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穂積家

ゆうと君のお父さんとお母さんは 何とも言えない表情で、病室に戻って来た ほんとは自分の子供なのに 突然別人になって、あんな事言われたら 凄くショックだったよね 「あの…ごめんなさい。ゆうと君の体になってるって、知らなかったから……酷い事言って、ごめんなさい」 そう言って頭を下げると 「私達も…よく分かってなかったから、怖がらせてごめんね?」 「知らないおじさんとおばさんが居たら、びっくりするよな?」 そう言ってくれるけど 見えてるのは、ゆうと君だろうから 「どうして、こうなっちゃったのか分からないけど、先生が、少しずつゆうと君の事、知っていこう?って言うから…」 「結叶君の世界を知る事が、何かのきっかけになるんじゃないかと……すいません、よく分からなくて…」 「いえ…えっと…れん君?」 「蓮の花の、蓮という字だそうですよ」 梅原先生が説明してくれると ゆうと君のお母さんが、優しい顔で話す 「そう…蓮君。怪我はしてるけど、入院してなきゃならない程ではないらしいの。私達の家に、一緒に帰るのは、怖いかな?もう少し、入院してた方がいい?」 入院は…してたくない けど…知らない人の家… 「蓮君、無理はしなくていいんだよ?もう少し考えてから決めてもいいし、言っただろ?いつでも先生は、蓮君の味方だ」 「うん……でも…もう、どこにも俺の家族居ないんでしょ?」 「……そうだね…多分…そうだと思う」 「………先生…ゆうと君の顔…見てみたい」 「…分かったよ」 先生が、手鏡を持って来てくれた 顔の中には 見た事のない顔が写ってる 血色のいい…俺よりお兄ちゃん 郁人兄ちゃん位だ 「ゆうと君…」 「穂積 結叶って言うの。結ぶに叶うって書いて結叶」 「結叶…」 「皆には、よくユウって言われてるわ」 「ユウ…」 何だろう ユウって… なんか、聞き覚えがある様な… 「2つ下にね、四葉って妹が居て、3つ上に、大和ってお兄ちゃんが居るわ」 葵じゃなくて、四葉… 「お兄ちゃん居るんだ…いいなぁ」 「四葉も大和も、結叶の事大好きよ?」 「結叶君じゃなくなってたら…びっくりするね?」 「そうね…けど、きっと蓮君でも仲良くなれるわ。お家…行ってみる?」 いずれは、そこに行くしかないんだ ずっと入院してる訳にいかないもん 何より… 中身が俺になっちゃっても 結叶君が結叶君の家に居るって事が きっと、家族にとって大事だから… 「行ってみてもいい?」 「もちろん!」 「蓮君、やっぱり無理だと思ったら、いつでも言うんだよ?」 「そうね。すぐに言ってね?ちゃんと先生に相談するから」 「うん」 中身が結叶君じゃなくなってるのに こんなに優しくしてくれる 結叶君の為に出来る事 してみなきゃ 「さ、ここが我が家よ」 「入れるかな?怖かったら、病院に戻ってもいいよ?」 「ううん…お邪魔します」 初めて見るお家 でも、結叶君は毎日暮らしてた場所 ここに居た方がいいよね 「ソファーにでも座って?怪我は痛まない?大丈夫?」 「うん」 少しの間、おじさんとおばさんは、荷物を整理したりしてて ソファーに座って、キョロキョロ見回すけど 見覚えのある物…ないなぁ 「はい、ちょっと皆で紅茶でも飲みましょ」 「ありがとうございます」 「蓮君、嫌じゃなければ、敬語使わなくていいよ?」 「あ…うん」 「知らない人の家で、緊張するよな?紅茶飲んだら、家の中案内するね?」 「うん」 蓮って呼ばせてていいのかな この人達にとっては、結叶君でしかないのに 「あの…蓮って呼ばなくてもいいよ?」 「え?」 「結叶君の体で、結叶君の家族だから、結叶…って呼んでもいいよ?」 おじさんとおばさんは、少し驚いた顔をした後 優しい笑顔になった 「ありがとう。でも、今話してるのは、蓮君でしょ?」 「うん」 「じゃあ、蓮君にしよう?蓮君が、ちゃんと結叶になったら、結叶って呼ぶ事にしよう?」 おばさんが、そう言ってくれた 「それでいいの?」 おじさんの方を見ると 「いいんだよ。ありがとう。おじさん達の事、考えてくれて……蓮君、抱き締められたら、怖いかな?」 「大丈夫…だと思う」 「じゃあ…ちょっとだけ」 そう言って、おじさんが抱き締めてくれた 凄く大切そうに 「怖くないかい?」 「うん」 「じゃあ、おばさんにも抱き締めさせて?」 「うん」 おばさんも、凄く大切そうに抱き締めてくれる 結叶君じゃないのに 「さ、家の中、探検だ。行こう?」 「うん」 何処を見ても、全然見覚えない 俺の部屋だと言われた部屋も 全然見覚えない 俺の部屋とは全然違う 「ここで1人で眠れそうかい?」 「うん。