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ただいま
キス……って…
チュウって事
俺とシュウ君、チュウするの?
よく分かんないけど
それで、結叶君に戻る可能性あるの?
「ここ…座ろ?」
俺の部屋に入ったシュウ君が、ベッドに座る
「うん…」
ぽんぽんってされたので
シュウ君の隣に座る
「よく分かんないよね…俺の事も知らないし、急にキスって言われても、困るよね?」
「うん…でも、それで結叶君戻るかもしれないんでしょ?」
「……ユウに戻っても…いいの?なんか…病気だったんだよね?健康な体…もう少し居たいとか…思わない?」
正直…ほんの少し思う
どれだけ話してても、動いても
ご飯食べても、話しながら階段上っても
全然苦しくならない
薬も飲まなくていい
こんな風に生きられるなんて…
でも……
「ここは…俺の世界じゃないから……父さんも母さんも葵も居ない……結叶君を待ってる皆に、結叶君返さなきゃ」
「……そっか………今…小5?」
「うん」
「ユウ…言ってたよ。蓮も中学生になれたって」
「…えっ?!ほんと?!」
俺…死んじゃったから、こうなってるんじゃないの?
中学生になれないまま…死んじゃったんじゃないの?
「ほんと…学校には…あんまり行けなかったけどって、言ってた」
「~~っ…良かった…じゃあ…まだ、父さんと母さんと葵に会える」
「体…辛いだろうけど…」
「うん…でも、やっぱり皆が居るとこがいい」
「そっか……ほんとにキスで戻るかは、分からないけど…誰かに何か言っておきたい事とかない?」
そっか…
もしかしたら、このままこの世界と…バイバイ
「梅原先生に…お礼言って欲しい」
「梅原…先生?」
「うん。病院で診てくれた先生。初めて会って…何も分からないのにね…凄く優しくしてくれて…先生が居たから、結叶君の家…行ってみようって思えたから」
「そうなんだ…」
あ…
早く…ほんとの家に帰りたくなってきた
皆に会いたい
「あとは…大丈夫?」
「あとは…結叶君の周りの皆に、驚かせてごめんなさいって……あ、結叶君にも」
「うん…分かった……怖くない?」
「うん…死んだんじゃないなら、早く元のお家帰りたい」
「……そっか」
そう言って、シュウ君が頭撫でてくれた
あんまり喋らないけど
優しい人なんだ
「じゃあ…キスするね?」
「うん。俺は、どうすればいいの?」
「目を閉じて…口…塞ぐけど、時々離すから、息して」
「うん…」
目を閉じる
離したら息
初めての、ちゃんとしたチュウだ
ちょっと…緊張する
シュウ君が、腰に手をかけて
反対の手で、耳の辺りを触る
そして…じっと見つめてきた
あ…もう、目閉じていいんだ
目を閉じると
ふわっと、唇が重ねられた
こんな感じなんだ
これで、結叶君に戻る?
ゆっくり目を開けるけど…
まだ俺のままだよ?
「大丈夫?気持ち悪くない?」
「うん…俺…蓮だよ?」
「うん。きっとね…ちょっと考えられない状態になんないと…ダメなんだと思う」
考えられない状態?
「どうすればいいの?」
「今のは、少しだったけど…次は、もっと続けるから…ちゃんと息して」
「うん…?」
何回もするって事?
息出来ないくらい、速くするの?
さっきと同じ様に、唇が重なる
え?
唇…舐めてる
なんか…
え?
唇…食べられてるみたいになってる
なんか…なんか…
「んっ…」
変な…感じ…
「はぁ…息…して」
あ…そうだった
!!
なんか…
シュウ君…やらしい顔してる!
「んぅっ…んっ……」
?!
「ふぁっ…んっ!」
口の中…
なんか…
舌??
