まりに来たり、大和が泊まりに行ったりしてたけど
高校別になったら、あんまりそういうのなくなった
何かあったのかな
「はっ?!」
時々、朔兄の大きな声だけ聞こえてくる
大和と朔兄は、俺達とは全然違う関係
多分、知らない人が見たら、仲悪いんじゃないかって思うかも
でも、仲悪いんじゃないかって見えるのに
凄く繋がってる…と、思う
『朔兄、うち来てる』
『何かあったのかな?』
大和は、朔兄の前でだけ別人
俺達の前でも、知らない人達の前でも
優しさしか見当たらないのに
朔兄の前でだけ、色んな大和が見える
ヴヴ ヴヴ
『遅くに帰って来たと思ったら』
『物凄い勢いで階段駆け下りて、大和にお礼行って来るとか言って出てった』
お礼…
言われる様な事、何かあったんだ
お礼言いに来たにしては
なんか…
聞こえて来る声が…あれだけど…
『大和と朔兄って、不思議な関係だよね?』
何でも知ってて
誰より優しくて
皆に信頼されてる大和
ヴヴ ヴヴ
『大和、たまに朔兄の部屋で寝てる事ある』
そうなんだ
…なんか、ほっとする
だって大和…完璧だから
疲れちゃわないかな?って思うから
『良かった』
朔兄は、嫌にならないのかな
俺達みたいに優しくしてもらえなくて
なのに、休む時は朔兄のとこ行って
お礼…
俺達には分からない事が、沢山あるんだろな
朔兄が、そんなに慌ててお礼言わなきゃって、思う様な事、大和もしてあげてるんだ
俺達には見せない大和を
全部受け止めて
それでも大和の傍に居る朔兄は
もしかして、誰より凄いのかもしれない
「おはよう」
「おはよう、結叶」
「ユウ、ユウ!四葉の最新作見る?!」
「ふっ…四葉、朝から元気。ちゃんと夜寝たのか?」
「うん。早起きして描いたの!」
「ユウ、朝ごはん食べる?」
「うん」
椅子に座ると、四葉が最新作なる物を持って来た
「見て見て!四葉の絵力」
「どれどれ~?」
そう言えば、最近撮影会してるけど
参考にする漫画見てるけど
四葉が描いたの、ちゃんと見てなかったな
「うわぁ…綺麗…」
「でしょでしょ!」
男の人同士だけど…
2人が見つめ合ってる絵が、凄く綺麗だ
「え?これ、何かなぞったとかじゃなく、ほんとに1から四葉が描いたの?」
「そう!凄い?凄い?」
「凄い…四葉…天才」
「やった~~!」
髪の毛1本1本まで
指先1本1本まで
瞳も…ほんとに気持ち伝わる様に見つめ合ってて
ほんとに…天才なんじゃないかな
次の絵は
後ろから抱き締めて
2人して笑ってる絵
やっぱり綺麗で
見つめ合ってないのに
ほんとに2人共
嬉しそうなのが伝わってくる表情
次の絵は…
あ、四コマになってる
見つめ合って…キスして…
うわ…
舌…舌見えてるけど?!
いいの?
四葉…こんなの描いちゃって、いいの?
次は…
キスして…
首とか胸にキスして…
「うわっ!」
胸にキスされてる人の顔…
なんか…
すっごく、やらしい顔してた!
「ユウ?」
「よ…四葉…」
「何?」
「あ…あんまり…こういうの…描かない方がいい…と思う…」
「?…なんで?」
「え?なんでって…~~っ…四葉が…もうちょっと大人になってから、知る事だから…」
四葉が、少し不思議そうな顔をしてから…
「うん、分かった」
と、にっこり笑ってくれた
「四葉、おいで」
「うん!」
俺の膝の上に乗っかってきた四葉を抱き締める
「四葉ぎゅ~~っ」
「ユウも、ぎゅ~~っ」
う~~…このまま可愛い四葉で居て欲しいよ~
ガチャ
「ふぁ~…おはよう…なんだなんだ?ユウと四葉は、朝から仲良しだなぁ~…」
「おはよう、父さん」
「お父さん、おはよう!」
「ん?なんでユウ…ちょっと元気ないんだ?」
「父さん…母さんに、四葉に見せる漫画考えてって言ってよ…」
「漫画?」
四葉の描いた絵を見せる
見てよ、父さん…
1人娘が、こんな絵描いちゃってるよ
「ほぅ~…こりゃ、大したものだなぁ…」
「はい、ユウご飯よ。お母さんが何?」
「お母さんとおばさんは…大人だからいいけど、四葉には、子供用の漫画読ませてよ…」
母さんにも、四葉の絵を見せると
四葉が、俺の上でくるりと向きを変えた
「四葉の最新作凄い?」
「すご~い♪︎あら~…この、切羽詰まった表情いいわね~♪︎お母さん、こういうの好き♪︎」
えっ?
「四葉は、おませさんだなぁ」
え?
「へへっ」
な…
なんで、父さんも母さんも笑ってられるの?!
朔兄も、シュウも合わせて
5人の中で、たった1人の女の子だよ?
まだ、小学6年生だよ?
俺がおかしいの?