俺、入院して1人で寝るの慣れてるから」 「そうか…蓮君は強いんだな」 そう言って、おじさんが頭撫でてくれた それから、リビングで おばさんは、忙しそうにしてたけど おじさんは、傍に居て色々話し掛けてくれた そうしているうちに ガチャ 「あれ?…あれ?!」 なんか玄関から声が… バタバタバタバタ ガチャ 「えっ?!なんで皆居るの?!なんで?!なんで?!」 女の子…四葉ちゃん? 「お帰り、四葉」 「お父さんもお母さんもユウも居る!」 「お帰り、四葉。ちょっとね、色々あってね…こっち来てお父さんの話聞いてくれるかい?」 「うん!でも、その前に…ユウ、ぎゅ~っ!」 「えっ?」 四葉ちゃんが、ぎゅ~っと抱き付いてきた 「ユウ?ぎゅ~ってしてくれないの?」 あ…いつも、してたんだ 「えっと…ごめん…」 「四葉、ちょっとこっち来て、話聞いてくれるかい?」 「うん…」 四葉ちゃんが、俺から離れて おじさんの隣に行って話を聞く うん、うん…へぇ~…ふ~ん?と聞いてから 「じゃあ、ユウは今、四葉の弟の蓮?」 「そうなるね」 「四葉、お姉ちゃん?!」 「ふっ…そうだね?」 「蓮!お姉ちゃんが、色々教えてあげる!寂しくないよ?お姉ちゃんが一緒に居てあげる!」 「……ありがとう」 お兄ちゃんが、知らない弟になっちゃったのに なんか…嬉しそう? 「良かったわね、四葉」 「うん!四葉、お姉ちゃん!」 「お姉ちゃんだから、優しくするんだぞ?」 「うん!蓮に、お姉ちゃんが描いた漫画見せてあげる!来て来て!」 「うん…」 四葉ちゃんに呼ばれるままに 四葉ちゃんの部屋へと連れて行かれる 「見て見て~。これね、お姉ちゃんが描いたの」 「う…わぁ……凄い」 「へっへ~ん!凄いでしょ!」 「うん。上手~」 「あとね、これとね、これとね…」 四葉ちゃんは、次々と見せてくれて 何故だか男の人の絵ばかりだけど 凄く上手なのは分かる 「凄いね~」 「蓮、蓮。お姉ちゃんって呼んでみて?」 「お姉ちゃん」 「うん!お姉ちゃんに、何でも聞いてね!」 「ありがとう」 しばらくそうしてると ピンポ~ン 誰か来た おばさんが、誰かと話しながら入ってくると 「ユウ!ユウ!大丈夫?!」 知らない男の人が 泣きそうな顔で、俺の元に来た 「シュウ君。ユウは今、蓮になってるから」 「……え?」 「蓮は小学5年生で、四葉の弟なの」 「……え?」 信じられないといった顔で固まった この人にとって、結叶君は、凄く大切な人なんだ 「ごめんなさい…結叶君じゃなくて…」 「蓮って……え?」 「シュウ君、ちゃんと話すね?こっちに来てくれるかい?」 「………はい」 ショック受けてる ごめんなさい 「蓮、大丈夫だよ?シュウ君はね、ユウの幼馴染みで親友」 「幼馴染みで親友…」 凄く…大切な人だ 「うん。シュウ君はね、ユウの事が好きなんだよ。それでね、ユウにもシュウ君の事好きになってもらうのが、四葉の希望」 「結叶君は、シュウ君の事、好きじゃないの?」 「四葉の希望はね、恋人として好きって意味」 「恋人?どっちも男の子だよ?」 「男の子でも、好きは好きなの!」 「へぇ…」 初めて知った 男の子でも、恋人として… じゃあ… シュウ君にとっては… ほんとにほんとに大切な存在なんだ おじさんの話を聞き終えたシュウ君が、再び俺の元に来る やっぱり泣きそうな顔をしている 「ごめん…すぐ傍に居たのに……守ってやれなかった…」 倒れた時の事言ってるのかな すぐ傍に居たなら、きっとびっくりしたよね 「あの…怪我は、大した事ないので…」 俺がそう言うと… 「君は…ユウを知らないの?穂積 結叶を、ほんとに全く知らないの?」 そう、聞いてきた 返して欲しいんだ 結叶君を… 「ごめんなさい…なんとか…結叶君、返せる様に頑張ります」 「シュウ君、蓮を苛めちゃダメだよ!」 「……ごめん…俺…今日は帰る」 そう言って、シュウ君は帰ってしまった シュウ君の泣きそうな顔が 頭から離れない それから、皆で晩ごはんを食べて 四葉ちゃんが、お風呂に入ってると 「ただいま~」 「お帰りなさい」 「お帰り、大和」 「えっ?どうしたの?」 大和… お兄ちゃんだ 四葉ちゃんの時みたいに おじさんが、説明してくれる 「なるほど…蓮…ねぇ…」 「大和、取り憑いてるとか、そっち系か?」 「いや、全然そっち系ではないな」 「そうか…う~ん…いきなり別人格とか、出るもんかなぁ」 この人が、結叶君のお兄ちゃん 格好いい 「蓮…あとで、一緒にお風呂入ろっか」 「うん…」 お兄ちゃんとお風呂 嬉しいけど、いいのかな 皆、結叶君じゃなくなってるのに、優しい 早く… 結叶君に戻してあげなきゃ きっと今頃… シュウも泣いてるかもしれない ? シュウ… なんでシュウ君じゃなくて、シュウって思ったんだろ? でも…シュウの方が、しっくりくる 結叶君の…記憶?

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