「んっ…んんっ!」
変!…な…感じ…
仰け反ると、シュウ君がそのままゆっくりと、ベッドの上に寝かせてくれた
「大丈夫?」
「なっ…はぁ…なんかっ…変…」
「ん…変な感じする…でも、気持ち悪くない?」
「気持ちは…悪くないけど……なんか…なんか…」
「うん…それが普通だから、大丈夫。息するのだけ、忘れないで。掴まりたかったら、俺の腕でも、頭でも、しがみ付いていいから」
シュウ君が、凄く優しい顔で
頭撫でながら、そう言ってくれた
変なの…普通だから、大丈夫なんだ
「大丈夫だから…怖がらなくていいから…」
「うん…シュウ君に…掴まってていい?」
「いいよ…どこでも…思いっきり掴んでていいよ」
「うん…」
大きなシュウ君が上に居て
初めての感覚で不安なのに
なんか…シュウ君なら大丈夫って思える
シュウ君の服を、ぎゅっと掴むと
シュウ君が、ゆっくりとキスしてきた
気持ちいい
気持ちいい?
これは…気持ちいいなの?
「はぁ…ユウ…戻って来て…」
「んっ…はっ…はぁっ…」
だんだん…頭…
ぼ~っとしてきた
「ユウ…はぁ……ユウ…戻って来て…」
シュウ君のキス…
気持ちいい
ふわふわする
「ユウ…っ……お願いっ…戻って来てっ…」
シュウが泣いてる
泣かせちゃった
何すればいいんだっけ?
「ユウっ…っ…ユウっ……お願いっ…ユウっ…」
ふわふわで…考えられない
でも…シュウは…
シュウが泣いてるのは…
なんとかしなきゃ
「はぁ…シュ……んっ…」
「!…ユウ?」
「シュウ…泣かないで……」
「…ユウ?…ユウなの?」
「……手…握ろ?……大丈夫…だから…」
「ユウ!ユウ!」
ガチャ…
バタバタバタバタ
ガチャ
「ユウ戻ったのか?!」
「結叶?分かる?」
あれ…
どういう状況?
朔兄と…大和が出て来た
ダンダンダンダンダンダン…
バタバタバタバタ…
「ユウ!戻った?!」
「結叶…分かるのか?」
「ユウ…」
え?
あれ?
父さんと母さんと四葉の声…
俺は、シュウに押し倒されてる
「…………えっと…今…どういう状況?」
「~~~っ…ユウ!!」
「わっ!」
シュウが、思いっきり抱き締めてきた
何?
俺…何かやらかした?
「わ~~い!四葉の予想通り~~!」
「素敵ね~。シュウ君のキスで目覚めるなんて…はぁ…見たかったわぁ…」
「え……ほんとに?ほんとにしたの?」
キス…
されてた気がする
シュウに…だよね
それで…なんで皆、喜んでるの?
大和の方を向くと
「お帰り、結叶」
お帰り?
「ったく!どんだけトラブルメーカーなんだよ?!」
なんで、朔兄怒ってんの?
その後、取っ替え引っ替え
皆に抱き締められ終わってから
皆でリビングに移動して
ようやく事情を説明された
「え……俺…蓮になってたの?」
で…蓮の事、皆にバレたんだ
シュウと大和に挟まれ
四葉は、俺の膝の上に座り
相当心配かけたらしい
「ユウ、蓮になってた間の記憶ないのか?」
大和が、俺の頬に触れながら聞いてくる
「全然ない。そう言えば、自転車に引っ張られた記憶はある」
「ユウね、蓮になって、四葉の弟になってたんだよ?」
「弟?」
蓮は、俺と同い年じゃなかったのか?
「うん!蓮は四葉の1歳下なの!だから、お姉ちゃんって呼んでもらったの!」
「いっ?!俺…四葉の事、そんな風に呼んだの?!」
「違うよ。ユウじゃなくて、蓮だもん」
そうだけど、俺でしょ?
え…俺…
蓮の時、どんなだったの?