「さ、結叶ご飯食べるからね?」
「うん。しまって来る」
ぴょんっと四葉が、俺から降りて
絵をまとめて、自分の部屋へと入って行く
「将来は、漫画家かなぁ…」
「まあ!じゃあ、無料で読めるわね!」
「そこまでBLにハマッてると、俺への愛情を疑っちゃうな」
「やだぁ…お父さんったら、アイドルにヤキモチ妬いてる様なものよ~」
「愛されてるって証拠だろ?」
「やだぁ~…結叶の前なのに~…結叶?」
全然笑えないんだけど
四葉…
四葉が色々知っちゃって
あんな事、誰かとするのかと思うと
泣きたくなるんだけど
「結叶…なんで、さっきから泣きそうな顔してるんだ?」
「…俺…おかしいのかな?四葉に…あんまり、ああいう事知って欲しくないって思う…四葉が…誰かとそういう事なんて…考えたくない。まだまだ、そんな事知らないでいて欲しいって…思う」
父さんも母さんも、びっくりした顔してる
びっくりなんだ
俺の考えって、びっくりなんだ
「結叶…お前…」
父さんが、近付いて来た
「おかしいんだよね?やっぱり…」
「可愛い奴だな~~!」
「え?」
めちゃくちゃ抱き締められて
頭、わしゃわしゃ撫でられてる
「あんなに小さかった結叶が、こんなに立派なお兄ちゃんになるなんてな……あ~~!もう1回10年位前に戻んないかな…必死にお兄ちゃんになってく結叶を、もっとじっくり見ときゃ良かった」
え?
父さん…なんの話してんの?
「私は、じっくり見てたわ~…小さな体で、一生懸命大和の真似しようとして……可愛いかったわぁ…」
「いいなぁ…俺も、もっと家に居て見たかったなぁ…」
え?
四葉の話は?
「ユウ…四葉の事、大切に思ってくれるお兄ちゃんになってくれて、ありがとな」
「父さん…」
父さんが、さっまでとは違って
優しく抱き締めてきた
「人それぞれ感じ方も考え方も違うから、ユウはユウなりに四葉の事を思って言う事なら、四葉にもきっと気持ち通じるさ」
「小学6年生って、ああいうの見るの普通?俺、ウザいお兄ちゃん?」
「どうかな?父さんが子供の頃とは違うし…でも、皆同じ事言うのがいいってもんでもないだろ?ウザい事言う兄ちゃんも居た方が、そんな風に思う人も居るんだなって、気付けたりもするだろ?」
父さんと母さんの会話を聞いてる限り
誰も思わないのかも
俺だけかも
「俺…やっぱり、そういうの遅れてる?」
「どうかな?でも、進んでるだけがいい事でもないよ」
「父さん…俺…精液って知らなかった…シュウ、びっくりしてた。皆知ってるんだよね?」
「……っ…そっか…それは…父さんも悪いな。何となく分かってくもんだと思ってたから…今度、ちゃんとそういう話しようか」
「うんと…とりあえず今は、大和とシュウが教えてくれてるから、大丈夫」
「~~っ…そっ…そうなんだ…うん…良かったよ」
やっぱり、何となく分かってくもんなんだ
でも、知らないなら、父さん教えてくれるもんなんだ
「なんで俺は…何となく、色んな事分からないんだろう…」
「そこが、結叶のいいところなんだよ。今は分からないし、不自由でしかないかもしれないけど、皆が欲しいと思っても手に入れられない様な…凄く大切なもの、結叶は持ってるんだよ?」
大和とか、シュウも…
おんなじ様な事言うけど…
「不自由…も、そうだけど…分からないせいで、人に迷惑や…嫌な思いさせるんじゃないかって…」
「ユウは、人の気持ちを考えられる子だよ?それでも、傷つける様な事を言ってしまったら、言い訳になってもいいから、どうしてそう思ったのか、ちゃんと話す事。それを知る事で、相手も救われるって事もあるからね」
「……分かった…父さん…やっぱり父さんだね?凄いね?」
「そうか?」
「うん」
だって、自分の事じゃなくて俺の事なのに
大和も四葉も居て、仕事もして、大変なのに
凄く分かってくれてるんだと思う
俺には、まだよく分からないけど
「さぁ、結叶、朝ごはん食べちゃいなさい?」
「うん」
分かるって事は
経験したか
そういう人に出会ったか
大人になるって
物凄く沢山の、色んな経験するんだろな
長生きしたら
14年×6とか7とか?
そんなに頑張っていけるのかな
でも、大変だろなぁって思う父さんと母さんは
幸せそうに笑ってる
誰と
どんな風に生きるか、なんだろなぁ
「あ、そうだ。昨日、朔兄泊まったの?大和、じいちゃんとこ、行かなかったんだ」
「そうね。何かあったみたいよ?泊まったって事は、仲直り出来たのね」
仲直り…
喧嘩?
朔兄、お礼言いに来たんじゃないの?
「あ、噂をすれば…」
ガチャ
「おはよう」
大和が入って来た
「おはよう、大和」
「おはようございます」
「おはよう、朔兄」
皆で挨拶すると
2人して洗面所に消えてった
良かった
いつも通りだ
「ご馳走さま」
食器を下げてると、大和が戻って来た
朔兄、まだ洗面所...
ちょっと…行ってみようかな
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