蓮も葵のお兄ちゃんだったし
そんな甘えたりは…しないはず…
「えっと…蓮は…俺と全然違ってた?」
「全然違ってた!」
「どっ…どんな風に?!」
「弟だった!」
それじゃ分かんないよ…四葉…
「病院で目覚めた時ね…」
母さんが、話し出す
「うん…」
「蓮君も、何が起きてるか分からなくて、パニックになってたの。それで、お母さんの事もお父さんの事も、怖がってたんだけどね…」
「え…」
まあ…そうか
蓮も俺の記憶ないって事か
それは…パニックだ
「小児科の先生って、凄いのね~。少しの間話したら、なんか落ち着いてね…自分の体じゃないんだって、分かったみたいで…きっと、凄くショックだったと思うのに…結叶と、私達の為にね…全然知らない人の、知らない家なのに、来てくれたのよ?」
「……そう…なんだ…」
四葉の1個下…
小5かぁ
びっくりしたろうな
けど…きっと健康な体にも、びっくりしたろうな
「凄く優しくて、いい子だったわ」
「自分は蓮なのに、結叶って呼んでもいいって、言ってくれたんだ。ほんとに優しい子だ」
「お姉ちゃんの描いた漫画、凄いって言ってくれたの!いい子!」
「そっか…」
なんだ…
蓮…凄い褒められてるじゃん
「一緒にお風呂入ったら、まじまじと自分の体見てたよ?」
「ふっ……蓮は…生まれつき、心臓が悪かったんだ。小さい頃、手術したんだけど…それだけじゃ治らないみたいで……きっと、健康な体にビックリしてたんだと思う」
ずっと、この体で居たかったかな
「蓮…戻りたくないとか、言ってなかった?」
「どうやったら結叶に戻れるかって、考えてくれてたわよ」
「ここは…自分の世界じゃないからって…言ってた」
「え?」
ずっと黙ってたシュウが話し出す
「健康な体だけど…両親も妹も居ないからって…ユウを待ってる人に、ユウを返さなきゃって…」
「そっか…」
確かに…
誰も居ない世界に1人は…
寂し過ぎるよね
あんな体でも
やっぱり皆が居る方がいいかな
「1人で…不安かなと思って……ユウから聞いてたから、中学生になれるよって言ったら、喜んでた」
「…そっか…ありがとう。それは、凄く安心したと思う。中学生になるの…結構大きな目標だったから…」
「結叶は…前世の記憶、全部思い出したの?辛くない?」
母さんが、心配そうに聞いてくる
「全部は思い出してない。でも…うん…今より、ずっと辛い事多かったけど……優しい思い出…いっぱいあるんだ」
「そう…」
「蓮…梅原先生って人に、お礼言って欲しいって。あと、ユウとユウの周りの人達に、驚かせてごめんなさいって、言ってたよ」
「ほんとに…優しい子ね。心細かったでしょうに…」
心細かっただろうけど
短い間だったし
皆に感謝する位優しくされたなら
ほんの束の間の、健康な体の生活
ちょっとだけ体験出来たの、嬉しかったりも、するんじゃないかな
「それにしても、マジでシュウのキスで、ユウに戻ったんだな?」
「そっ…それは……多分、蓮…そんなのした事ないし、すっごい衝撃的だったんだと思う」
「ユウ…勝手にして、ごめん」
「いや…シュウは悪くないよ」
「そう!シュウ君だから、許す!」
よく皆…四葉のそんな案に乗ったな?
普通、それ、やってみよう!って、なる?
「その…キスは…ちゅってやつかな?そうだよな?そんな…そんな…凄いのとかじゃないよな?」
「父さん、何泣きそうになってんの?」
「だって、大和…ユウは…ファーストキスだって、まだなのに……そんな…自分の知らないところで…自分の意思と関係なくなんて…」
あ、そっか
シュウとキスしたの知らないんだ
「父さん、俺…シュウとキスした事あるから、大丈夫だよ?」
「………ええっ?!キス…した事あるの?!」
「うん」
「なっ…なっ…なんで?!」
「あら、そうだったの?ユウ…じゃあ、シュウ君とお付き合いするのも、時間の問題ね?」
「そう!ユウとシュウ君はBL!」
あわあわしてる父さんの横で
母さんが嬉しそうに微笑んでて
うわぁ…って顔した朔兄と
嬉しそうな大和と四葉とシュウ
蓮の間の記憶はないから
俺にとっては、寝て起きただけなんだけど
いつも通りの日常に…
ただいま
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